EtherCAT
EtherCATはEthernet for Control Automation Technologyの略である。ドイツ企業、ベッコフオートメーション(Beckhoff Automation)によって開発されたイーサネットに基づくフィールドバスシステムである。EtherCATの開発目標は、同期のために実時間(real time)処理が可能な低い通信ジッターで、短いデータ更新時間(cycle time)を必要とする自動化機器に、小さなデータをイーサネットを使い低いハードウェア費用で適用することである[1]。
概要
[編集]自動化機械 (automation) で使用する通信機器 (device) はデジタルやアナログ入出力であり、モーション用の高機能なデバイスでも1つの通信機器で必要なデータは高々10バイト程度となる。このデータ通信単位はイーサネットフレームの最小サイズよりも小さく、そのままイーサネットに載せるのは帯域の無駄遣いとなる。産業用のネットワークではコントローラ(PLC)と通信ユニット(マスタ)が機能デバイス(スレーブ)に対して1対多通信を行うことから、EtherCATではこの解決手段として、論理的にリングネットワーク[注釈 1]になるよう接続したスレーブデバイスに対しコントローラは、1つのイーサネットフレームにてすべてのスレーブあてのデータを送信する[3]。各スレーブデバイスはEtherCAT起動時に1つ以上のアドレス空間がコントローラにより与えられ(重複も可能)[3]、コントローラはメモリマップドI/Oを行う。フレームのペイロードになる各スレーブあての電文はデータグラムと呼ばれ、各データグラムにはアドレスとそれに対する読み書きの種別を記したヘッダが付く[3]。各スレーブは受信フレームのうち自らに与えられたアドレスのデータグラムに対してのみ変更を加え、残りは透過的に転送することをフレームを受信しつつ実行する(オンザフライ処理)[3][4][2]。また機器相互間の時刻同期についてはマスタコントローラによる集中同期ではなく各デバイスノードごとにローカル時計を持たせる分散時刻同期方式を採用した。コントローラが定期的に送出する時刻同期フレームは、最初に受け取ったスレーブデバイスにより全スレーブノードを通過し、かつ、送出元のスレーブデバイスまで戻ってくるというプロトコルの仕様により各スレーブデバイスも遅延時間を知ることができる[3]。これによりEtherCATフレーム到達範囲内においての高精度(1 μs以下)な時刻同期機能を実現している[3][4]。
プロトコル
[編集]EtherCATの通信プロトコルはIEEE 802.3のイーサネット規格に準拠し、イーサタイプ(イーサネットヘッダーにおいてLANフレームが運ぶ上位プロトコルの識別子を格納するフィールド)0x88a4を使用し、データリンク層はEtherCATスレーブコントローラが処理する。アプリケーション層の代表的なプロトコルはCAN application over EtherCAT(CoE)であり、EtherCATスレーブコントローラに接続したマイクロコントローラ上のソフトウェアとして実装する。
EtherCAT Technology Group
[編集]EtherCATはEtherCAT Technology Group(2003年に設立)(略してETG)により機能要件や認証などが規定されている。ETGの加盟企業は世界では2400社程度である[5]。 ETGはドイツのニュルンベルクに本部を置き、東京、北京(中国)、ソウル(韓国)、オースティン・テキサス(米国)に支部を持つ 。会費無料等、入会条件が緩いため近年会員数が増加している。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ EtherCAT Technology Group | EtherCAT
- ^ a b c 町井和美 (2013年9月17日). "いまさら聞けない EtherCAT入門 (2/4)ページ". MONOist. ITmedia. 2023年10月4日閲覧。
- ^ a b c d e f "EtherCAT - イーサネットフィールドバス". 2023年10月4日閲覧。
- ^ a b 町井和美 (2013年9月17日). "いまさら聞けない EtherCAT入門". MONOist. ITmedia. 2023年10月4日閲覧。
- ^ “EtherCAT Technology Group”. 2013年10月3日閲覧。
関連項目
[編集]- イーサネット
- IEEE 802
- EtherNet/IP-同じくイーサネットをベースとするフィールドバスシステム
- メカトロリンク
- CCリンク
- Profibus
- Profinet