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:*受信:50MHz帯の信号をVFOと混合し、21.0MHzの第1中間周波数に変換し、さらに21.455MHzの第2局部発振を加えて455KHzの出力を得る。 |
:*受信:50MHz帯の信号をVFOと混合し、21.0MHzの第1中間周波数に変換し、さらに21.455MHzの第2局部発振を加えて455KHzの出力を得る。 |
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*つまり21MHzに周波数固定された無線機に周波数可変型トランスバーターを付属したような構成となる。したがって、HF帯トランシーバーの21MHz出力をRJX-601に入力することにより、SSB・[[電信|CW]]モードでの運用を可能にする改造である。 |
*つまり21MHzに周波数固定された無線機に周波数可変型トランスバーターを付属したような構成となる。したがって、HF帯トランシーバーの21MHz出力をRJX-601に入力することにより、SSB・[[電信|CW]]モードでの運用を可能にする改造である。 |
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;周波数デジタルカウンター設置改造 |
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*アナログダイヤルが100KHz刻みの目盛だったためにより正確な周波数を認知するために周波数カウンターを設置する改造。 |
*アナログダイヤルが100KHz刻みの目盛だったためにより正確な周波数を認知するために周波数カウンターを設置する改造。 |
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;受信[[受信ブースター|プリアンプ]]追加 |
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;VFOの[[周波数シンセサイザ|PLLシンセサイザ]]化 |
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*本機のVFOは、発振周波数の精度・安定度が悪いために周波数変動が大きい欠点があった。そのため、[[1980年代]]以降にVFO部分をPLLシンセサイザ化して改善するユーザーが出現した。ただし、この改造には高度な技術を要する。 |
*本機のVFOは、発振周波数の精度・安定度が悪いために周波数変動が大きい欠点があった。そのため、[[1980年代]]以降にVFO部分をPLLシンセサイザ化して改善するユーザーが出現した。ただし、この改造には高度な技術を要する。 |
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;[[フォックスハンティング]]仕様への特化 |
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*シールドの強化、減衰器の内蔵などをはじめとする改造。 |
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=== サードパーティーによるアクセサリー === |
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本機は、製造個体が多かったことや多数の改造が行われたこともあって、[[サードパーティー]]によるアクセサリーも存在する。 |
本機は、製造個体が多かったことや多数の改造が行われたこともあって、[[サードパーティー]]による[[アクセサリー]]も存在する。 |
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==== FC-601 ==== |
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*製造個体数が多かった。 |
*製造個体数が多かった。 |
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*AMの変調方式が終段コレクタ変調のため、音質が良くかつ深い変調がかけられることから愛用しているアマチュア無線家も多い。 |
*AMの変調方式が終段コレクタ変調のため、音質が良くかつ深い変調がかけられることから愛用しているアマチュア無線家も多い。 |
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*既に |
*既にパーツ類は廃止品種になっているものの一部を除いて入手可能であり、代替品種も多数存在しているためにメンテナンス的な問題がクリアされている<ref>一例として、終段に使用されていた日本電気製2SC1306は、既に製造中止になって久しいが、ストックは確保されている。ただし、流通価格は¥1,000以上と[[トランジスタ]]としては、比較的高価に分類されるものの代替品ならば¥200程度で購入できる物も存在している</ref>。 |
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また、[[オークション]]や[[アマチュア無線フェスティバル]]の即売会でも流通量が多く、[[ジャンク]]扱い品や部品取りならば数千円程度、完動品ならば1万円前後<ref>ただし、デッドストック品や完全レストアを行った個体では、新品当時の定価以上のプレミア価格が付くケースが稀にある。</ref>で現在も取引されているために比較的入手しやすいといえる。 |
また、[[オークション]]や[[アマチュア無線フェスティバル]]の即売会でも流通量が多く、[[ジャンク]]扱い品や部品取りならば数千円程度、完動品ならば1万円前後<ref>ただし、デッドストック品や完全レストアを行った個体では、新品当時の定価以上のプレミア価格が付くケースが稀にある。</ref>で現在も取引されているために比較的入手しやすいといえる。 |
2009年11月9日 (月) 16:43時点における版
RJX-601(あーるじぇーえっくす-ろくまるいち)とは、松下電器産業(現・パナソニック)がかつて製造したアマチュア無線用無線機である。
概要
50MHz帯(50~54MHz)AM(振幅変調)/FM(周波数変調)2モードのポータブル(可搬型)トランシーバーである。
登場までの経緯
50MHz帯は、アマチュア無線人口が増えつつあった1970年代半ばの入門バンドとも言われており以下の特徴を持っていた。
- VHF帯で波長6mと比較的アンテナも小型となり容易に設置可能であった。
- 通常の伝播はの地表波伝播で100km程度まででも、山岳をはじめとする高所での移動による運用では見通し距離が大幅に伸びること。またスポラディックE層の発生時には300 - 1500 km以上の長距離通信が可能になることから、近隣ローカル局との交信(いわゆるラグチュー)からHF帯における遠距離通信のノウハウもトレーニングできるオールマイティな一面があった。
- ポータブル型トランシーバーでは、トリオ(現・ケンウッド)からはTR-1000・1100・1200、井上電機製作所(現・アイコム)からはFDAM-1・2・3、新日本電気(後の日本電気ホームエレクトロニクス→現・日本電気)からはCQP-6300などが競合発売されており、比較的入手しやすい状況だったこと。さらに、これらが本格的固定機となるHF帯用トランシーバーに比較してもさらに低価格であったため、学生などの若年層でも開局がしやすい環境が構築されていた。
また、ほぼ時を同じくしBCLブームが到来しておりアマチュア無線へ移行も予想されていたことから、今後もアマチュア無線人口は増加の一途で採算的にも収益を上げられると松下電器産業では判断を下し、アマチュア無線分野への参入を決定した。その結果、1973年1月に144MHz帯車載用[1]FMトランシーバーRJX-201と同時に同社初のアマチュア無線用通信機として、ラジオ事業部[2]が製造を行い発売されたのが本機である。
仕様
- 周波数:50~54MHz連続可変(VFO発振周波数:29~33MHz)
- 電波型式:AM(A3→現・A3E)/FM(F3→現・F3E)
- 変調方式:AM=終段コレクタ変調/FM=可変リアクタンス変調
- 終段/入力電力:2SC1306/12.0V6W
- 送信出力:3W/1W(切換方式)
- 不要輻射強度:-60dB以上
- 受信方式:ダブルスーパーヘテロダイン
- 中間周波数;第1=21MHz・第2=455KHz
- 受信感度:AM=1.5uV時S/N比10dB以上 FM=1uV時S/N比20dB以上
- 選択度:AM=5kHz以上 FM=30kHz以上/-6dB
- 動作電圧:基準DC13.5V(DC11-15V)
- 消費電力:受信時40mA・送信時700mA(3W)・550mA(1W)
- 使用乾電池:単2形9本
- 内臓アンテナ:ロッド式1/4λホイップ
- 外部アンテナ接続端子:M型接栓
- JARL保証認定登録番号:M1
- 外形寸法:190mm(W)×65mm(H)×230mm(D)
- 重量:2.2Kg(本体のみ)
主要純正オプション
定価
¥34,000(1973年1月発売時)
評価
先行ライバル機に比較すると本機は、以下の点でのアドバンテージを持っていた。
- バンドフルカバー送受一体完全トランシーブVFO
- 他機種が送受別々のVFOのためにキャリブレーションが必要だったり、バンド内フルカバーができない。またはクリスタルシンセサイザーによる周波数制御を行っていたために本機の優位性のひとつになった。
- 3Wの出力
- CQP-6300が3W出力を確保していたものの他機種は1Wまで。また本機では近距離通信用に1Wに可変できる機能を搭載していた。
- ノイズスケルチを搭載しており、これはAM/FM両モードで使用が可能であった。
- 乾電池運用時の配慮
- S/RFメーターは、バッテリメーターに切換可能な上に乾電池運用時には照明電源をOFFにして消費電力を抑えるスイッチも装備されていた。
- 小型・軽量化
- 従前のライバル機種よりも、小型・軽量化がなされていた。
また、筐体本体は黒の結晶塗装を採用し、操作パネル面も黒基調で従来の通信機然としたものから家電メーカーらしいデザインを考慮したものとなっており、1973年度のグッドデザイン賞を受賞している。
以上の点から在来機種よりもトータルバランスが優れていたこともあり、本機は爆発的人気を得て、50MHz帯ポータブルトランシーバーのスタンダードとも言える存在になった[5]。
一方でトリオ・井上電機は、方針転換を行いSSBモードを採用し、さらに小型・軽量化(いわゆるハンディ機化)を促進し、1975年にそれぞれTR-1300・IC-502を発売した。しかし、これは本機とは周波数帯以外には電波型式的にもコンセプトも異なった無線機であったため、必然的に住み分けがなされてしまい直接的なライバル機には成し得なかった。またAM・FM2モード機は、新日本電気からはCQP-6400が発売されたものの周波数範囲の上限は52.5MHzのフルカバーでなく、価格面での優位性もなかったたために本機の牙城を崩すことはできなかった。1978年には松下電器もSSBポータブルトランシーバーのRJX-610を発売するも後継機種とはならずに本機の製造は継続された。最終的に製造が終了したのは1980年[6]で、モデルチェンジなしで8年間の継続生産は無線機としては極めて異例のロングセラーである。
改良・改造
本機は、8年間に渡り製造が行われた。その間にも直接スペックに表れない改良が行われたほか、ユーザーの使用状況においての改造が多数行われており、以下はその一例である。
松下電器産業が行った改良
- VFOシャフト径の変更
- VFOのバリコン~カップリング間のシャフト径が、極初期に製造された物は直径6mm程度であるが、すぐに直径2mm程度の物に設計変更が行われた。これは太ければダイヤルのバックラッシュが少ないというメリットがある反面、バリコンとベアリングの位置がずれてダイヤルが重くなるデメリットも見逃せないこと。さらにコスト抑制の観点から行われた改良である。
- FM送信デビエーションのナロー化対策
- 本機が発売された当初のバンドプランでは、FMの最大周波数偏移は±40KHzまでとなっていたが、1976年のJARL制定のバンドプランでは±16KHzまで狭帯域化が行われることになった。本機では、基板上の抵抗R14[7]を切断することによって最大周波数偏移を±5KHzにするでナロー化対策[8]が完了する。この件は、途中から取扱説明書に追記された。
- ハンドマイクデザインの変更
- ロゴデザイン変更ならびにS/RF/BATTメーター表示の変更
- 製造途中でロゴが「NATIONAL」→「National」に変更
- 製造末期でS/RF/BATTメーター表示が広幅大型化
- 以上2点が変更になったために次の3種類表示が存在する。
- 「NATIONAL」ロゴでS/RF/BATTメーター表示が狭幅
- 「National」ロゴでS/RF/BATTメーター表示が狭幅
- 「National」ロゴでS/RF/BATTメーター表示が狭幅
- 直接の改良ではないが、個体の製造時期を判断するひとつの材料となっている。
ユーザーが行った改造
- ダイヤル校正用水晶の交換
- 本機では、ダイヤル校正は水晶で29MHzで発振させ、第1中間周波数の21MHzと混合させ50MHzの位置で行う設計がなされていた。しかし、これでは最大目盛が100KHzであること。VFOのバックラッシュも大きく、特にFMの呼出周波数であった51.0MHzに確実にゼロインさせるには非常に難しい状況であった。そのため水晶の発振周波数を30MHzにすれば、51.0MHzで校正されるために主にFMで運用する局が多数行った改造である。
- 本機の送受信に関する構成は以下であった。
- 送信:21MHzの局部発振にVFO出力を加え、50MHz帯出力を得る。
- 受信:50MHz帯の信号をVFOと混合し、21.0MHzの第1中間周波数に変換し、さらに21.455MHzの第2局部発振を加えて455KHzの出力を得る。
- つまり21MHzに周波数固定された無線機に周波数可変型トランスバーターを付属したような構成となる。したがって、HF帯トランシーバーの21MHz出力をRJX-601に入力することにより、SSB・CWモードでの運用を可能にする改造である。
- 周波数デジタルカウンター設置改造
- アナログダイヤルが100KHz刻みの目盛だったためにより正確な周波数を認知するために周波数カウンターを設置する改造。
- 受信プリアンプ追加
- 当時としては広帯域の4MHzフルカバーであったために全体的に感度が悪いためにプリアンプを追加するユーザーも多かった。
- 10Wリニアアンプ内蔵化改造
- 乾電池スペースに内蔵する改造。ポータブル使用は難しくなるが、固定機として使用を限定するユーザーなどが行った。
- VFOのPLLシンセサイザ化
- 本機のVFOは、発振周波数の精度・安定度が悪いために周波数変動が大きい欠点があった。そのため、1980年代以降にVFO部分をPLLシンセサイザ化して改善するユーザーが出現した。ただし、この改造には高度な技術を要する。
- フォックスハンティング仕様への特化
- シールドの強化、減衰器の内蔵などをはじめとする改造。
- 短波ラジオ化
- LED式FMセンターメーター追加
この節の加筆が望まれています。 |
サードパーティーによるアクセサリー
本機は、製造個体が多かったことや多数の改造が行われたこともあって、サードパーティーによるアクセサリーも存在する。
FC-601
1976年に長居通信が製造した本機専用の周波数カウンタ。1KHzまで直読可となっていた。
LPS-602
1977年にウィングス電子が製造したベース用キット。
- 本機をビルトインさせるとともにDC電源・FMセンターメーター・送信用10Wリニアアンプ(終段:2SC1307)・受信プリアンプ・1KHz直読カウンタ(レスオプションもあり)を内蔵した[10]。
- 当初、九十九電機が独占販売したことや本体並の価格であったことから、流通量は極めて少ない。
現状
21世紀になっても現役の個体が多く、現在でも50MHz帯AMでの運用をされていることが確認できる。その要因として次のことがあげられる。
- 製造個体数が多かった。
- AMの変調方式が終段コレクタ変調のため、音質が良くかつ深い変調がかけられることから愛用しているアマチュア無線家も多い。
- 既にパーツ類は廃止品種になっているものの一部を除いて入手可能であり、代替品種も多数存在しているためにメンテナンス的な問題がクリアされている[11]。
また、オークションやアマチュア無線フェスティバルの即売会でも流通量が多く、ジャンク扱い品や部品取りならば数千円程度、完動品ならば1万円前後[12]で現在も取引されているために比較的入手しやすいといえる。
脚注
- ^ 直流安定化電源を使用すれば、固定局用としても使用できるのは当然ではある。
- ^ 当時、松下電器グループの通信機器部門では「松下通信工業(現・パナソニック モバイルコミュニケーションズ」が存在していたが、こちらは主に業務用無線機を担当しており、ラジオ事業部が製造した無線機としては合法CB無線機で実績があった。
- ^ 汎用の安定化電源に比較すると電源出力的にも小さく、かつ非常に高価なものであったために本体に比較すると流通量は極めて少ない
- ^ 九十九電機では同店オリジナルの1A直流安定化電源ならびにアンテナ(初期はスクエアロー、後期は5/8λグランドプレーン)を組み合わせ『開局セット』と称して定価プラスαの価格でセット販売も行っていた。
- ^ その総生産台数は、一説には30万台以上とも言われている。
- ^ 最終的に店頭での新品販売が終了したのは1981年に入ってからである。
- ^ 本体上側の蓋を外し、VFOバリコン部左側に存在する。
- ^ ただし、送信のみで受信に関してのナロー化対策が施工されるものではない。また、この対策を施すると変調が浅くなる傾向があったため、信号強度が極めて弱い状況での交信では了解度が著しく低下する症状も報告されていた
- ^ 見た目の形がドラキュラの棺に酷似していることから、『棺桶マイク』の別称がある。
- ^ 接続には本機への若干の改造も必要とした
- ^ 一例として、終段に使用されていた日本電気製2SC1306は、既に製造中止になって久しいが、ストックは確保されている。ただし、流通価格は¥1,000以上とトランジスタとしては、比較的高価に分類されるものの代替品ならば¥200程度で購入できる物も存在している
- ^ ただし、デッドストック品や完全レストアを行った個体では、新品当時の定価以上のプレミア価格が付くケースが稀にある。