金
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一般特性 | |||||||||||||||||||||||||||||||
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名称, 記号, 番号 | 金, Au, 79 | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | 遷移金属 | ||||||||||||||||||||||||||||||
族, 周期, ブロック | 11 (IB), 6 , d | ||||||||||||||||||||||||||||||
密度, 硬度 | 19300 kg·m−3, 2.5 | ||||||||||||||||||||||||||||||
単体の色 | 金色 | ||||||||||||||||||||||||||||||
原子特性 | |||||||||||||||||||||||||||||||
原子量 | 196.966569(4) amu | ||||||||||||||||||||||||||||||
原子半径 (計測値) | 135 (174) pm | ||||||||||||||||||||||||||||||
共有結合半径 | 144 pm | ||||||||||||||||||||||||||||||
VDW半径 | 166 pm | ||||||||||||||||||||||||||||||
電子配置 | [Xe]4f14 5d10 6s1 | ||||||||||||||||||||||||||||||
電子殻 | 2, 8, 18, 32, 18, 1 | ||||||||||||||||||||||||||||||
酸化数(酸化物) | 3, 1(両性酸化物) | ||||||||||||||||||||||||||||||
結晶構造 | 面心立方構造 | ||||||||||||||||||||||||||||||
物理特性 | |||||||||||||||||||||||||||||||
相 | 固体 (反磁性) | ||||||||||||||||||||||||||||||
融点 | 1337.33 K (1064.2 ℃, 1947.5 °F) | ||||||||||||||||||||||||||||||
沸点 | 3129 K (2856 ℃, 5173 °F) | ||||||||||||||||||||||||||||||
モル体積 | 10.21 × 10−3 m3·mol−1 | ||||||||||||||||||||||||||||||
気化熱 | 334.4 kJ·mol−1 | ||||||||||||||||||||||||||||||
融解熱 | 12.55 kJ·mol−1 | ||||||||||||||||||||||||||||||
蒸気圧 | 0.000237 Pa (1337 K) | ||||||||||||||||||||||||||||||
音の伝わる速さ | 1740 m·s−1 (293.15 K) | ||||||||||||||||||||||||||||||
その他 | |||||||||||||||||||||||||||||||
クラーク数 | 5×10-7 % | ||||||||||||||||||||||||||||||
電気陰性度 | 2.54 (ポーリング) | ||||||||||||||||||||||||||||||
比熱容量 | 128 J·kg−1·K−1 | ||||||||||||||||||||||||||||||
導電率 | 45.2 × 106 m·Ω | ||||||||||||||||||||||||||||||
熱伝導率 | 317 W·m−1·K−1 | ||||||||||||||||||||||||||||||
イオン化エネルギー | 第1: 890.1 kJ·mol−1 | ||||||||||||||||||||||||||||||
第2: 1980 kJ·mol−1 | |||||||||||||||||||||||||||||||
(比較的)安定同位体 | |||||||||||||||||||||||||||||||
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注記がない限り国際単位系使用及び標準状態下。 |
金(きん、Gold)は原子番号 79 の元素。元素記号はAu。柔らかく、可鍛性があり、重く、光沢のある黄色(金色)をしており、展性に富み非常に薄くのばすことができる遷移金属である。同族の銅と銀が反応性に富むこととは対照的に、イオン化傾向が極めて小さく反応性が低い。鉱物資源としての金は金塊や沖積鉱床(砂金)として存在している。
金は多くの時代と地域で貴金属としての価値を認められてきた。装飾品などとして人類に利用された最古の金属である。銀や銅と共に貨幣用金属の一つであり、貨幣(金貨)として使用され、流通してきた。ISO通貨コードでは XAU とあらわす。また、歯科医術、エレクトロニクスなどの分野で様々な利用方法が応用されてきている。
性質
金は単体では金色と呼ばれる光沢のある黄色い金属であるが、非常に細かい粒子状にすると黒やルビー色に見える場合があり、時には紫色になる。これらの色は金のプラズモン周波数によるもので、主に黄色と赤を反射し青を吸収する。同様の性質を持つ金属はほかに銅とセシウムしかなく、金色に見える金属はこの3種類しか存在していない。
展性・延性に優れ、最も薄くのばすことができる金属であり、1gあれば1平方メートルまでのばすことができ、長さでは3000mまでのばすことができる。平面状に伸ばしたものを「金箔」(きんぱく)、糸状に伸ばしたものを「金糸」(きんし)と呼ぶ。豪華な衣装を作るために、金糸は綿や絹など一般的な繊維素材と併用される。
非常に柔らかいため、他の金属と混ぜて合金とすることが容易である。これにより他の金属の伸長性が増し、変化に富んだ色の金属を作ることができる。こういった物が実際アメリカ合衆国西部でブラックヒルの金として観光客向けに販売されている。銅との合金は赤く、鉄は緑、アルミニウムは紫、白金は白、ビスマスと銀が混ざった物では黒になる。自然に存在する金には通常10%程度の銀が含まれており、20%を超える物はエレクトラムまたは琥珀金と呼ばれる。さらに銀の量を増やして行くと色はだんだんと銀白色になり、比重はそれにつれて下がる。
金は熱伝導、電気伝導ともに優れた性質を持ち、空気には浸食されない。熱、湿気、酸素、その他ほとんどの化学的腐食に対して非常に強い。そのため、貨幣の材料や装飾品として古くから用いられてきた。ハロゲンは金と反応を起こし、王水やヨードチンキは金を溶かすことができる。
金で安定な原子価は +1(金(I))、+3(金(III))である。金イオンはすぐに合金となっている他の金属によって還元され、添加された金属は酸化される。
利用の歴史
金(サンスクリット語 jval, ギリシャ語 χρυσός [khrysós], ラテン語 aurum, 英語 Gold)は有史以前から貴重な金属として知られていた。おそらく人類が装飾用として用いた初めての金属である。
古代エジプトのヒエログリフでは、紀元前2600年頃から金についての記述が見られる。ミタンニの王トゥシュラッタが、通常は粒として請求をしている。エジプトとヌビアは、史上でも有数の金産出地域である。旧約聖書でも、金について多く触れられている。黒海の南西部は、金の産出地として名高い。金を利用した物としては、ミダスの時代にまでさかのぼると言われている。この金は、紀元前643年から630年のリディアでの、世界で初めての貨幣成立に大きく影響を及ぼしたと言われている。
ヨーロッパのアメリカ探検家達による金の強奪は、当時のアメリカ先住民達が持っていた金の量から見ても膨大な量に上った。とくに中央アメリカ、ペルー、コロンビアを原産とする物が多い。
有史以来、金は最も価値のある金属と考えられてきた。そして多くの通貨制度において、その基準(金本位制)とされてきた。その歴史については金本位制の項を参照の事。また純粋、価値、特権階級、価値ある物の象徴としてもとらえられてきた。但し、ポトシ鉱山の銀が大量にヨーロッパに流入するまで、金と銀の価値は現在とは逆だった。『沈黙は金、雄弁は銀』という格言はその名残である。
金の産出は比較的容易であり、1910年からこれまでに、地球上の75%ほどの金が産出されてきたと考えられている。地質学的に、地球上にある全ての金の埋蔵量は、一辺が20mの立方体に収まる程度と考えられている。
初期の科学者達の目指した目標は、水銀など他の物質から金を作り出す錬金術だった。金を生み出すことができる物質は賢者の石と名付けられ、賢者の石を作ることに多くの努力がなされた。その試みの全ては失敗に終わったが、その過程で発見された多くの事象を元にして、今日の化学は成り立っている。
錬金術師達は、金を中心に点が描かれた円の記号で現していた。これは占星術の記号でもあり、エジプトのヒエログリフ、および初期の漢字では太陽を現す記号としても用いられた。近年、金の記号を復活させようという試みがなされている。(en:gold synthesis)
19世紀のゴールドラッシュ以降、カリフォルニア州、コロラド州、オタゴ、オーストラリア、サウスダコタ州ブラックヒル、クロンダイクなどで大きな金の鉱脈が発見されてきた。
用途
金は非常に柔らかい物質であり、通常は銅や銀、その他の金属と鍛錬されて用いられる。金とその他の金属の合金は、その見栄えの良さや化学的特性を利用して装飾品として、また美術工芸品や宗教用具等の材料として利用されてきた。 さらに貨幣、または貨幣的な物として用いられてきた。
通貨・投資対象としての利用
金貨として利用する場合は、単体では柔らかすぎる為、また金地金を充分に用意できない為などの理由で、銀や銅などの他の金属と混ぜて利用されるのが一般的である。日本でも江戸時代には小判、一分金などの金貨が流通していた。明治時代になっても、銀行が発行する紙幣は、金との交換が可能で、その価値が保証されていた(兌換貨幣、金本位制)。
現在は、金との交換はできないが、今なお各国の中央銀行が支払準備金として金を保有している。また、証券会社や銀行や貴金属専門業者、商品先物取引業者等で、金を投資対象とする金融商品(金貯蓄口座、純金積立など)が取り扱われている。金本位制が崩壊した今も、(恐らくはその名残として)貨幣のような価値をまだ認められていると考えられる。
他の貴金属と同様、金も取引の際にはトロイオンス、またはグラムで計られる。他の金属との合金になっている場合、カラットを用いて金がどの程度含まれているのかを示す。(純度に関しては当該項目を参照のこと)
金の価格は、公開された市場取引によって決められる。しかし実際は1919年に始まったロンドンでの値決めによって日に2回、金の価格決定が行われる。
歴史的には、貨幣の価値によって同等の重さの金と交換できる金本位制として知られる、経済システムの裏を支える物として使われてきた。この方式では、政府および中央銀行は、通貨と金の交換価値を定めることになる。長い間アメリカ合衆国では1トロイオンスを$20.67($664.56/kg)で交換可能としていたが、1934年に1トロイオンスあたり$35.00($1125.27/kg)とし、1961年には経済力に対して金が不足し、価格の調整が困難になった。
1968年3月7日、金を背景とした経済環境は崩壊し、国際取引単位である1トロイオンスあたり$35.00($1.13/g)と個人間取引の変動価格の二段階の価格が設定された。この方式は1975年には破綻をきたし、金は自由取引されるようになった。中央銀行は歴史的理由から価値が下がってはいるが、金を保有し続けている。最も多くの金を保有しているのはアメリカ合衆国連邦準備制度下の各連邦準備銀行である。
1968年以降、公開市場での金の価格が大きく動き、最高値は1980年1月21日に$27,300/kg($850/oz)を記録した。最安値は1999年6月21日に$8,131/kg($252.90/oz)である。2004年現在では$13,500/kg($420/oz)となっている。金の価格は比較的安定した貨幣によって定められ、米ドルに縛られた物ではない。
工業用品としての利用
金は、前述のような耐食性、導電性、低い電気抵抗などの優れた特性を持ち、20世紀になってからは工業金属として様々な分野で使用されている。近年では、廃棄された工業用品(おもに携帯電話)を溶解し、金などの希少金属を抽出する事業も展開されている。
- 線状にして刺繍に用いられる。
- コンピュータ(CPU)の性能に大きな影響を与える物質である。また、通信機器、人工衛星やジェットエンジンの主要部品として使用されている。
- 高い導電性と酸化による腐食に対する強い耐性から、表面を金メッキしたものは年月を経ても錆びないため、電子部品の電導体やコネクタの部品として広く利用されている。
- 歯科の治療に用いる歯冠として古くから利用されている。
- コロイド状金(粒状金)は、非常に強烈な色素として多くの研究室で応用が研究されている。
- 金(III) は有機化学分野で触媒として広く利用されている。また、金の様々な合金はこの分野で作られたのが初めである。
- 金の放射性同位体 Au-198(半減期2.7日)はいくつかの癌の抑制治療に用いられている。
- 生物学分野では、走査型電子顕微鏡で用いる生物のコーティング材として用いられている。
- 多くの競技や賞の賞品メダルの材質の一つとして用いられている。オリンピックの優勝メダル(金メダル)、ノーベル賞など。銀や銅も同様に使用される。
- 可視光、非可視光ともに良く反射するため、人工衛星の保護剤として全体に貼られている。
- 金箔が飲料や料理の食材としても用いられる。金は何の味もしないため味に影響はしないが、主に華やかに見えるという点から、祝典での料理や酒類に加えられている。
- ホワイトゴールドはプラチナや銀の代用品として装飾品によく用いられている。
- 鍼治療用として、金を含む材質の鍼が製造されている。一般的なステンレスの鍼に比べて高価なため、金の鍼を使うのが効果的とされる特異な症状に対してコスト面で折り合いがつく場合に用いられる。
装飾品として
金はやわらかい物質であるため、純度100%では装飾品として機能しづらい。そこでほとんどの場合、別の金属との合金によって装飾品を作る(純度に関しては当該項目を参照)。装飾品では18Kや14Kが一般的である。
金は通常錆びることがなく、アレルギーの発現率も極めて小さいことから、アクセサリーとして手入れしやすく安心して身につけられることも人気の理由となっている。
混ぜる金属の種類や配合率によって色が変わる。一般的なものは次の3つである。実際の色については外部リンク(色見本)を参照されたい。
- イエローゴールド
- 18Kの場合、金75%、銀15%、銅10%が一般的である。一般的に認知されている金色に近い。銀の割合を多くして黄色みを強くしたものはグリーンゴールドと呼ばれている(別名「青割」)。
- ピンクゴールド
- 18Kの場合、金75%、銀10%、銅15%が一般的である。ややピンク色を帯びた金で、工場によってはさらに他の金属も混ぜてピンク色を濃くする。別名「赤割」。レッドゴールドまたはローズゴールドとも呼ばれる。
- ホワイトゴールド
- 18Kの場合、金75%、銀15%、ニッケルまたはパラジウム10%が一般的。黄色と白の中間色に近い色になる。パラジウム割のほうが高価であるが、ニッケルがアレルギー源になる恐れがあるため、国産はほとんどがパラジウム割である。
このほか、18Kホワイトゴールドにプラチナを含ませ、黒っぽい外観を特徴とするブラックゴールドもある。
純度
金の純度は、24分率で表される。純金は24カラット(宝石の重さを表すカラットとは異なる)または単に24金とし、金の含有率が下がるに従い数字が減っていく。18金は18/24、すなわち75%の純度の金の事である。また、純度の表記としてカラット(Karat)の「K」を用いる事もある。例えば24カラット(24金)はK24、18カラット(18金)はK18と表す。
このほか、純金の度合いを0.995などのように 0 から 1 の数値で表すこともある。
なお、純金とされる24カラットであるが、日本では99.99%以上の純度を保つ金は全て24カラットを名乗って良いことになっている。
産出
銅や亜鉛などは、酸化物といった形で化合物として産出されることが多いが、金は主に自然金(しぜんきん、native gold、金の単体)として得られることがほとんどである。また金は、火成岩中にも極微量に含まれる。ただし、採算が取れるほど固まって産出されるのはまれであるため、銅や鉛などの精製過程における副産物として通常は得られる。金鉱山として金を産出する場合は、金の鉱脈にそって掘っていく。そのほかに、金を含む鉱石が風化した、砂状のものをより分ける砂金掘りの方法もある。
通常金は石英、まれに硫化物の鉱脈の中に存在する。硫化物では黄鉄鉱、黄銅鉱、方鉛鉱、閃亜鉛鉱、硫砒鉄鉱、輝安鉱、磁硫鉄鉱などの鉱脈に含まれていることが多い。非常に稀であるがペッツ鉱、カラベライト、シルバニア鉱、ムスマン鉱、ナギヤグ鉱、クレンネル鉱などの鉱脈に含まれていることもある。
金は地球全体の地殻内に広く分布して存在しており、存在比は0.03g/1000kg程度(0.03ppm)である。熱水鉱床は変成岩と火成岩のなかに漂砂鉱床や砂鉱床のかたちでできる。
金の一次鉱脈は、主に火成岩か砂金の形で金が産出する場所である。通常の鉱脈は採算の点から金以外の鉱脈内で金がとれるところが多い。溶解や浸食といった化学的、物理的作用や変成作用を受けずに石英や硫化物内に集結している。金の一次鉱脈にはいくつもの種類があり、よくある鉱脈はリーフ又はベインと呼ばれる。一次鉱脈は風化や浸食されていることもあり、その場合金は小河などに流されるなどして重い鉱物の漂砂鉱床に集まっている。いずれの場合も金は単独で存在している。もう一つ重要な鉱脈は堆積頁岩または石灰岩の鉱脈で、これはあちこちに金やプラチナなどの金属とともに散在する形で存在する。
また、海水中にも金は含まれており、その割合は1000kgあたり0.1から2mg(0.1-2ppb)程度である。
抽出
経済的に金鉱山と言える物は平均して1000kgあたり0.5gの金を産出する必要がある。典型的な鉱山では、露天掘りで1-5g/1000kg(1-5ppm)、通常の鉱山で3g/1000kg(3ppm)程度である。人間の目で見て金と分るには30g/1000kg(30ppm)程度の濃度が必要で、それ以下の金山では鉱石内に金があることを人間の目で見分けることはほとんどできない。
沖積層の鉱床では砂鉱床採掘が用いられ、堅い岩の鉱脈では金属抽出が用いられる。金の精製を完了するには塩素処理または電気精錬を用いる。海水中には前述の通り金が含まれているが、2005年現在有効な抽出方法は見つかっていない。
1880年代から南アフリカが金産出の2/3を占めている。ヨハネスブルグが世界で最も多くの金を産出する都市と言われている。オレンジ自由州とトランスバール州にある金鉱山は世界で最も深く掘られた鉱山となっている。1899年から1901年までのボーア戦争はイギリスとボーアの鉱山労働者の権利と、南アフリカの金の所有権に関する争いである。その他の主な金の産出地としてはロシア、カナダ、アメリカ、オーストラリア西部にある。現在、それらの諸国では金の価格を維持するために産出量を意図的に制限している。
日本ではかつて、比較的多く金が産出した。マルコ・ポーロの東方見聞録などで「黄金の国」と呼ばれていたのも、日本産の金が出回っていたからである。しかしながら、江戸時代以降は国産の金山は徐々に衰え始めた。たとえば有名な佐渡金山もすでに採掘をやめ、現在は観光地化。大正・昭和初期の頃には東洋一の金山と言われた北海道の鴻之舞金山は採算ベースに乗る金を全て掘り尽くし1973年(昭和48年)に閉山。現在では、辛うじて1985年(昭和60年)から菱刈鉱山が採掘されるなどのみである。現在海底の熱水鉱床からの産出が期待されている。
産出国
2004年の金産出国ランキング上位10カ国は下記のとおり。数値は産出量(キログラム)、世界シェア。(出典:アメリカ合衆国内務省「ミネラル・イヤーブック2004」)
- 南アフリカ共和国 341,485 (14.1%)
- オーストラリア 259,000 (10.7%)
- アメリカ合衆国 258,000 (10.6%)
- 中華人民共和国 215,000 (8.8%)
- ペルー 173,219 (7.1%)
- ロシア 169,273 (7.0%)
- カナダ 128,504 (5.3%)
- ウズベキスタン 93,000 (3.8%)
- インドネシア 92,936 (3.8%)
- パプアニューギニア 73,000 (3.0%)
(参考)日本 8,021 (0.3%)、世界合計 2,430,000kg
主な鉱山
化合物と同素体
塩化金(AuCl3)と塩化金酸(HAuCl4)が金の主な化合物として知られている。金を含む化合物は金(I)(1価金)または金(III)(3価金)を内部に持つ。またフッ素との化合では5価にもなり5フッ化金(AuF5)を形成する。これは非金属元素に対する -1価と同様である。これらの化合物は金疹とよばれる Au-のアニオンをもつ AuCs や AuRb やテトラメチルアンモニウム金(CH3)4N+ Au-)を内部に含んでいる。
金の化合物の種類は同族の銀や銅とくらべると少ない。下記に示すものがよく作られている。
- 塩化金
- 塩化金酸
- 王水に溶けてAuCl4-イオンを作る
- ハロゲン化金(フッ素、塩素、ヨウ素、臭素)
- カルコゲン化金(酸素、硫黄、セレン、テルル)
- 金化合物
- ヒドラジン化金(AuN2H4)は爆発しやすい緑色の粉である。
毒性
金は不活性な金属であるが、必須ミネラルであるカルシウムやカリウム、鉄等と異なり人体に全く不要な元素である。毒物及び劇物取締法等により無機金塩類は劇物に指定されているが(外部リンクを参照)、一方で一部の有機金塩類はリウマチ性関節炎の有効な治療薬(ミオクリシン、オーラノフィン等)として知られている。金剤によるリウマチ治療は「クリソテラピー」と呼ばれる。
金による中毒としては単体によるものでは発疹・皮膚炎等があげられる。これらは金の装飾品を皮膚につけることによって起こるものであるが、単体の金は化学的反応性が低いため金属に対するアレルギー体質の人のみに見られる。また金化合物による中毒としては腎臓障害・肝臓障害・貧血等がみられる。
金中毒の解毒剤としてはジメルカプロール(HSCH2CHSHCH2OH)が使われる。ジメルカプロールは金と安定な錯体を形成して金の毒性を無効にし、速やかに体外に除去する働きをもつ。