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「美術モデル」の版間の差分

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美術モデルがとる典型的なポーズを写真で下に示す。
美術モデルがとる典型的なポーズを写真で下に示す。
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2021年11月11日 (木) 01:10時点における版

1915年アメリカ製のサイレント映画『Inspiration (en)』の1シーン/左が、美術モデルで女優のオードリー・マンソン絵画モデルを務めている。
レオナルド・ダヴィンチの『最後の晩餐』でイエス役のモデルとなったピエトリ・バンディネーリ (Pietri Bandinelli)。

美術モデル(びじゅつモデル、: art model)とは、美術作品に資するための人体モデルである。絵画彫刻版画素描、クロッキーなど、あらゆるタイプの作品のモデルを含む。

概要

近年の日本の美術モデルは、20分間ポーズをとり、5分間から10分間の休憩を挟むのが一般的である。20分ポーズを6回とし、ポーズと休憩の合計時間は、2~3時間というしかたで仕事をすることが多い。 「立ちポーズ」「座りポーズ」「寝ポーズ」といった「基本的ポーズ」をとる。(かりに20分のポーズの仕事と5~10分の休憩を合わせたものを「1ターン」と呼ぶとするなら)何ターンでも同じポーズをとりつづける場合と、毎ターン違うポーズをとる場合がある。前者は「固定ポーズ」、後者は「クロッキー」と呼ばれることが多い。クロッキーの場合は短時間でモチーフの形状をつかむことを主眼に行われる。そのため、5分以下で順次ポーズを変えることもしばしば行われる。その他に、静止せずにずっと動き続けている、「ムービング」と呼ばれるものもある。

美術モデルとして求められる重要なことはポーズ中は動かないこととされている。固定ポーズの場合は、休憩をはさんでも同じポーズを取らなければならない。また、制作者からの要望に応じて臨機応変に、的確にポーズが取れるモデルが優れたモデルとされる。とはいえ、ポーズはモデルに任せられることも多い。画学生や画家の要望に応じ、ポージングしていく能力があれば、さらに評価が高くなる。最初はうまくポーズがとれないモデルでも、たいていは経験を積むにつれ制作者が一般的に望むポーズというものが理解できるようになり、経験し記憶に残ったポーズをまるで「引き出し」から出すように、自発的にとれるように大抵の人はなる。モデルの中には既存の美術書を見てポーズのとりかたを勉強する人もいる。

なお、美術モデルとは、「芸術の分野に於ける創作活動に従事するモデル」であり、芸能関係やファッション関係のモデルとは異なる職業である。外国の例についていえば、熱心なキリスト教徒の場合、ヌードを嫌い着衣モデルを起用することもあるが、裸体がアートの基礎であると考えるクリスチャンは、ヌード・モデルを起用することもある。[1]

美術作品を制作する側にとっては、美術モデルというのは大切な存在である。実物の人体が目の前にあると、写真では得られない細かい陰影を見極めることができる。写真では中間の陰影が "飛んで" しまっている。また実物のモデルを使わず写真を利用してデッサンをすると、つい写真平面に格子を切って(つまりペンでマス目の線を引いたり、プラスチックシートに格子が印刷されたものを乗せるなどして)構図どりや採寸を行うなどということをしてしまいがちだが、そうしたやりかたではいつまでもそれらの能力がつかないが、実物の人体を自分の眼で直接凝視してデッサンを描き起こす練習を繰り返すことでそうした能力が本当に身につく。

男性モデルの2つのポーズのデッサン。

男性モデルの身体は、骨格や筋肉のつき方を習得するのに最適である。美術解剖学的知識と適宜照らし合わせると、皮膚の下にある筋肉を把握するのに役立ち、まず人体の骨格や筋肉がありその表面に脂肪や皮膚があるということを深く理解してデッサンができるようになる。(レオナルド・ダビンチなどルネサンス期の画家が、わざわざ人体の解剖などを行って探求した知識である。現在では書籍があるので解剖しなくても学ぶことができ、男性モデルの筋肉をじっくり観察し、実際に筋肉を意識してデッサンすることでその知識がさらに定着する)。女性モデルの身体は、筋肉の上の脂肪の層が厚く曲線に満ちていて男性モデルを描くのとは別の難しさがある。身体の表面の陰影も明らかに男性モデルとは異なっている。美術学生は、男性・女性の両方、さまざまな体型・年齢のモデルを描き、その違いを体験・実感することで能力が向上する。

ポージング

ポーズをとることをポージングと言う。 一般論を言うと、まずモデルは講師などの大まかな指示に従いポーズをとり、その次に姿勢の微修正の要望などが講師や生徒などから出るなどして少し試行錯誤が入ることがあるが、ポーズに関して「OK」を出され各制作者が描き始めたら、もう動いてはならず、一定のポーズを20分ほどとり続けなければならない。

美術モデルがとる典型的なポーズを写真で下に示す。


種類、分類

美術モデルは、細かく言う場合には、デッサン[2]モデル、クロッキー[3]モデル、と分類されることもある。絵画のモデルを漠然と絵画モデルと分類することもある。

着衣状態つまり衣服を着た状態で仕事をするモデルは着衣モデルと分類される。

雇用方法での分類としては、フリー・モデル(美術モデルの派遣事務所等に所属していないモデル)もいれば、専業としている美術モデル(美術モデルの派遣事務所に所属しているモデル)もいる。またダンサー、美術、舞踏、バレエ、現代舞踊、演劇、音楽系の仕事をしていて(あるいは目指しながら)兼業として美術モデルをしている人も多い。主婦やOL、パート、アルバイトのモデルもいる。現在は、いわゆる"プロのモデル"もいる。つまり美術モデルの斡旋を専門にしているモデル事務所に所属し、その仕事ばかりして生活の糧を得ている人である。プロの美術モデルには、ヌードのみを専門にするモデル(ヌードモデル・裸婦モデル)だけでなく、衣装を装った仕事のみを専門にするモデル(コスチュームモデル・着衣モデル)、ヌードと衣装の両方の仕事をするモデルなど、様々なモデルがいる。

歴史

ルーブル美術館の入館案内書の記述によれば、美術モデルは紀元前からその存在は確認されているとあり、モデルと呼ばれるものの中では最古の存在であるとの説もある。

男性美術モデル(中央上部:19世紀・フランス)
日本

日本では、江戸時代の浮世絵春画にも裸婦像がみられる。春画の場合、上半身には着物を着ている場合も多い。

明治時代1889年東京美術学校が開校し、1896年には黒田清輝の帰国により西洋画科を設置した。ヌード・モデルを必要としたが、モデルの女性がなかなか見つからなかったが学校に勤めていた女性が、私ではいかがでしょう?と申し出て、美術学校初のヌード・モデル・デッサンが実現した[4]。宮崎菊という女性が裸婦モデルをしたのが最初とされ、彼女はその後「宮崎モデル屋」を開設し、運営したという[5]

日本では、明治時代には芸用モデルなどと呼ばれた。

需要など

美術界では衣服を着用していない女性を裸婦と言う。なお洋画家・黒田清輝は「裸婦デッサンは絵画制作の基本である」と述べた。
ギュスターヴ・クールベ『画家のアトリエ』/1854-1855年。オルセー美術館所蔵。
制作者側から見た手配のしやすさ、しにくさ

モデルを確保するのは大都市部の美術系大学や絵画教室では比較的容易である。だがそれ以外の地方都市ではかなり困難である(心理的な抵抗を感じる人々が多い)。中高年のモデル希望者も減っており、標準体型か痩せ型の若いモデルが増加している。

需要のある場所、種類別の需要

モデルの需要としては、現在ではモデルを使用するのが絵画系の美大や絵画教室だけでなく、デザイン系、マンガ系、服飾系など様々な学校から個人的なサークル、事業所まである。ヌードモデルから、民族衣装・バレエ衣装などの舞踊衣装・職業制服・ドレス・平服(カジュアルな服装)等の様々な衣装を着用する着衣モデルまで、業務内容も多様である。

プロの美術モデルの場合は、ヌードモデルのみを専門にしているモデルも、着衣モデルのみを専門にしているモデルも存在している。女性ヌードモデルの需要が圧倒的に多い。着衣のモデルの場合、自前の民族衣装やバレエの衣装を用いることも多い。

男性モデルの需要はきわめて少なく、女性モデルの需要が圧倒的に大きい。学校によっては女性モデルしか使用しないが、男性を雇用する施設もあり、要は講師の考え方しだいである。

報酬額

美術モデルの謝礼報酬は、大都市部の裸婦モデルで1時間3000円、地方で1時間2500円に交通費を加えた額を支払う場合が多い。美術モデル事務所等に所属している美術モデルの場合には、各々の事務所規定の報酬となる。

ルール、暗黙のルール

クロッキー会や絵画教室、美術大学では、裸婦モデルがポーズ中は室内へ入らないことがルールである。エチケットを守って、裸婦モデルに気持ち良く仕事をしてもらうことを心掛けたい。また、ヌードモデル・着衣モデルに関わらず、モデルへのプライベートな質問をしない、というのが暗黙の了解である。

主な美術モデル

ファイル:Akt mit Spiegel.jpg
「モンパルナスのキキ」として知られたアリス・プランユトリロモディリアーニのモデルを務めた。

アリス・プランオードリー・マンソンオリーヴ・トーマスらが特に有名である。生年、没年は不要。モデルのリストが必要な研究者は、Category:美術モデルを参照。著名な美術モデルとしては、オードリー・マンソン[6]やモンパルナスのキキ[注 1]などがいた。オードリー・マンソンは美術モデルの他に女優や作家も兼業していた。オードリーは1915年11月18日公開のアメリカサイレント映画『Inspiration (en)』で、映像作品で初めてヌードになった女優とも言われている[7]

脚注

注釈

  1. ^ キキは美術モデルだけでなく、女優、歌手としても活動した。

出典

  1. ^ POLICY ON THE USE OF NUDE MODELS IN ART”. Gordon University, Department of Art.. 23 November 2012閲覧。
  2. ^ http://kotobank.jp/word/デッサン-576188
  3. ^ http://kotobank.jp/word/クロッキー-57997
  4. ^ 「裸婦ポーズ集―Let’sダ・ヴィンチ」若林利重・藤田恒夫、p.107
  5. ^ 若林・藤田 2002, p. 107.
  6. ^ http://www.imdb.com/name/nm0613242/
  7. ^ http://www.imdb.com/name/nm0613242/

参考文献

  • 若林利重、藤田恒夫『裸婦ポーズ集―Let’sダ・ヴィンチ』六耀社、2002年10月1日。OCLC 166705955 ISBN 4-89737-449-9ISBN 978-4-89737-449-9

推薦書

英語で書かれた書籍

関連項目

外部リンク