「メディチ家の聖母」の版間の差分

『メディチ家の聖母』
	ドイツ語: Medici-Madonna; 英語: Medici Madonna
作者	ロヒール・ファン・デル・ウェイデン
製作年	1453–1460年ごろ
種類	オーク板上に油彩
寸法	61.7 cm × 46.1 cm (24.3 in × 18.1 in)
所蔵	シュテーデル美術館、フランクフルト

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2023年8月11日 (金) 01:16時点における版

『メディチ家の聖母』（メディチけのせいぼ、独: Medici-Madonna、英: Medici Madonna）は、初期フランドル派の巨匠ロヒール・ファン・デル・ウェイデンが1453–1460年ごろにオーク板上に油彩で制作した絵画である。フランクフルトのシュテーデル美術館に所蔵されている^[1]^[2]。

本作は、フィレンツェのメディチ家により委嘱されたことが知られている^[1]^[2]。それは、台座下段にある赤いユリのついたフィレンツェの紋章によっても裏付けられる^[1]^[2]。制作年については、ファン・デル・ウェイデンがローマに巡礼旅行をし、いくつかのイタリアの宮廷に訪れた1450–1451年^[2]、またはフラ・アンジェリコに触発されて描いた『キリストの哀悼』 (ウフィツィ美術館) と同時期の1460–1464年と様々に提案されてきた。シュテーデル美術館では、画家がローマ巡礼から帰ってきてからすぐに本作を制作したとしている^[1]。

作品

空の代わりの金地の中に、ファン・デル・ウェイデンは貴重なダマスク織の掛けられたバルダッキーノ（英語版）を描いている。その下には、聖母子、聖ペトロ (ピエロ・デ・メディチの洗礼聖人^[1])、洗礼者聖ヨハネ (フィレンツェの守護聖人であり、ジョヴァンニ・デ・メディチの洗礼聖人^[1])、メディチ家の守護聖人である医師の聖人、聖コスマスと聖ダミアヌス（英語版）がいる^[1]^[2]。この図像は北方絵画では異例で、イタリア絵画に見られる聖会話の形式である^[1]。

聖コスマスは自身のベルトから下がっているハンドバッグにコインを入れているところが描かれているが、これは医療行為のために少額の金銭を受け取り、そのため兄弟のダミアヌスの怒りを買ったという伝説を表している。

前景には、画家に典型的な自然の細部への注意を示す静物がある^[2]。中央には金鍍金をしたアンフォラがあり、何本かのユリが入っている。白いユリは聖母マリアの処女性を象徴し、赤いユリはフィレンツェを示唆している。

人物たちが半円形に配置され、上部のアーチでも半円形が繰り返されている本作の構図は、イタリア・ルネサンスの画家ドメニコ・ヴェネツィアーノの『サンタ・ルチア・デ・マニョーリ祭壇画』 (ウフィツィ美術館) に触発されたのかもしれない^[2]。しかし、ドメニコの作品では人物は互いに離れているが、ファン・デル・ウェイデンの作品では人物は互いの近くに立っており、聖ペトロと洗礼者聖ヨハネには直接的に結びついている。また、ウェイデンの人物たちは引き延ばされているが、それは、ウェイデンのヨハネをドメニコのヨハネと比較すれば明らかである。さらに、ウェイデンの人物たちはドメニコの人物たちと違い、身体構造よりも衣服の線によって造形されている^[2]。

脚注

^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h “Medici Madonna”. シュテーデル美術館公式サイト (英語). 2023年7月27日閲覧。
^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h “Virgin with the Child and Four Saints”. Web Gallery of Artサイト (英語). 2023年7月27日閲覧。

外部リンク

シュテーデル美術館公式サイト、ロヒール・ファン・デル・ウェイデン『メディチ家の聖母』 (英語)
Web Gallery of Artサイト、ロヒール・ファン・デル・ウェイデン『メディチ家の聖母』 (英語)
Campbell, Lorne (2004). Van der Weyden. London: Chaucer Press. ISBN 1-904449-24-7
Weyden. “Medici Madonna”. Digital Collection. 7 July 2023閲覧。

[ReferenceA-1] ^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h “Medici Madonna”. シュテーデル美術館公式サイト (英語). 2023年7月27日閲覧。

[ReferenceB-2] ^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h “Virgin with the Child and Four Saints”. Web Gallery of Artサイト (英語). 2023年7月27日閲覧。

[1]

[2]

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 『'''メディチ家の聖母'''』（メディチけのせいぼ、{{Lang-de-short|Medici-Madonna}}、{{Lang-en-short|Medici Madonna}}）は、[[初期フランドル派]]の巨匠[[ロヒール・ファン・デル・ウェイデン]]が1453–1460年ごろに[[オーク]]板上に[[油彩]]で制作した絵画である。[[フランクフルト]]の[[シュテーデル美術館]]に所蔵されている<ref name="ReferenceA">{{Cite web |url=https://sammlung.staedelmuseum.de/en/work/medici-madonna|title=Medici Madonna|publisher=[[シュテーデル美術館]]公式サイト (英語) |access-date=2023-07-27}}</ref><ref name="ReferenceB">{{Cite web |url=https://www.wga.hu/frames-e.html?/html/w/weyden/rogier/index.html|title=Virgin with the Child and Four Saints|publisher=Web Gallery of Artサイト (英語) |access-date=2023-07-27}}</ref>。
-本作は、[[フィレンツェ]]の[[メディチ家]]により委嘱されたことが知られている<ref name="ReferenceA /><ref name="ReferenceB" />。それは、台座下段にある赤いユリのついたフィレンツェの[[紋章]]によっても裏付けられる<ref name="ReferenceA /><ref name="ReferenceB" />。制作年については、ファン・デル・ウェイデンが[[ローマ]]に巡礼旅行をし、いくつかの[[イタリア]]の宮廷に訪れた1450–1451年<ref name="ReferenceB" />、または[[フラ・アンジェリコ]]に触発されて描いた『[[キリストの哀悼 (ファン・デル・ウェイデンの絵画)|キリストの哀悼]]』 ([[ウフィツィ美術館]]) と同時期の1460–1464年と様々に提案されてきた。シュテーデル美術館では、画家がローマ巡礼から帰ってきてからすぐに本作を制作したとしている<ref name="ReferenceA />。
+本作は、[[フィレンツェ]]の[[メディチ家]]により委嘱されたことが知られている<ref name="ReferenceA" /><ref name="ReferenceB" />。それは、台座下段にある赤いユリのついたフィレンツェの[[紋章]]によっても裏付けられる<ref name="ReferenceA" /><ref name="ReferenceB" />。制作年については、ファン・デル・ウェイデンが[[ローマ]]に巡礼旅行をし、いくつかの[[イタリア]]の宮廷に訪れた1450–1451年<ref name="ReferenceB" />、または[[フラ・アンジェリコ]]に触発されて描いた『[[キリストの哀悼 (ファン・デル・ウェイデンの絵画)|キリストの哀悼]]』 ([[ウフィツィ美術館]]) と同時期の1460–1464年と様々に提案されてきた。シュテーデル美術館では、画家がローマ巡礼から帰ってきてからすぐに本作を制作したとしている<ref name="ReferenceA" />。
 == 作品 ==
 [[ファイル:Domenico_Veneziano_-_The_Madonna_and_Child_with_Saints_-_WGA06428.jpg|サムネイル|[[ドメニコ・ヴェネツィアーノ]]『{{仮リンク|サンタ・ルチア・デ・マニョーリ祭壇画|en|Santa Lucia de' Magnoli Altarpiece}}』 (ウフィツィ美術館)]]
-空の代わりの金地の中に、ファン・デル・ウェイデンは貴重な[[ダマスク織]]の掛けられた{{仮リンク|バルダッキーノ|en|baldachin}}を描いている。その下には、[[聖母子]]、[[ペトロ|聖ペトロ]] ([[ピエロ・ディ・ロレンツォ・デ・メディチ|ピエロ・デ・メディチ]]の洗礼聖人<ref name="ReferenceA />)、[[洗礼者聖ヨハネ]] (フィレンツェの[[守護聖人]]であり、[[レオ10世 (ローマ教皇)|ジョヴァンニ・デ・メディチ]]の洗礼聖人<ref name="ReferenceA />)、 メディチ家の守護聖人である医師の[[聖人]]、{{仮リンク|聖コスマスと聖ダミアヌス|en|Saints Cosmas and Damian}}がいる<ref name="ReferenceA /><ref name="ReferenceB" />。この[[図像]]は北方絵画では異例で、イタリア絵画に見られる[[聖会話]]の形式である<ref name="ReferenceA />。
+空の代わりの金地の中に、ファン・デル・ウェイデンは貴重な[[ダマスク織]]の掛けられた{{仮リンク|バルダッキーノ|en|baldachin}}を描いている。その下には、[[聖母子]]、[[ペトロ|聖ペトロ]] ([[ピエロ・ディ・ロレンツォ・デ・メディチ|ピエロ・デ・メディチ]]の洗礼聖人<ref name="ReferenceA" />)、[[洗礼者聖ヨハネ]] (フィレンツェの[[守護聖人]]であり、[[レオ10世 (ローマ教皇)|ジョヴァンニ・デ・メディチ]]の洗礼聖人<ref name="ReferenceA" />)、 メディチ家の守護聖人である医師の[[聖人]]、{{仮リンク|聖コスマスと聖ダミアヌス|en|Saints Cosmas and Damian}}がいる<ref name="ReferenceA" /><ref name="ReferenceB" />。この[[図像]]は北方絵画では異例で、イタリア絵画に見られる[[聖会話]]の形式である<ref name="ReferenceA" />。
 聖コスマスは自身のベルトから下がっているハンドバッグにコインを入れているところが描かれているが、これは医療行為のために少額の金銭を受け取り、そのため兄弟のダミアヌスの怒りを買ったという伝説を表している。