バーバ・ヤーガ

バーバ・ヤーガ（イヴァン・ビリビン画）

バーバ・ヤーガ（Ба́ба-Яга́、Baba Yaga、バーバ・ヤガーとも）は、スラヴ民話に登場する妖婆（Crone）。各種の民話で語られるほか、芸術分野ではムソルグスキー作曲の組曲『展覧会の絵』の1曲「バーバ・ヤーガの小屋（鶏の足の上に建つ小屋）」で知られる。

日本語では魔女、魔女ばあさん、山姥、鬼婆、妖婆などと訳されてきたが、近年は上述した「展覧会の絵」の副題にあらわれるバーバ・ヤーガの表記がされることが多い。だがスラヴ系のどの言語でもこういった言い方はせず、最も近いロシア語の読みに従った表記ではバーバヤガーとなる。

由来

ストックホルムのスカンセン野外博物館で展示されているサーミ人の高床式倉庫

もとはスラヴ神話における冬の神話的表現に起源していると考えられている。後にスラヴ人がキリスト教に改宗することで古来の神々は善神ならキリスト教の聖人、悪神や自然の脅威を象徴した神なら妖怪、悪魔に置き換えられていき、北方の凍てつく冬の神話的表現は恐ろしい魔女のような妖婆として表現されるようになったものとされる。

またサーミ人の文化圏では高床式の倉庫がかつては造られていたが、これがバーバ・ヤーガの棲む「鶏の足の上に立つ小屋」というモチーフの外見的な由来に影響があったと考えられる。

特徴

森に住む妖婆。骨と皮だけにまで痩せこけて、脚に至ってはむき出しの骨だけの老婆の姿をしている。人間を襲う魔女のごとき存在で、森の中の一軒家に住んでいる。その家は鶏の足の上に建った小屋で、庭にも室内にも人間の骸骨が飾られているという。普段は寝そべって暮らしており、移動するときは細長い臼に乗る。バーバ・ヤーガが右手で持った杵で急かすと、この臼は少しだけ浮かび上がり、底の部分だけを引き摺って移動する。左手にはほうきを持っており、移動した跡を消す。

民話に登場するときはたいてい敵役で、子供を誘拐して取って喰うパターンが典型である。ゆえに多くの物語では、彼女の助けを借りるのは危険な行為として描かれている。しかし災いに陥った主人公たちを彼女が助ける民話もあるし、たいていの民話では主人公が礼儀正しさ、節度の遵守、魂の清らかさを示せば善玉としてふるまう。

多くの民話では一人しか登場しないが、三人のバーバ・ヤーガが登場する「鷹フィニストの羽根」といった物語もある。こういう図式の物語に登場するバーバ・ヤーガはふつう慈悲深くて、主人公に適切な助言をしたり、不思議なプレゼントを贈ったりする。

バーバ・ヤーガの登場するロシアの民話

• 鷹フィニストの羽根
• うるわしのワシリーサ
• 竜王と賢女ワシリーサ
• 蛙の王女
• 鵞鳥白鳥
• ダニーラ・ゴヴォリーラ王

関連項目

• 展覧会の絵 - モデスト・ムソルグスキーの楽曲。
• バーバ・ヤーガ (リャードフ) - アナトーリ・リャードフの楽曲。
• 小林源文 - 作品中に登場するロシア兵の台詞にある「魔女のバアさん」云々の語句はバーバ・ヤーガを指す。また降雪による戦況の悪化を「魔女のバアさんの呪い」と呼ぶ。
• 山姥
• なるたる - 鬼頭莫宏による漫画作品。ロシア編にて、「ヤガーばあさんの小屋」として空を飛ぶニワトリ足の小屋が登場する。
• バーバ・ヤガー (漫画) - サトウナンキ原作、きづきあきら作画の漫画作品。
• パン種とタマゴ姫 - 宮崎駿による映画作品。魔力を使う老婆「バーバヤーガ」が登場する。
• 靴ずれ戦線 -魔女ワーシェンカの戦争- - 速水螺旋人の漫画。主人公の一人である魔女のワーシェンカがバーバ・ヤーガの弟子という設定。物語冒頭にニワトリ足の小屋とバーバ・ヤーガが登場する。