コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

「観光業」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
Cewbot (会話 | 投稿記録)
m Robot: ウィキ文法修正 104: Unbalanced quotes in ref name
13行目: 13行目:


;統計
;統計
世界全体の[[GDP]]に占める旅行・観光産業が占める割合は、2000年から2019年までいずれの年もほぼ一定で、およそ10%前後(9%から11%程度)だった。(ただし2020年は[[コロナ禍]]の影響で、対GDP比で5%にまで落ち込んだ<ref name="ShareOfGDP>https://www.statista.com/statistics/1099933/travel-and-tourism-share-of-gdp/</ref>。)
世界全体の[[GDP]]に占める旅行・観光産業が占める割合は、2000年から2019年までいずれの年もほぼ一定で、およそ10%前後(9%から11%程度)だった。(ただし2020年は[[コロナ禍]]の影響で、対GDP比で5%にまで落ち込んだ<ref name="ShareOfGDP">https://www.statista.com/statistics/1099933/travel-and-tourism-share-of-gdp/</ref>。)


「レジャートラベル」(leisure travel レジャー目的の旅行)という切り口で統計をとると、その世界全体の規模は、2000年時点で1兆9000億米ドル規模で、毎年右肩上がりに増加してゆき、2019年時点ではおよそ'''4兆7000億米ドル'''規模にまで成長していた<ref name="statista_leisure_travel">[https://www.statista.com/statistics/1093335/leisure-travel-spending-worldwide/]</ref>。'''大局的、世界的に見て、レジャー目的の旅行(≒観光旅行)は成長産業'''なのである。(ところが、2020年はコロナ禍の影響で半減し、2兆3000億米ドルまで落ち込んだ<ref name="statista_leisure_travel" />)。
「レジャートラベル」(leisure travel レジャー目的の旅行)という切り口で統計をとると、その世界全体の規模は、2000年時点で1兆9000億米ドル規模で、毎年右肩上がりに増加してゆき、2019年時点ではおよそ'''4兆7000億米ドル'''規模にまで成長していた<ref name="statista_leisure_travel">[https://www.statista.com/statistics/1093335/leisure-travel-spending-worldwide/]</ref>。'''大局的、世界的に見て、レジャー目的の旅行(≒観光旅行)は成長産業'''なのである。(ところが、2020年はコロナ禍の影響で半減し、2兆3000億米ドルまで落ち込んだ<ref name="statista_leisure_travel" />)。

2021年11月29日 (月) 00:00時点における版

観光業(かんこうぎょう)あるいは観光産業(かんこうさんぎょう、: tourism)とは、観光に関連する業種や産業の総称である。

具体的には、旅行代理店、観光向け旅館ホテル等、飲食業、観光向けの運輸業(航空会社バス会社タクシー会社等)、お土産や名産品の製造業、観光地の娯楽・レジャー産業など極めて多岐にわたる業種・産業を指す。

観光業、観光産業を明確に定義することは、実は難しい[1]。というのは、他の産業とは異なって目に見えてわかるような明確な製品(product)は無いからである[1]。そもそも観光というものが「旅行のうち、ビジネス目的や健康目的でないもの」とか「滞在が1年以下のもの」などというように、「~でないもの」という形で消去法的に定義せざるを得ないような性質のものであるからでもある[1]

観光業はさまざまな産業にまたがるようにして存在しているので、日本標準産業分類でもひとつの業種として分類はされていない。観光が「旅行のうちでビジネス目的や健康目的でないもの」などと定義されてしまうわけで、第三者からは旅との区別が明確ではなく、つまり "目的" というのは物質的・外形的なものではなく当人の心の内にあるものなのでアンケートでもわざわざ行いでもしないかぎり明確化できないわけなのだが、世の中では旅する人ひとりひとりにわざわざ手間のかかるアンケートはほとんどとっていなく、さまざまな統計というのは企業の会計の数字などをただ積み上げて集計してつくりだすものなので、結果として統計では便宜上「旅行・観光産業」(travel and tourism)などと旅行業と観光業をひとまとめにしてしまうことも多い。

概要

観光に関連するさまざまなサービスや物品を提供している業種や産業である。人々の余暇活動や宗教活動による消費で支えられているという面を持つ。

観光業を国の主要産業として位置づけている国も多い。外国からの観光客を受け入れることに成功し、外国人観光客が国内で消費行動をとってくれれば、国としては外貨を獲得できる。例えばフランスには年間7,600万人(2003年)の観光客が訪れ、地元の観光業界に莫大な金額を落としていってくれる。フランス政府から見ると、フランス・フラン以外の通貨が大量にもたらされることになり、その外貨を使ってさまざまな国の政府や他国の業者との決済をすることができる。外貨の獲得量の量は国の運営に大きな影響を及ぼす。したがって、観光業は国家財政上の極めて重要な業種の一つとなっており、多くの国や地域で観光業の成長が図られており、各国の政府が観光局を設置し、世界各国に配置した出先事務所を通じて自国の観光や産業の広報活動を進めている。

統計

世界全体のGDPに占める旅行・観光産業が占める割合は、2000年から2019年までいずれの年もほぼ一定で、およそ10%前後(9%から11%程度)だった。(ただし2020年はコロナ禍の影響で、対GDP比で5%にまで落ち込んだ[2]。)

「レジャートラベル」(leisure travel レジャー目的の旅行)という切り口で統計をとると、その世界全体の規模は、2000年時点で1兆9000億米ドル規模で、毎年右肩上がりに増加してゆき、2019年時点ではおよそ4兆7000億米ドル規模にまで成長していた[3]大局的、世界的に見て、レジャー目的の旅行(≒観光旅行)は成長産業なのである。(ところが、2020年はコロナ禍の影響で半減し、2兆3000億米ドルまで落ち込んだ[3])。


日本

1990年代後半には日本の製造業に大きな蔭り(かげり)が生じ、2000年ころには世界の製造業の中心地は中国や韓国のほうにシフトしつつあることは明らかになっていた。日本政府は国の経済を支える別の柱、外貨獲得源となる産業の選定や育成が急務となった。2002年サッカー・ワールドカップ開催を契機に、外国人旅行者の増加を目指す「グローバル観光戦略」を策定。国土交通省ビジット・ジャパン・キャンペーンを展開し、2010年までに訪日客を倍増(1,000万人)させる計画を立てている。2017年3月に「観光立国推進基本計画」の改定案が閣議決定され、東京オリンピック開催の2020年に、訪日客数4000万人・インバウンド消費8兆円・地方のインバウンド宿泊7000万人泊といった目標を掲げた[4]

特徴

長所

観光業の長所として、一般に以下のようなものが挙げられる。

  • 観光業の発展で多くの観光客が訪れるようになると、宿泊や運輸、飲食、旅行業など様々な分野での経済活動が活発になり、経済波及効果が高い。
  • 元々その地域に存在する自然や史跡などを利用できる。また小規模であっても産業として成立しうる。
  • 多くの工業と異なり、従業員は高度な技術水準を求められない。
  • 国外から観光客を集めることができれば、国家運営の鍵となる外貨を獲得することが出来る。
  • 世界各地から観光客を集めることが可能になれば、国内景気に左右されにくい産業となる。
  • 観光客が訪れた観光地に好印象を持ってもらえれば、その地のイメージが向上し、観光客が帰国した後も観光地の食品や物品を通販などで購入してくれるようになる。

短所

一方で短所として、以下のようなものが挙げられる。

  • 基本的には娯楽活動に依存する産業であり、消費活動としての優先順位は一番上ではない。その時々の景気流行の影響を受ける。
  • 地方部、田舎であれば自家用車やレンタカーでの乗入れが前提となるので、ときの政権が政治的な都合で変更する高速道路料金の設定に振り回されやすく、またアラブ諸国の政府などが政治的に決める原油価格ガソリン価格の上下動の影響も受ける。高速道路料金や原油価格が高騰すれば、地方部への旅行意欲は減退を生じる。
  • ピーク時と閑散期に業務量に大きな差があり、従業員アルバイトの確保や調整に工夫が必要となる。四季(例・海水浴場スキー場)や時期(正月盆休みクリスマス・中国であれば春節)によって訪れる観光客数は大きく差があり、またその年のたまたまの気候によっても人出に大きな影響が生じる。ホテル遊園地などの施設での人員を臨機応変に増減させることは現実的には難しく、かといって繁忙期の観光客に対応しようとすれば閑散期にはそれらが無駄となり、効率面から見ると不経済な点がある。
  • 規模の拡大を行おうとしても、立地条件による制約や自然保護を目的とした法律によって開発の制限を受ける場合も多い。他にも例えば、海水浴場やスキー場などでは面積によって最大集客数に限界があり、温泉であれば過剰な取水は天然資源の枯渇を招き、かえって観光地としての訴求力を損ない、自滅してしまう。
  • 他の産業とのせめぎあい。自然や歴史などを目玉としている観光地の場合、他の産業とせめぎあったり両立しがたい場合がある。自然環境や街並み・景観などが保全が求められる場合は、工業化・近代化・都市化などが抑制される傾向にある(京都市が典型である)。またその地域の工業化が著しくなれば、観光地としての魅力を失って観光業は衰退するであろうことは容易に予想される。
  • 海外からの観光客に対応する際、外国語を記した看板標識の設置・およびその費用負担が新たに発生する事がある。また、外国人客と意思疎通面において言葉が通じない事によるトラブルへの対処には、通訳案内士のような相手国と日本の事情の両方を知る者の配置が必要となる事もあるが、最近はスマホの通訳機能(たとえばアンドロイドスマートフォンの逐次通訳機能)やグーグル翻訳[2]の機能などで、かなり容易に、しかも無料でコミュニケーションがとれるようになった。

問題

観光業も他の産業と同様に外部性を持っており、観光業の持つ負の外部性として観光公害のような問題が挙げられる。

  • 観光客の増加による公害。ホテル・娯楽施設などの建設や、観光客によるゴミの投棄が引き起こす森林破壊海洋汚染など自然環境の破壊や、悪臭騒音の発生など。
  • 交通量の増加による、道路の交通渋滞・交通機関の混雑。
  • 観光客目当てのスリ・ぼったくり・違法な薬物の販売などの犯罪が増加することによる、周辺地域の治安の悪化。
  • 海外からの観光客の場合、その国の生活習慣やタブーマナーを事前に知らず、トイレなどの設備をうっかりと破損に至らしめたり、周辺の建造物への落書きなど周辺住民などから『不敬・恥知らず』と解釈される行動をしてしまう事で(広い意味では、中国人旅行客の爆買いなどもこれに含まれる事もある)、観光地近くの住民のみならずメディア報道でそれを知った受入れ先の国民の多くが、旅行者らの属する国に否定的なイメージを抱いたり、ひいては国際問題へと発展する例もある。
  • 逆に、海外からの観光客に対しては、宿泊先や外食先で出される日本食などに、宗教上の「食のタブー」となる食材(イスラム教徒に対しての豚肉などが典型)が含まれる事は特に珍しい事ではなく、そういう場面で店側が知らずに提供した事でトラブルとなる例もありうる。これと同様の例で、ベジタリアンにとって「日本で出される食事で、食べられるのは精進料理だけ」といった事態が起きる事は、十分に考えられる。

また、地域外(国外も含む)から大勢の観光客が訪れることで、地域住民との文化的な摩擦や伝統文化の変容などが起こり、地域住民などから反発や当惑の声が起きることもある。特に近年では、メディアやインターネットの影響で海外からの観光客が特定の場所へ急激に増える事態が発生する(その原因の多くには、漫画アニメ作品や音楽のプロモーションビデオの題材となった場所・いわゆる「聖地」であると話題になる事も挙げられる)例が多いが、そうした場合にそれらの文化背景の事情に興味がない住民にとっては、訪問者嫌悪の情が発生する。

こうした傾向は特に近年、「オーバーツーリズム」として国際的に問題視されている。

脚注

関連項目

外部リンク