「医原病」の版間の差分
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[[医者]]が患者を害する可能性は古代ギリシャの時代より知られ、医療技術や医療哲学の確立の中で重要な概念とされてきた。(「[[ヒポクラテスの誓い]]」にも「自身の能力と判断力に従って、患者に利する治療法を選び、'''害となる治療法'''を決して選ばない」とあえて明記してあるほどである。) |
[[医者]]が患者を害する可能性は古代ギリシャの時代より知られ、医療技術や医療哲学の確立の中で重要な概念とされてきた。(「[[ヒポクラテスの誓い]]」にも「自身の能力と判断力に従って、患者に利する治療法を選び、'''害となる治療法'''を決して選ばない」とあえて明記してあるほどである。) |
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医原病の原因としては、[[医療器具]]、[[医薬品]]、[[医療材料]]の他にも、医師による[[誤診]]、[[医療過誤]](不適切な薬物選択、不適切・未熟な[[手術]]、検査など)、[[院内感染]]等々が挙げられる。 |
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==医療器具を原因とするもの== |
==医療器具を原因とするもの== |
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==医薬品を原因とするもの== |
==医薬品を原因とするもの== |
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[[医薬品]]の使用は'''[[副作用]]'''をもたらす可能性がある。 |
[[医薬品]]の使用は'''[[副作用]]'''をもたらす可能性がある。また'''[[薬害]]'''が発生することもある。 |
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'''[[薬害]]'''も参照のこと。 |
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*[[副腎皮質ホルモン]]投与による[[消化性潰瘍]]。 |
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*[[ペニシリン]]による「ペニシリン・ショック」。 |
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*[[ストレプトマイシン]]による聴力障害。「ストマイ難聴」 |
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*整腸剤[[キノホルム]]による「[[スモン]](亜急性脊髄視神経症)」 |
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*妊婦への[[サリドマイド]]投与により奇形児の出産が続いた「[[サリドマイド]]被害」 |
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*[[血液製剤]]がHIVウィルスに汚染されていて[[血友病]]患者に感染させた「[[薬害エイズ]]」 |
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==輸血を原因とするもの== |
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*[[ヘモクロマトージス]] |
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*ウィルス汚染による[[肝炎]]。([[C型肝炎]]、[[B型肝炎]]も参照) |
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==医療材料を原因とするもの== |
==医療材料を原因とするもの== |
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====硬膜==== |
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[[異常プリオン]]に汚染されたヒト乾燥'''[[硬膜]]'''(ライオデュラ)が多数の患者に移植され[[クロイツフェルト・ヤコブ病]]の感染を引き起こしたことは世界的に問題となった。 |
[[異常プリオン]]に汚染されたヒト乾燥'''[[硬膜]]'''(ライオデュラ)が多数の患者に移植され[[クロイツフェルト・ヤコブ病]]の感染を引き起こしたことは世界的に問題となった。 |
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==X線を原因とするもの== |
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===具体例=== |
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X線検査によるもの |
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*急性障害(悪心、[[嘔吐]]・[[下痢]]、発熱、[[血小板]]減少、出血、[[白血球]]減少など) |
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*晩発性障害([[再生不良性貧血]]、[[白血病]]、[[肺がん]]、[[皮膚炎]]、[[皮膚がん]]、[[白内障]]、[[免疫障害]]、[[不妊症]]など) |
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==麻酔を原因とするもの== |
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===具体例=== |
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*[[心停止]] |
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*[[植物人間]]化 |
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==手術を原因とするもの== |
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===具体例=== |
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*腹部手術の後に発生する腹膜癒着・[[イレウス]](腸閉塞) |
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*胃摘除手術の後に発生する[[ダンピング症候群]] |
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*腹部手術時に技量未熟で神経を傷つけたことによる下半身麻痺。 |
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==検査を原因とするもの== |
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===具体例=== |
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*[[生検]]の技量未熟を原因とする障害。 |
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**鎖骨下静脈穿刺、経皮肺生検、経気管支肺生検などで手技を誤った後に[[気胸]]が起きる「医原性気胸」。 |
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==参考文献== |
==参考文献== |
2007年5月2日 (水) 03:17時点における版
医原病(いげんびょう、英: iatrogenesis または iatrogenic disease)とは一般に、医療行為が原因で生ずる疾患のことを指す。「医源病」「医原性疾患」も同義。
概要
医原病とは一般に医療行為が原因で生ずる疾患である。治療の結果、原疾患による後遺症が生じた例はこれに当てはまらない。
医療は他の様々な技術同様に、常に発展途上で不完全であり、医療関係者の意図にかかわらず、医療行為によっては患者を害する可能性がある。
医原病の中には発生とほぼ同時にそれと判明するものもある。だが医原病によっては、発生から長い年月を経て医療技術が進歩し新しい見地が発見された後にようやく、従来の医療行為がなんらかの医原病を蔓延させる原因を作っていたとわかったりすることもある。
医者が患者を害する可能性は古代ギリシャの時代より知られ、医療技術や医療哲学の確立の中で重要な概念とされてきた。(「ヒポクラテスの誓い」にも「自身の能力と判断力に従って、患者に利する治療法を選び、害となる治療法を決して選ばない」とあえて明記してあるほどである。)
医原病の原因としては、医療器具、医薬品、医療材料の他にも、医師による誤診、医療過誤(不適切な薬物選択、不適切・未熟な手術、検査など)、院内感染等々が挙げられる。
医療器具を原因とするもの
医療器具の使いまわしは病原体や悪性細胞等を別の人にうつしてまう可能性があるということが、研究の進歩により判明した。そのために一度使用した医療器具の滅菌・消毒を行なったり、滅菌が不可能または困難な医療器具の使い回しを止め、一回使い捨ての医療器具が開発され使用されるようになった。
使い捨て医療器具は本来なら使い捨てされるべきであるが、その使い捨て医療器具をおのおのの基準によって再洗浄・再滅菌の上で再使用している病院も存在する。「限られた医療費のなかで治療を行なう必要がある」あるいは「病院であっても利益を出さなければならない」などの理由づけによるようである。一般にこのような病院は、使い捨て医療器具を再使用することについて、患者の側から何ら同意も得ていない。米国では再利用は社会問題化し、使い捨て器具を再利用することに対して罰則が規定された。日本では罰則規定はまだ無い。
そもそも、一回使い捨てを前提とした器具は設計上再滅菌再使用を想定していないものが多く、複数回の再滅菌再使用により、同様の使用でも同じ結果が得られなかったり(メスであれば切れ味が悪くなる)、使用が困難になったりする(レンズであれば、濁って見えづらくなる)場合がみられることがある。基本的に一回使い捨てタイプの医療器具の但し書きには「再滅菌禁止」と明記してある場合が多い。
使い捨てではない医療器具(再利用を想定)については、再使用に際し基本的には滅菌・消毒を行なうこととなる。
ただし、滅菌・消毒を行なったとしても医療器具の再使用により様々な合併症が起きることが、近年の研究により判明した。それは器具に消毒薬が残留していたもの、消毒薬の洗浄薬が残留していたもの、再滅菌中に医療器具が破損し期待された効果が発揮できなかったもの、滅菌方法に不備があり滅菌しきれなかったために起きたもの、従来の概念から逸脱した病原体により起きたものなど多岐にわたる。また、近年の進歩した消毒方法で医療用器具を消毒をしたとしても、菌やウィルス、プリオンが他に感染可能な状態で生き残り他の人に感染させてしまう場合があることが、研究により判明した。
もっとも、合併症の可能性があるからといって全ての医療器具を(穿刺針などのように)使い捨てにすることができるかと言えば、一部の医療器具にはそのように単純にはゆかない現実もある。例えば上部消化管に使用する内視鏡などは現在のところまだ一つ100万円以上し、それを再使用せずに使い捨てにすることは荒唐無稽であろう、という意見もある。ただし、経済的に裕福で、合併症のリスクを知っていたら100万円程度なら払う気のある患者に対しても情報を提供せず、再利用品/新品のどちらを希望するのか意向を確認することすら行われていないので、インフォームド・コンセントの欠如であり問題だ、という意見もある。
具体例
注射器
かつて行われていた「注射器の使い回し」(一度ある人に対して使った注射針と注射器を別の人に対しても使うこと)により、ウィルス感染が拡大していたことも医原病にあたる。後になってから、注射器の使いまわしでウィルスの感染が起こるということが知られるようになり、使い捨ての注射器が登場した。
内視鏡
日本では、胃カメラによる検査の後に胃炎を発症する事例が多くあり、「胃カメラ後急性胃炎」などの名で呼ばれていた。近年にヘリコバクター・ピロリの発見に伴いようやく、「胃カメラを介してある患者の胃の中のピロリ菌等を別の患者へと感染させていたことが主たる原因であった」と判明した。
その後現在でも日本では、すべての医療機関が内視鏡を1回の使用毎に十分に(あるいは完全に)消毒しているとは言い難い状態が続いている[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。。また、使い捨て用の内視鏡処置具(レンズ部分ではなく、組織を採取する部分)を一部の医療機関が再利用している実体も明らかになっており、これも問題を孕んでいる。
医療器具全般と異常プリオン
「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(狂牛病)」の名により知られることになった異常プリオンは、消毒・高圧高温滅菌したとしても不活性化(いわゆる無害化)はできないため、穿刺針であれ内視鏡処置具であれ手術用メスであれ、一つの医療用の器具が複数の人間に対して使用されて組織内に挿入されたり組織を採取されたり切断されたりすることは、基本的に異常プリオンが転移し感染を引き起こすリスクを孕んでいる。
医薬品を原因とするもの
医薬品の使用は副作用をもたらす可能性がある。また薬害が発生することもある。
具体例
- 副腎皮質ホルモン投与による消化性潰瘍。
- ペニシリンによる「ペニシリン・ショック」。
- ストレプトマイシンによる聴力障害。「ストマイ難聴」
- 整腸剤キノホルムによる「スモン(亜急性脊髄視神経症)」
- 妊婦へのサリドマイド投与により奇形児の出産が続いた「サリドマイド被害」
- 血液製剤がHIVウィルスに汚染されていて血友病患者に感染させた「薬害エイズ」
輸血を原因とするもの
具体例
医療材料を原因とするもの
具体例
硬膜
異常プリオンに汚染されたヒト乾燥硬膜(ライオデュラ)が多数の患者に移植されクロイツフェルト・ヤコブ病の感染を引き起こしたことは世界的に問題となった。
X線を原因とするもの
具体例
X線検査によるもの
麻酔を原因とするもの
具体例
手術を原因とするもの
具体例
検査を原因とするもの
具体例
参考文献
- 『治療は大成功、でも患者さんは早死にした』岡田正彦著、講談社、2001年。ISBN 4062720671
- 『医原病―「医療信仰」が病気をつくりだしている』近藤誠、講談社、2000年。ISBN 4062720507
- 『脱病院化社会―医療の限界』イヴァン・イリッチ著、金子嗣郎 訳、晶文社、1998年。ISBN 4794912625