「日本国紀」の版間の差分
m cewbot: ウィキ文法修正 69: ISBNの構文違反 |
|||
70行目: | 70行目: | ||
== 関連書籍 == |
== 関連書籍 == |
||
*百田尚樹、有本香『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』[[産経新聞出版]] (2018/12/28) ISBN |
*百田尚樹、有本香『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』[[産経新聞出版]] (2018/12/28) ISBN 978-4819113557 |
||
== 脚注 == |
== 脚注 == |
2019年9月11日 (水) 01:23時点における版
日本国紀[1] | ||
---|---|---|
編集者 | 有本香[2] | |
著者 | 百田尚樹[1] | |
発行日 |
2018年11月12日[1] 2018年11月10日第1刷[3] 2018年11月15日第2刷[4] 2018年11月20日第3刷[5] 2018年11月25日第4刷[6] 2018年11月28日第5刷[7] | |
発行元 | 幻冬舎[1] | |
ジャンル |
歴史[1] 日本文学、評論、随筆、その他[1] | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
ページ数 | 509 | |
公式サイト | 公式ウェブサイト | |
コード | 9784344033856[1] | |
|
『日本国紀』(にほんこくき)は、百田尚樹が2018年に幻冬舎から刊行した書籍である[1]。
内容
縄文時代から平成時代までの書き下ろしであり[8]、「日本通史の決定版」[1]、「壮大なる叙事詩」と銘打たれている[9]。また広告等では幻冬舎の創立25周年記念出版と銘打たれている[9]。
編集者は有本香で[2]、また大阪観光大学の歴史学講師を務める戦史研究家の久野潤・評論家の江崎道朗・元月刊正論編集長上島嘉郎、著述家の谷田川惣の助力を得た[10]。このうち久野潤は書誌情報上は「監修」と記載されていないが、自分のかかわり方として「監修」であるとし、度々「監修」と称している[11]。また「著者―編集者―監修者の間でかなりの議論を経て生み出された」「各分野の研究史を踏まえた歴史のプロである監修者の指摘を受け入れず、百田史観を貫いた部分」もあるとしている[11]。
また教科書やウィキペディアにあるような通説的記述も多いが、古代史については古田武彦の九州王朝説、中世史については井沢元彦の「怨霊史観」説など通説から離れた記述もある[12]。
評価
売上
『日本国紀』は発売前から大きな反響を呼び、発売前の時点で5万部の重版がかかり[8]、amazon.co.jpにおいては発売前から2週間連続でベストセラー1位となった[11]。
肯定的な評価
著述家の宇山卓栄は、本書の百田の考えは「実にバランスの取れたフェアなもので、日本の歴史教育では意図して教えない歴史の隠蔽に斬り込む姿勢が大ヒットに繋がっている」と評価した。通説と作家の考えが混合しているとの批判に、「百田は自身の考えや推論、仮説を提示する際には文脈上混同しないよう明確に書き分けており、その区別のつかない批判者はよほど読解力がないと言わざる得ない」と述べた[13]。また「中世において、『日本書紀』が編さんされた目的の一つに、日本が朝鮮半島を支配した証拠や根拠となる史実を論証するという狙いがあった」と述べ、「『日本国紀』は現代版『日本書紀』たらんとする気概を持って書かれた」と評している[13]。
批判
一方で内容の矛盾やウィキペディアやNAVERまとめ、Yahoo!知恵袋からの転用疑惑が指摘されている[14][15][16]。ニュースサイト『リテラ』は11月17日と11月20日付のそれぞれで、「記述の矛盾やウィキペディア・新聞記事・歴史研究書からの転載疑いがある、一部を除き参考文献が示されていない」などと論じた[17][18]。
毎日新聞のまとめによれば、ウィキペディアの紫式部や文禄・慶長の役、荻原重秀などの項目に書かれていた文章が、極めて近い表現で記述されていることが指摘されている[19]。扶桑社が運営するウェブサイト『ハーバー・ビジネス・オンライン』は12月1日付で、「246 - 249ページのジョン万次郎に関する記述はウィキペディアの要約ではないか、把握できた限りで全体の1.8パーセント相当の約9ページ分がインターネット上の記事をコピー・アンド・ペーストし改変したものではないか、などの疑惑がかけられている」と報じた[20]。また『逆説の日本史』などで知られる井沢元彦の説との類似も指摘されている[11]。
史学者からの批判
現代史家の秦郁彦は、『日本国紀』は評論家の江藤淳と同様にウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムを過大評価していると指摘した上で、「陰謀史観的だ」と評している[11]。
日本中世史家の呉座勇一は、西尾幹二の『国民の歴史』に比べれば穏健であるとした上で、「研究者の中には、暗殺(毒殺)されたと見る者も少なくない」と足利義満暗殺説を記述していることが象徴的であるとして、「古代・中世史に関しては作家の井沢元彦氏の著作に多くを負っている」が、井沢の説であることを明示せずに有力説であるかのように示していると指摘している[21][12]。また刀伊の入寇の際の対応など[12]、平安時代の貴族が退廃的であったことや、足利義政が政治から離れたという理解は古い伝統的な歴史観であると指摘し、「日本史学界の守旧性を激しく批判し、新しい歴史像の提示を謳っているのだが、彼らの歴史理解は実のところ古い」と指摘している[21][22]。また近現代史においても「ベトナムとカンボジアとラオスを植民地としていたフランス」を相手に「植民地解放のため」日本が戦った[23]という記述など致命的な錯誤がみられ、短い時間とはいえずさんな校閲を行った、「監修」を自認する戦史研究家である久野の責任についても指摘している[24][12]。
そして、『中央公論』2019年6月号掲載の論稿のなかで、同書の総合的な特徴として「教科書と大差ない淡白な通史的叙述と面白エピソード・豆知識、そして愛国談義が雑然と並んでいる。百田氏にこれらを統合する知的体力がないからである」と評し、同じ本の中で矛盾した記述をしているのにその点に無頓着なのは「そもそも百田氏が日本通史に全然関心を持っていない」からではないか、その根拠としてフランシスコ・ザビエルとルイス・フロイスを取り違えた記述があるとの指摘に対して百田が「どっちにしても外人や」と発言していることを挙げている。
そして日本通史に関心がないのに通史の本を出したのは、数ある「ネットウヨ本」と一線を画すかのような装丁、タイトルで同趣旨の本を出せば売れるだろうとの商業的動機からではないかと推測している。
宝島社は2019年8月21日に『百田尚樹「日本国紀」の真実』を出版し、秦郁彦のインタビュー、「全正誤表」と題した一覧表を掲載している。また『日本国紀』の内容だけでなく、百田個人や見城の批判を行っている[25]。
批判に対する著者側の反応
これらの批判に対し、著者の百田、編集者の有本香は度々再批判を行っているが、本格的な反論は行われていない[24]。呉座は、この点を取り上げ「百田氏はツイッターでの口喧嘩には強いが、論理的な長い文章は苦手なようだ」と評している。
ウィキペディアからの盗用疑惑に対しては、百田は「執筆にあたっては大量の資料にあたりました。その中にはもちろんウィキ[26]もあります。しかしウィキから引用したものは、全体(500頁)の中の1頁分にも満たないものです。」[27]と自らのTwitterで述べている。
また「監修」を自認する久野潤はネット上や各種メディアで「反論」を行っている[11]。久野に名指しで批判された呉座勇一は[11]、たびたび反論を掲載しており[24]、一種の論争となっている[28]。
一方で、インターネット上などで指摘された本書の誤りが、増刷後の版では告知なく修正されている。毎日新聞は、日本人を評した言葉を発した人物が「ルイス・フロイス」と書かれていた部分が、重版後には「フランシスコ・ザビエル」に修正されていたと指摘している[19]。 また『週刊実話』は、皇位継承に関する箇所が、告知せずに第4刷で訂正されていたと報じている[29]。
批判作家の文庫が出版中止騒動
『日本国紀』に見られるWikipediaなどからの「コピペ」についてTwitter上で繰り返し批判していた作家、津原泰水が[30]、幻冬舎から2019年4月に刊行予定だった文庫本を出せなくなる騒動が起きた[31]。
津原は、2019年1月初めに幻冬舎の担当者から「『日本国紀』販売のモチベーションを下げている者の著作に営業部は協力できない」などと伝えられ、その後出版中止が告げられたという[32]。
幻冬舎は、津原に対して『日本国紀』批判を抑えるよう伝えたが、出版中止は幻冬舎側から出たものではなく津原からの申し出だったとコメントした[33]。それに対して津原は、自身のTwitterで幻冬舎の担当者とのメール文面の一部を公開し、幻冬舎のコメント内容を真っ向から否定している[34]。
また、津原による一連の告発を受けて、幻冬舎社長の見城徹が自身のTwitterで「文庫化中止は津原さんからの申し出」とした上で、「僕は出版を躊躇っていたが担当者の熱い想いに負けてOKを出した。担当者の心意気に賭けて文庫化も決断した」と説明したが、この際に本来非公表である津原の著書の実売部数を明らかにしたことで、作家や編集関係者が猛反発し、「完全に一線越えてる」「作家に対する敬意はゼロなのか」「編集者のモラルにもとる」と批判を受けた[35]。見城はこの批判を受けて当該発言を削除し謝罪、さらにAbemaTVの自身の冠番組『徹の部屋』でも改めて謝罪するとともに、発言の責任を取りTwitterとトークアプリの755の更新を終了、同番組も相談の上で終了させることを発表した[36]。
関連書籍
- 百田尚樹、有本香『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』産経新聞出版 (2018/12/28) ISBN 978-4819113557
脚注
- ^ a b c d e f g h i “日本国紀”. 幻冬舎. 2018年11月21日閲覧。
- ^ a b 有本香 (2018年10月26日). “【有本香の以毒制毒】発売前にベストセラー!? アマゾンランキングも不動の一位 百田尚樹さん「日本国紀」現象とは”. 夕刊フジ. 産業経済新聞社. 2018年11月21日閲覧。
- ^ 『日本国紀』第1刷、2018年11月10日、奥付
- ^ 『日本国紀』第2刷、2018年11月15日、奥付
- ^ 『日本国紀』第3刷、2018年11月20日、奥付
- ^ 『日本国紀』第4刷、2018年11月25日、奥付
- ^ 『日本国紀』第5刷、2018年11月28日、奥付
- ^ a b “百田尚樹さん「日本国紀」が異例の発売前5万部重版 アマゾンに事前予約殺到”. 産経新聞. 産業経済新聞社 (2018年10月22日). 2018年11月21日閲覧。
- ^ a b “(2018年11月25日付産経新聞・中日東京新聞広告)”. 幻冬舎営業局 (2018年11月24日). 2018年12月1日閲覧。
- ^ 『日本国紀』第3刷、2018年11月20日、pp.508-509
- ^ a b c d e f g 久野潤 (2019年1月6日). “(百田尚樹『日本国紀』をコンナヒトタチに批判されたくない”. iRONNA. 2019年2月22日閲覧。
- ^ a b c d 呉座勇一 (2019年1月11日). “『日本国紀』監修者・久野潤氏の反論に応える②”. アゴラ 2019年2月22日閲覧。
- ^ a b 宇山卓栄 (2019年1月6日). “百田尚樹『日本国紀』はなぜ支持されるのか”. 2019年1月7日閲覧。
- ^ “百田尚樹『日本国紀』が「矛盾」「コピペ」騒動で大炎上?”. 週刊実話. 日本ジャーナル出版 (2018年11月19日). 2018年11月21日閲覧。
- ^ “売り上げ好調 百田氏「日本国紀」に「コピペ」騒動 専門家の評価は?”. 毎日新聞. (2018年12月20日) 2018年12月20日閲覧。
- ^ “百田尚樹『日本国紀』が「Yahoo!知恵袋」コピペだとアンチがイチャモン!”. 週刊実話.日本ジャーナル出版(2019年01月28日). 2019年5月16日閲覧。
- ^ 小杉みすず (2018年11月17日). “百田尚樹『日本国紀』の無知と矛盾にネットから総ツッコミが! 同じ本なのに主張がバラバラ、監修者降板騒動も”. リテラ. サイゾー. 2018年12月1日閲覧。
- ^ 小杉みすず (2018年11月20日). “Wikiコピペ疑惑の百田尚樹『日本国紀』を真面目に検証してみた! 本質は安倍改憲を後押しするプロパガンダ本だ”. リテラ. サイゾー. 2018年12月1日閲覧。
- ^ a b “百田氏「日本国紀」に「コピペ」騒動”. 毎日新聞. (2018年12月20日) 2019年2月22日閲覧。
- ^ GEISTE (2018年12月1日). “「歴史的事実は誰が書いても一緒」にはならない、たった一つの確かな理由~百田尚樹氏『日本国紀』”. ハーバー・ビジネス・オンライン. 扶桑社. 2018年12月1日閲覧。
- ^ a b 呉座勇一 (2018年12月10日). “(呉座勇一の歴史家雑記)通説と思いつきの同列やめて”. 朝日新聞 2018年12月20日閲覧。
- ^ 呉座勇一 (2018年12月11日). “(呉座勇一の歴史家雑記)足利義政のイメージは本当か”. 朝日新聞 2018年12月20日閲覧。
- ^ 第二次世界大戦におけるインドシナの状況については仏印進駐、第二次世界大戦下のフランス領インドシナ、明号作戦を参照。
- ^ a b c 呉座勇一 (2019年1月10日). “『日本国紀』監修者・久野潤氏の反論に応える①”. アゴラ 2019年2月22日閲覧。
- ^ “百田尚樹『日本国紀』の真実”. 宝島社. 2019年8月22日閲覧。
- ^ ウィキペディアを指す。原文ママ
- ^ 百田尚樹 [@hyakutanaoki] (2018年11月21日). "2018年11月21日午前11:07のツイート". X(旧Twitter)より2019年2月22日閲覧。
- ^ 八幡和郎 (2019年1月6日). “『日本国紀』をめぐる久野・呉座論争とは何か”. アゴラ 2019年2月22日閲覧。
- ^ “百田尚樹氏『日本国紀』指摘された“皇室男系の定義”をこっそり修正”. 週刊実話. 日本ジャーナル出版 (2018年12月3日). 2018年12月7日閲覧。
- ^ 津原泰水 (2018年11月25日). “津原泰水さんのツイート(2018年11月26日9:03)”. @tsuharayasumi. 2019年5月16日閲覧。
- ^ “百田尚樹さんの「日本国紀」批判で出版中止 作家が幻冬舎を批判”. 毎日新聞. 2019年5月16日閲覧。
- ^ 津原泰水 (2019年5月13日). “津原泰水さんのツイート(2019年5月14日10:44)”. @tsuharayasumi. 2019年5月16日閲覧。
- ^ “百田尚樹『日本国紀』批判したら「文庫出せなくなった」 作家が告発、幻冬舎「事実でない」”. J-CASTニュース (2019年5月16日). 2019年5月16日閲覧。
- ^ 津原泰水 (2019年5月15日). “津原泰水さんのツイート(2019年5月16日7:25)”. @tsuharayasumi. 2019年5月16日閲覧。
- ^ “幻冬舎・見城社長が出版中止作家の「部数さらし」のち謝罪 同業者から集中砲火「完全に一線越えてる」”. 毎日新聞 (2019年5月17日). 2019年5月20日閲覧。
- ^ “幻冬舎・見城徹社長、ツイッター&755&冠番組終了を宣言 部数公表の作家に謝罪「お詫び申し上げます」”. ORICON NEWS (2019年5月20日). 2019年5月20日閲覧。