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「P-700 (ミサイル)」の版間の差分

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SS-N-19は複数発の同時発射が原則だが、発射されたミサイルは「編隊」を組み、ミサイルのうち1基が「編隊長」となり、他のミサイルを「率いて」目標に向かう。「編隊長」が攻撃を受けたり故障したり、何らかの理由で墜落したら、他のミサイルが自動的に「指揮を引き継いで」目標に向かう。
SS-N-19は複数発の同時発射が原則だが、発射されたミサイルは「編隊」を組み、ミサイルのうち1基が「編隊長」となり、他のミサイルを「率いて」目標に向かう。「編隊長」が攻撃を受けたり故障したり、何らかの理由で墜落したら、他のミサイルが自動的に「指揮を引き継いで」目標に向かう。


また、500kmもの長大な射程は、発射母体となる水上艦や潜水艦の探知能力を大きく超えており、これらの艦艇はこのミサイルを単独では運用'''できない'''。各個艦の外部にあるセンサーや情報と統合されなければまったく運用できないのであり、統合運用ドクトリンに回帰することになった。
また、500kmもの長大な射程は、発射母体となる水上艦や潜水艦の探知能力を大きく超えており、これらの艦艇はこのミサイルを単独では運用'''できない'''。各個艦の外部にあるセンサーや情報と統合されなければまったく運用できないのであり、統合運用ドクトリンに回帰することになった。


このためのシステムの開発も同時並行で行われ、全地球規模の海洋情報収集システム「レゲンダ」として実現した。1970年代末より運用を開始したレゲンダは、[[フォークランド紛争]]([[1982年]])において、英軍の動向を逐一監視し、有用性を示した(当時の西側は、そのような事は知らず、冷戦後に判明した)。このシステムとの連携により、SS-N-19は、それまでのソ連の長距離対艦ミサイルのように航空機による中間誘導が不要となり、戦術的な脆弱性が減じられた。なお、SS-N-19の設計に当たったチェロメイ設計局は、レゲンダ用の衛星も同時並行で設計していた。
このためのシステムの開発も同時並行で行われ、全地球規模の海洋情報収集システム「レゲンダ」として実現した。1970年代末より運用を開始したレゲンダは、[[フォークランド紛争]]([[1982年]])において、英軍の動向を逐一監視し、有用性を示した(当時の西側は、そのような事は知らず、冷戦後に判明した)。このシステムとの連携により、SS-N-19は、それまでのソ連の長距離対艦ミサイルのように航空機による中間誘導が不要となり、戦術的な脆弱性が減じられた。なお、SS-N-19の設計に当たったチェロメイ設計局は、レゲンダ用の衛星も同時並行で設計していた。

2006年11月12日 (日) 10:55時点における版

SS-N-19旧ソ連・ロシア海軍の対艦ミサイル。ロシア側名称はP-700「グラニト(Granit)」。 SS-N-19は米国防総省報告番号NATO報告名はシップレック(Shipwreck、英:難船)。

概要

SS-N-19はチェロメイ設計局(現NPOマシノストローイェニ)によって、1970年代から、前任のSS-N-7スターブライトおよびSS-N-9サイレーンとの置換を目指して開発が開始された。

前任の2つのタイプのミサイルは射程が短く、仮想敵である米海軍空母機動部隊の対潜・対空防御能力が年々向上するにつれて、その戦術的価値が減少していた。そのため、射程の延伸、強力な弾頭の搭載などのため、重量が7トンにも達する巨大なミサイルとなった。純粋なロケットのみを用いた前任に対し、SS-N-19は、固体ロケット・ラムジェット統合推進システムを用いる。この推進システムは、まず固体ロケットエンジンで射出し、音速を超えるまで加速した後で、ラムジェットエンジンに切り替えて巡航するというものである。また、弾頭は、高性能通常炸薬によるHE弾頭(500kg)もしくはTNT換算500kt相当の核弾頭が搭載可能である。

特色

SS-N-19はその巨大さ以外にも、他(西側)ではほとんど例を見ないような特異な機軸を含んでいる。

SS-N-19は複数発の同時発射が原則だが、発射されたミサイルは「編隊」を組み、ミサイルのうち1基が「編隊長」となり、他のミサイルを「率いて」目標に向かう。「編隊長」が攻撃を受けたり故障したり、何らかの理由で墜落したら、他のミサイルが自動的に「指揮を引き継いで」目標に向かう。

また、500kmもの長大な射程は、発射母体となる水上艦や潜水艦の探知能力を大きく超えており、これらの艦艇はこのミサイルを単独では運用できない。各個艦の外部にあるセンサーや情報と統合されなければまったく運用できないのであり、統合運用ドクトリンに回帰することになった。

このためのシステムの開発も同時並行で行われ、全地球規模の海洋情報収集システム「レゲンダ」として実現した。1970年代末より運用を開始したレゲンダは、フォークランド紛争(1982年)において、英軍の動向を逐一監視し、有用性を示した(当時の西側は、そのような事は知らず、冷戦後に判明した)。このシステムとの連携により、SS-N-19は、それまでのソ連の長距離対艦ミサイルのように航空機による中間誘導が不要となり、戦術的な脆弱性が減じられた。なお、SS-N-19の設計に当たったチェロメイ設計局は、レゲンダ用の衛星も同時並行で設計していた。

最後の重長距離対艦ミサイル

このような特異なミサイルは、米海軍の空母機動部隊に長射程・大型弾頭のミサイルとそれを搭載した潜水艦で対抗するという、冷戦期ソ連海軍のドクトリンのいわば最終的な帰結であったということが出来る。しかし同時に、このような重量級のミサイルは運用母体を厳しく選ぶことになるばかりか、総運用コストも著しく高くならざるをえない。ほぼ同時期に開発され、射程や弾頭搭載量でよく似通っているアメリカのトマホーク対艦ミサイル(TASM)(射程450km、HE弾頭450kg、退役済み)と比較すると、総重量は5分の1(約1.4t)で、ほとんどの水上戦闘艦と攻撃型潜水艦に配備されているなど、違いが際立ち、ロシア海軍の指導者たちもこの種のミサイル(やそれを搭載した巡航ミサイル原潜)を見限る発言を行っている。また冷戦の終結もこの種のミサイルの存在意義を事実上失わせたため、当面、SS-N-19はこの種のミサイルとして最後のものと考えられている。

諸元

関連項目

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