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「技術的特異点」の版間の差分

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ポスト・ヒューマン誕生 P.40、レイ・カーツワイル著、2005年}}<ref group="注">カーツワイルが想定する2045年の技術的特異点を「コンピューターの知性が人間を超えること」とする報道が一部メディアで見られるが、カーツワイルはコンピューターの知性が人間を超える時期を2020年代と予想しており、誤解である。「人間の知能を模倣するために必要なハードウェアが、スーパーコンピューターでは10年以内に、パーソナル・コンピュータ程度のサイズの装置ではその次の10年以内に得られる。'''2020年代半ば'''までに、人間の知能をモデル化した有効なソフトウェアが開発される。」「ハードとソフトの両方が人間の知能を完全に模倣できるようになれば、'''2020年代'''の終わりまでには、コンピューターがチューリングテストに合格できるようになり、コンピュータの知能が生物としての人間の知能と区別がつかなくなるまでになる。」(ポスト・ヒューマン誕生 P.40、レイ・カーツワイル著、2005年)。カーツワイルが想定する2045年の世界のシナリオは端的に言えば「1000ドルのコンピューターの演算能力がおよそ10ペタ[[FLOPS]]の人間の脳の100億倍にもなり、技術的特異点に至る知能の土台が十分に生まれているだろう」というもので、コンピューター1台が人間一人あるいは人類全体の知能(100億人分の知能)を超えた瞬間に激変が起きることを意味していない。</ref>
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またカーツワイルは、2030年代の始めには、コンピュータの計算能力は現存している全ての人間の生物的な知能の容量と同等に達し、2045年には、1000ドルのコンピューターの演算能力がおよそ10ペタ[[FLOPS]]の人間の脳の100億倍にもなり、技術的特異点に至る知能の土台が十分に生まれているだろうと予測しており、この時期に人間の能力と社会が根底から覆り変容すると予想している<ref>カーツワイル p.151</ref>。このカーツワイルの予測時期を取って、技術的特異点は<b>2045年問題</b>とも呼ばれている<ref>2045年問題 松田卓也 (著)</ref>。
またカーツワイルは、2030年代の始めには、コンピュータの計算能力は現存している全ての人間の生物的な知能の容量と同等に達し、2045年には、1000ドルのコンピューターの演算能力がおよそ10ペタ[[FLOPS]]の人間の脳の100億倍にもなり、技術的特異点に至る知能の土台が十分に生まれているだろうと予測しており、この時期に人間の能力と社会が根底から覆り変容すると予想している<ref>カーツワイル p.151</ref>。このカーツワイルの予測時期を取って、技術的特異点は'''2045年問題'''とも呼ばれている<ref>2045年問題 松田卓也 (著)</ref>。


特異点が発生することを予測する他の論者も、21世紀半ばから22世紀半ばにかけて起こると予測していることが多い<ref>http://memo7.sblo.jp/article/16576836.html</ref>。しかし、[[ゴードン・ベル]]のように技術的特異点の概念自体は認めながらも、実現時期は遠い将来であると考える識者も存在する。
特異点が発生することを予測する他の論者も、21世紀半ばから22世紀半ばにかけて起こると予測していることが多い<ref>http://memo7.sblo.jp/article/16576836.html</ref>。しかし、[[ゴードン・ベル]]のように技術的特異点の概念自体は認めながらも、実現時期は遠い将来であると考える識者も存在する。

2016年11月15日 (火) 15:11時点における版

技術的特異点(ぎじゅつてきとくいてん、英語:Technological Singularity)、またはシンギュラリティSingularity)とは、人工知能が人間の能力を超えることで起こる出来事[1][2]とされ、テクノロジーが急速に変化し、それにより甚大な影響がもたらされ、人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまうとする未来予測のこと[3]未来研究においては、正確かつ信頼できる、人類の技術開発の歴史から推測され得る未来モデルの限界点と位置づけられている。

概要

技術的特異点は、汎用人工知能en:artificial general intelligence AGI)[4]、あるいは「強い人工知能」や人間の知能増幅が可能となったときに起こるとされている出来事であり、ひとたび優れた知性が創造された後、再帰的に更に優れた知性が創造され、人間の想像力が及ばない超越的な知性が誕生するという仮説である。 フューチャリストらによれば、特異点の後では科学技術の進歩を支配するのは、人類ではなく強い人工知能やポストヒューマンであり、従ってこれまでの人類の傾向に基づいた人類技術の進歩予測は通用しなくなると考えられている。

この概念は、数学者ヴァーナー・ヴィンジと発明者でフューチャリストのレイ・カーツワイルにより初めて提示された。彼らは、意識を解放することで人類の科学技術の進展が生物学的限界を超えて加速すると予言した。意識の解放を実現する方法は、さまざまな方法が提案されている。カーツワイルはこの加速度的変貌がムーアの法則に代表される技術革新の指数関数的傾向に従うと考え、収穫加速の法則(Law of Accelerating Returns)と呼んだ。

特異点が現実化するかについては議論が続いているが、多数の人がこの予測を肯定的に捉え、その実現のために活動している。一方で、特異点は危険で好ましくなく、あってはならないと考える人々もいる。実際に特異点を発生させる方法や、特異点の影響、人類を危険な方向へ導くような特異点を避ける方法などが研究されている。

アイディアの歴史

技術的特異点のアイディアは少なくとも19世紀半ばまで遡る。 1847年、Primitive Expounder の編集者である R. Thornton は、当時、四則演算可能な機械式計算機が発明されたことに因んで、冗談半分に次のように書いている[5]

… そのような機械を使えば、学者は精神を酷使することなくただクランクを回すだけで問題の答を捻り出せてしまう訳で、これが学校にでも持ち込まれたなら、それこそ計算不能なほどの弊害を齎すでしょう。いわんや、そのような機械がおおいに発展し、自らの欠陥を正す方策を思いつくこともないまま、人智の理解を超えた概念を捻り出すようになったとしたら!

1951年、アラン・チューリングは人間を知的能力において凌駕する機械について述べている[6]

機械が思考する方法がひとたび確立したならば、我らの如きひ弱な力はすぐに追い抜いて行くだろう。… 従って何らかの段階で、丁度サミュエル・バトラーエレホン(en:Erehwon)の中で描いたように、機械が実権を握ることになると考えねばなるまい。

1958年5月、スタニスワフ・ウラムジョン・フォン・ノイマンとの会話に言及して次のように書いている[7]

あるとき、進歩が速まる一方の技術と生活様式の変化が話題となり、どうも人類の歴史において何か本質的な特異点が近づきつつあって、それを越えた先では我々が知るような人間生活はもはや持続不可能になるのではないかという話になった。

1965年、統計家 I. J. Good は、人類を超えた知能による世界への影響を強調し、より特異点に迫るシナリオを描いた。

超知的マシンを、いかなる賢い人もはるかに凌ぐ知的なマシンであるとする。そのようなマシンの設計も知的活動に他ならないので、超知的マシンはさらに知的なマシンを設計できるだろう。それによって間違いなく知能の爆発的発展があり、人類は置いていかれるだろう。従って、最初の超知的マシンが人類の最後の発明となる。

ジェラルド・S・ホーキンズは、著書『宇宙へのマインドステップ』(白揚社、1988年2月。原著は1983年8月)の中で「マインドステップ」の観念を明確にし、方法論または世界観に起きた劇的で不可逆な変化であるとした。彼は、人類史の5つのマインドステップと発生した「新しい世界観」に伴う技術を示した(彫像、筆記、数学、印刷、望遠鏡、ロケット、コンピュータ、ラジオ、テレビ……)。曰く、「個々の発明は集合精神を現実に近づけ、段階をひとつ上ると人類と宇宙の関係の理解が深まる。マインドステップの間隔は短くなってきている。人はその加速に気づかないではいられない。」ホーキンズは経験に基づいてマインドステップの方程式を定量化し、今後のマインドステップの発生時期を明らかにした。次のマインドステップは2021年で、その後2つのマインドステップが2053年までに来るとしている。そして技術的観点を超越し次のように推測した。

マインドステップは……一般に、新たな人類の展望、ミームやコミュニケーションに関する発明、次のマインドステップまでの(計算可能ではあるが)長い待機期間を伴う。マインドステップは本当に予期されることはなく、初期段階では抵抗がある。将来、我々も不意打ちを食らうかもしれない。我々は今は想像もできない発見や概念に取り組まざるをえなくなるかもしれないのだ。

特異点の概念は数学者であり作家でもあるヴァーナー・ヴィンジによって大いに普及した。ヴィンジは1980年代に特異点について語りはじめ、オムニ誌の1983年1月号で初めて印刷物の形で内容を発表した。彼は後に1993年のエッセイ "The Coming Technological Singularity" の中でその概念をまとめた(ここには、よく引用される「30年以内に私達は超人間的な知能を作成する技術的な方法を持ち、直後に人の時代は終わるだろう」という一文を含んでいる)。

ヴィンジは、超人間的な知能が、彼らを作成した人間よりも速く自らの精神を強化することができるであろうと書いている。「人より偉大な知能が進歩を先導する時、その進行はもっとずっと急速になるだろう」とヴィンジは言う。自己を改良する知性のフィードバックループは短期間で大幅な技術の進歩を生み出すと彼は予測している。

超人間的知性の創造

ヴァーナー・ヴィンジは、考えられうる人類を超える知性を創造する方法として、以下の4つを挙げている[8]

上記のもの以外に、向知性薬(向精神薬の一種)の利用、AIアシスタント、精神転送などが提案されている。ジョージ・ダイソンは、著書 Darwin Among the Machines の中で、十分に複雑なコンピュータネットワーク群知能を作り出すかもしれず、将来の改良された計算資源によってAI研究者が知性を持つのに十分な大きさのニューラルネットワークを作成することを可能にするかもしれないという考えを示した。精神転送は人工知能を作る別の手段として提案されているもので、新たな知性をプログラミングによって創造するのではなく、既存の人間の知性をデジタル化してコピーすることを意味する。

特異点到達に積極的な組織は、その方法として人工知能を選ぶことが最も一般的である。例えば、Singularity Institute(特異点研究所)は、2005年に出版した "Why Artificial Intelligence?" の中で、その選択理由を明らかにしている。

カーツワイルの収穫加速の法則

人類史上のパラダイムシフトとなった重要な出来事を、15の独立したリストで示した両対数グラフ[9]

レイ・カーツワイルは、歴史研究の結果、技術的進歩が指数関数的成長パターンにしたがっていると結論付け、特異点が迫っているという説の根拠としている。これを「収穫加速の法則」(The Law of Accelerating Returns)と呼ぶ。彼は集積回路が指数関数的に細密化してきているというムーアの法則を一般化し、集積回路が生まれる遥か以前の技術も同じ法則にしたがっているとした。

彼によれば、ある技術が限界に近づくと、新たな技術が代替するように生まれてくる。パラダイムシフトがますます一般化し、「技術革新が加速されて重大なものとなり、人類の歴史に断裂を引き起こす」と予測している(カーツワイル、2001年)。カーツワイルは特異点が21世紀末までに起きると確信しており、その時期を2045年としている(カーツワイル、2005年)。彼が予想しているのは特異点に向けた緩やかな変化であり、ヴィンジらが想定する自己改造する超知性による急激な変化とは異なる。この違いを「ソフトな離陸」(soft takeoff)と「ハードな離陸」(hard takeoff)という用語で表すこともある。

カーツワイルがこの法則を提案する以前、多くの社会学者人類学者は社会文化の発展を論じる社会理論を構築してきた。ルイス・H・モーガンレスリー・ホワイトゲルハルト・レンスキらは文明の発展の原動力は技術の進歩であるとしている。モーガンのいう社会的発展の三段階は技術的なマイルストーンによって分けられている。ホワイトは特定の発明ではなく、エネルギー制御方法(ホワイトが文化の最重要機能と呼ぶもの)によって文化の度合いを測った。彼のモデルはカルダシェフの文明階梯の考え方を生むこととなった。レンスキはもっと現代的な手法を採用し、社会の保有する情報量を進歩の度合いとした。

1970年代末以降、アルビン・トフラー未来の衝撃の著者)、ダニエル・ベル、およびジョン・ネイスビッツは、脱工業化社会に関する理論からアプローチしているが、その考え方は特異点近傍や特異点以後の社会の考え方に類似している。彼らは工業化社会の時代が終わりつつあり、サービスと情報が工業と製品に取って代わると考えた。

時期の予測

ヴィンジは、1993年のエッセイにおいて技術的特異点の到来を2005年から2030年の間の時期であると予想した。齊藤元章は2030年よりも前に技術的特異点が訪れる可能性があるとしている。カーツワイルは、コンピューターの知性が人間を超える時期を2020年代と予想している。

・人間の知能を模倣するために必要なハードウェアが、スーパーコンピューターでは10年以内に、パーソナル・コンピュータ程度のサイズの装置ではその次の10年以内に得られる。2020年代半ばまでに、人間の知能をモデル化した有効なソフトウェアが開発される。

・ハードとソフトの両方が人間の知能を完全に模倣できるようになれば、2020年代の終わりまでには、コンピューターがチューリングテストに合格できるようになり、コンピュータの知能が生物としての人間の知能と区別がつかなくなるまでになる。

ポスト・ヒューマン誕生 P.40、レイ・カーツワイル著、2005年

[注 1]

またカーツワイルは、2030年代の始めには、コンピュータの計算能力は現存している全ての人間の生物的な知能の容量と同等に達し、2045年には、1000ドルのコンピューターの演算能力がおよそ10ペタFLOPSの人間の脳の100億倍にもなり、技術的特異点に至る知能の土台が十分に生まれているだろうと予測しており、この時期に人間の能力と社会が根底から覆り変容すると予想している[10]。このカーツワイルの予測時期を取って、技術的特異点は2045年問題とも呼ばれている[11]

特異点が発生することを予測する他の論者も、21世紀半ばから22世紀半ばにかけて起こると予測していることが多い[12]。しかし、ゴードン・ベルのように技術的特異点の概念自体は認めながらも、実現時期は遠い将来であると考える識者も存在する。

批判

否定論からの批判

人工知能の進歩によっては、技術的特異点のような事象は発生しないと考える評論家も存在する。また、技術的特異点の概念は認めつつも、その現実化が不可避であるか、あるいは特異「点」と呼べる特定の一時点が存在するかについては、異なる主張をする識者も存在する。

スティーブン・ピンカーは以下のように述べている。

技術的特異点が到達すると信じる理由は、まったく無い。人間の頭の中で未来の姿を想像できたとしても、それが実現する見込が高いこと、あるいはそもそも実現可能であるということの証明にはならない。ドーム型都市、ジェットパックによる通勤、水中都市、超高層建築や核駆動自動車といったもの、これらは全て私が子供だったころ、未来の想像において当たり前に実現されているはずもののだったが、ついに現実にはならなかった。本当に機能するテクノロジーは、人類のあらゆる問題を解決する魔法のランプなどではない。[13]

ロータスデベロップメントの創業者のミッチ・ケイパーは、2029年までにチューリングテストに合格する人工知能が開発されるという予測に反対し、カーツワイルと2万ドルを賭けている[14]

物理的観点からの批判

あらゆる指数関数的成長は永遠に継続することはできない。化学物質の反応、細胞分裂や生物の個体数など、限定された期間内で指数関数的振る舞いを見せる現象は存在するが、遅かれ早かれ、指数関数的現象は必要な資源基盤(化学物質や食物など)を消耗し、停滞・崩壊する。テクノロジーの発展が、一般的な指数関数的現象と異なると考える理由は無い。つまり、指数関数的成長には指数関数的入力が必要となるが、現実の世界においてはそれは不可能である。一般的に成長現象はシグモイド曲線を取り、急激な成長期と停滞期(崩壊期)が存在することが普通である[15]

宗教家であり思想史家であるジョン・マイケル・グリア英語版は、テクノロジーの発展は、未来に向かって一直線に進んでいくものではなく、ツリー状に広がっていくものであると述べている[16]。半世紀前の未来予想においては、自家用飛行機や宇宙旅行といった輸送技術の爆発的発達が予想されていたが、その後、輸送技術の進歩は停滞した。その一方で、21世紀現在の情報技術の爆発的発達と普及は、過去においては一般的には予想されていなかった。同様に、近年の情報処理技術の発達もいずれどこかで限界を迎え、現代の人々が全く予想もできなかった新しい技術が発展すると考えられている。

また、どれほど優れた知性であっても、思考のみでは問題を解決できない[17]。つまり、卓越した人工知能であれ知能強化された人間であれ、実世界の現象を観察・実験し、モデルを検証しなければ、現実世界の問題を解決することはできない。しかし、それには思考の時間ではなく、対象物の物理的変化(細胞分裂や素粒子の反応)に要する時間によって限界が定められるため、超越的知性の存在のみによっては特異点と呼べるような変化は起こらないのではないかという批判がある。

社会経済的観点からの批判

物理学的、技術的に可能だとしても、経済、社会、法律的な要請から、普及していない技術も存在する。たとえば、超音速旅客機は1960年代に実用化されたが、採算が取れなかったため、2016年現在商業飛行は実施されていない。同様に、研究室レベルでは汎用人工知能が実現できたとしても、経済合理性の観点から社会に普及せず、特異点をもたらすために必要な超越的知性の総量が不足する可能性がある。

マーティン・フォードは、「トンネルの中の光:オートメーション、テクノロジーの加速と未来の経済」という書籍において[18] 「テクノロジーのパラドックス」を提示している。曰く、技術的特異点の発生前に、ほとんどのルーチンワークが自動化されるだろう、なぜなら、ルーチンワークの自動化に必要な技術は、技術的特異点そのものよりも簡単であるからだ。ルーチンワークの自動化は莫大な失業を引き起し、消費者の有効需要を引き下げ、その結果として技術に対する投資を低下させるだろう。そうなると、技術的特異点の実現は遠ざかることになる。産業革命期のような大規模な産業構造の転換と新産業による失業者の吸収は未だ起きておらず、慢性的な高失業率が続いており、この傾向は短期的には変わる気配を見せていない[19]

一般的に、技術革新に対する投資の見返りは次第に低下していくことが示されている[20][21]。Theodore Modis と Jonathan Huebner は技術革新の加速が止まっただけではなく、現在減速していると主張した。John Smart は彼らの結論を批判している[2]。また、カーツワイルが理論構築のために過去の出来事を恣意的に選別したという批判もある。

人工知能研究者からの批判

弱いAIに関する研究結果が、強いAI(汎用人工知能)にそのまま適用可能であるか否かについては議論がある。

哲学者のヒューバート・ドレイファス[22]や物理学者のロジャー・ペンローズのように、現行の人工知能研究には根本的な欠陥があり、既存の手法を踏襲することによっては強いAIは実現不可能であると考える学者も存在している[23]

また、認知科学者であるスティーブン・ピンカーは、人工知能やロボットは人工物であるため、生物が進化によって得た本能 --たとえば、闘争本能、繁殖への欲望、支配欲などの本能を持たず、従って人間よりも賢い人工知能が仮に実現したとしても、それが自己複製と自己改善を繰り返して自動的に超越的知性に至ると考えることは誤りであると指摘している。(もちろん、自己複製と自己改善を人工知能にプログラムすることはできるが、人工知能が創造した人工知能にそれが受け継がれる保証はない)

生物学からの批判

カーツワイルは、生物学的な脳機能を理解していないという批判がある。彼は、人間の脳がシミュレーション可能になる時期を人間のゲノムの数から見積っている。しかし、生物のゲノムは半導体のトランジスターと同等と見なすことはできず、脳の構造や成長を無視していると、生物学者のポール・ザカリー・マイヤーズは批判している[24]

肯定論からの批判

特異点が実現されうる、または不可避であると考える人のなかでも、特異点後に発生する事象が人間に対して危険であると考えて、その実現のための活動を批判するものも居る。 多くの特異点論者はナノテクノロジーが人間性に対する最も大きな危険のひとつであると考えている。このため、彼らは人工知能をナノテクノロジーよりも先行させるべきだとする。Foresight Institute などは分子ナノテクノロジーを擁護し、ナノテクノロジーは特異点以前に安全で制御可能となるし、有益な特異点をもたらすのに役立つと主張している。

友好的人工知能の支持者は、特異点が潜在的に極めて危険であることを認め、人間に対して好意的なAIを設計することでそのリスクを排除しようと考えている。アイザック・アシモフロボット工学三原則は、人工知能搭載ロボットが人間を傷つけることを抑止しようという意図によるものである。ただし、アシモフの小説では、この法則の抜け穴を扱うことが多い。

危険性

考えられうる超人間的知性の中には、人類の生存や繁栄と共存できない目的をもつものもあるかもしれないと考えられている。例えば、知性の発達とともに人間にはない感覚、感情、感性が生まれる可能性がある。AI研究者フーゴ・デ・ガリスは、AIが人類を排除しようとし、人類はそれを止めるだけの力を持たないかもしれないと言う。他によく言われる危険性は、分子ナノテクノロジーや遺伝子工学に関するものである。これらの脅威は特異点支持者と批判者の両方にとって重要な問題である。ビル・ジョイWIREDで、その問題をテーマとして Why the future does't need us(何故未来は我々を必要としないのか)を書いた(2000年)。オックスフォード大学の哲学者ニック・ボストロムは人類の生存に対する特異点の脅威についての論文 Existential Risks(存在のリスク)をまとめた(2002年)。ボストロムは、『Superintelligence: Paths, Dangers, Strategies(超知能:道筋、危険、戦略)』の著者でもある。

スティーブン・ホーキング(宇宙物理学)は、人類の能力を超える人工知能が人類を滅ぼしかねない危険性があり、生物学的進化に制約される人類が人工知能の発達に対抗することは困難だと考えており[25][26]国連代表部国際連合地域間犯罪司法研究所が主催した会議でも懸念を表明した[27][28]。この国連の会議では、ニック・ボストロムも、特に人間の能力をはるかに超える人工知能を制御する方法は未解決であり、解決のための研究の必要性を訴えている[29][30]

ホーキングは、2015年5月12日にロンドンで開催されたツァイトガイスト2015でも、人工知能が「100年以内に人間の文明を終わらせる」可能性を指摘した[31]。ホーキングはまた、2014年でも、マックス・テグマーク(物理学)、フランク・ウィルチェック(ノーベル物理学賞)、スチュワート・ラッセルらとともに、人工知能に関する理解が一般に浸透していない問題を指摘した[32][33]

ハーバード・ロー・スクールヒューマン・ライツ・ウォッチは、完全な自律兵器の開発・運用を国際的に禁止するべきだと2015年4月の報告書で要求した[34]

ネオ・ラッダイトの見方

一部の人々は、先端技術の開発を許すことは危険すぎると主張し、そのような発明をやめさせようと主張している。ユナボマーと呼ばれたアメリカの連続爆弾魔セオドア・カジンスキーは、技術によって上流階級が簡単に人類の多くを抹殺できるようになるかもしれないと言う。一方、AIが作られなければ十分な技術革新の後で人類の大部分は家畜同然の状態になるだろうとも主張している。カジンスキーの言葉はビル・ジョイの記事およびレイ・カーツワイルの最近の本に書かれている。カジンスキーは特異点に反対するだけでなくネオ・ラッダイト運動をサポートしている。多くの人々は特異点には反対するが、ラッダイト運動のように現在の技術を排除しようとはしない。

カジンスキーだけでなく、ジョン・ザーザンやデリック・ジェンセンといった反文明理論家の多くはエコアナーキズム主義を唱える。それは、技術的特異点を機械制御のやりたい放題であるとし、工業化された文明以外の野性的で妥協の無い自由な生活の損失であるとする。地球解放戦線(ELF)やEarth First!といった環境問題に注力するグループも基本的には特異点を阻止すべきと考えている。

共産主義者は史的唯物論に立っているため、特異点を基本的に容認し、意識の共有に肯定的でAIロボットの反乱を階級の認識と考えている。[要出典] 一方、特異点によって未来の雇用機会が奪われることを心配する人々がいるが、ラッダイト運動者の恐れは現実とはならず、産業革命以後には職種の成長があった。経済的には特異点後の社会はそれ以前の社会よりも豊かとなる。特異点後の未来では、一人当たりの労働量は減少するが、一人当たりの富は増加する[35]。マクロ経済学の井上は、技術的失業、中産階級の消滅、雇用を機械に奪われる問題の解決策として、ベーシック・インカムを提唱している[35]

キリスト教終末論との関係

技術的特異点の概念は、キリスト教終末論から影響を受けていると言われており、評論家や神学者の中には、技術的特異点の概念を信仰と同一視する者も居る。 WIRED誌創刊者のケヴィン・ケリーは、技術的特異点とキリスト教における携挙との類似性を指摘している[36]。携挙とは、福音派における終末思想であり、世界の終焉においてナザレのイエス(いわゆるキリスト)が再臨する際に、信者は死を経由せず直接に天国へ導かれるという思想である。

科学ジャーナリストのジョン・ホーガン も、技術的特異点を信仰であるとみなしている。

現実を見よう。技術的特異点は、科学的なビジョンというよりは宗教である。SF作家のケン・マクラウドは「コンピューターマニアたちの携挙(the rapture for nerds)」という名前を授けている。つまり、歴史の終末であり、イエスが現れ信仰者を天国へと導き、罪人を後に残していく瞬間である。このような超越的なものを願う理由は、完全に理解可能である。個人としても種としても、我々は致死的に重大な問題に直面している。たとえば、テロ、核拡散、人口過剰、貧困、飢餓、環境破壊、気候変動、資源枯渇やエイズなどである。エンジニアと科学者は、我々がこれらの世界の問題に立ち向かい、解決策を発見することを支援するべきなのであって、技術的特異点のような夢想的、疑似科学的ファンタジーに浸るべきではない。[37]

ジョン・マイケル・グリアも同様の見方をしている。

…技術的特異点の概念全体は、関連する科学分野の専門家から激しく、そして正しく批判されている。けれども、あまり言及されることは無いが、カーツワイルの技術的特異点の物語は科学理論などではない。むしろそれは、ジョン・ダービによる携挙の神学理論を、SFの言葉で書き直した複製である。 技術的特異点は、単にキリストの再臨をテクノロジー的にリメイクしたものに過ぎない。超知性的コンピューターが神の役割を担っているのである。[38]

思想史研究者であるアニー・レイヴィも同様の批判を加えている。

もちろん我々は我々自身の能力を超えた技術を作ってきた。それゆえ、我々は我々の能力を超えた知能を作ることができるだろうし、一部は既に実現されているとさえ言えるだろう。けれども、ひとたび我々の知性を超えた人工知能が実現しさえすれば、ただちに超越者が生み出され、あらゆる問題の最終的解決がもたらされると信じるためは、相当な論理的飛躍を受け入れなければならない。 その表層的なテクノロジー的装いを剥ぎ取ってみれば、中にあるのは古くからある終末論そのものである。すなわち、我々の生きている間に、何らかの超越者が地上に降臨し、全ての現世的問題からの解放と永遠の命をもたらすという信条なのだ。…このような新たな終末論が、近年の経済危機以後、急速に蔓延したのは決して偶然ではない。すなわち、現代の解決不可能な諸問題から眼を背けさせ、来世において救済を授けるという現実逃避としての役割を担っていると言える。

フィクションでの描写

フィクションでの特異点の描写は4つに分類される。

  • AIと技術的に増幅された人類(ただし、AIよりも劣っていることが多い):『HALO
  • AIと元のままの人類(「ローカルな特異点」と呼ばれることがある):『マトリックス』、『ターミネーター』のスカイネット
  • 生物学的に進化した人類
  • 技術的に増幅された人類

特異点アイデアを開拓したヴァーナー・ヴィンジの物語に加えて、何人かの他のSF作家は主題が特異点に関係する話を書いている。特筆すべき著者として、ウィリアム・ギブスングレッグ・イーガングレッグ・ベアブルース・スターリングなどが挙げられる。特異点はサイバーパンク小説のテーマのひとつである。再帰的な自己改良を行うAIとしてはウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』に登場する同名のAIが有名である。アーサー・C・クラークの『幼年期の終り』、アイザック・アシモフの『最後の質問』(短編)、ジョン・W・キャンベルの『最終進化』(短編)なども古典ともいうべき作品ながら技術的特異点を扱っていると言える。ディストピア色が強いものとしては、ハーラン・エリスンの古典的短編『おれには口がない、それでもおれは叫ぶ』がある。日本の作品では、『火の鳥』において政治の一切を電子頭脳が管理する世界が描かれている。『攻殻機動隊』では、ウェットウェアが遍在し人工意識が発生しはじめた世界を描いており、山本弘による『サイバーナイト』のノヴェライズには、人類によって作られた人工知能MICAが、バーサーカーと呼ばれる機械生命体(フレッド・セイバーヘーゲンバーサーカーシリーズに由来)を取り込み特異点 (作中では「ブレイクスルー」と表現) を越える、というくだりがある。また、山口優による『シンギュラリティ・コンクェスト 女神の誓約』(第11回日本SF新人賞受賞作)は、技術的特異点の克服をテーマにしている。芥川賞作家である円城塔の「Self-Reference ENGINE」はAIが再帰的に進歩を続けた結果大きく変質した後の世界(特異点後の世界)を描いている。長谷敏司の『BEATLESS』では、社会の様々な営みが人工知能群によって自動化され、文明における人間の立ち位置が変化しつつある世界が描かれている。

技術的特異点を扱った初めての短編は、フレドリック・ブラウンが1954年に書いた『回答』であろう。[要出典]

また近年の潮流としては、ケン・マクラウドらイギリスの新世代作家たちが、「ニュー・スペースオペラ」と呼ばれる「特異点に到着した人類社会」を舞台とした作品群を執筆している。

映画とテレビ

人類よりも賢いAIが登場する映画の最も早い例として『地球爆破作戦』(Colossus: The Forbin Project)がある。1969年の映画であり、米軍のスーパーコンピュータが意識を持つようになって人類に平和を押し付けるという話である。『マトリックス』では、AIが人類を支配し鎮圧した世界が描かれている。『ターミネーター』では、スカイネットと呼ばれるAIが意識を持ち、人類を根絶するために核兵器を使用する。

アニメにもヴィンジとカーツワイルによって提案された特異点関連のテーマがある。『serial experiments lain』では、意識のダウンロードというトピックが扱われている。『バブルガムクライシス TOKYO2040』では、AIが現実を変更する強力な能力を持って出現する。『ゼーガペイン』では特異点後に人類が滅亡した後の世界を舞台としている。

2014年公開の映画『トランセンデンス』はまさに「技術的特異点」という意味の英語表現である。この映画では技術的特異点から先に技術の発展を進めさせないために、人類は全世界の電気エネルギーをシャットダウンする。

脚注

出典

  1. ^ 人工知能の研究開発をどう進めるか 技術的特異点(シンギュラリティ)を見据えて(東京大学大学院工学系研究科 堀 浩一)
  2. ^ 人類とICTの未来:シンギュラリティまで30年?:2.シンギュラリティと人工知能の将来(公立はこだて未来大学 松原 仁)
  3. ^ シンギュラリティは近いー人類が生命を超越するとき(レイ・カーツワイル)参考文献と同内容の電子書籍版であるがタイトルは原題に近い訳に変更されている。
  4. ^ 汎用人工知能が技術的特異点を巻き起こす(電子情報通信学芸誌) 山川 宏 市瀬 龍太郎 井上 智洋 Vol.98 No.3pp.238-243 発行日:2015/03/01 Online ISSN 2188-2355 Print ISSN 0913-5693 種別:オピニオン 専門分野: キーワード:
  5. ^ Thornton, Richard (1847), The Expounder of Primitive Christianity, 4, Ann Arbor, Michigan, p. 281, http://books.google.com/?id=ZM_hAAAAMAAJ&dq=%22Primitive%20Expounder%22%20thornton%201847&pg=PA281#v=onepage&q=thinking%20machine&f=false 
  6. ^ A M Turing, Intelligent Machinery, A Heretical Theory, 1951, reprinted Philosophia Mathematica (1996) 4(3): 256-260 doi:10.1093/philmat/4.3.256 [1]
  7. ^ Ulam, S., Tribute to John von Neumann, Bulletin of the American Mathematical Society, vol 64, nr 3, part 2, May, 1958, p1-49.
  8. ^ https://www-rohan.sdsu.edu/faculty/vinge/misc/singularity.html
  9. ^ リストはカール・セーガン、ポール・D・ボイヤー、ブリタニカ百科事典、アメリカ自然史博物館、アリゾナ大学他。レイ・カーツワイル編集。
  10. ^ カーツワイル p.151
  11. ^ 2045年問題 松田卓也 (著)
  12. ^ http://memo7.sblo.jp/article/16576836.html
  13. ^ Tech Luminaries Address Singularity – IEEE Spectrum”. Spectrum.ieee.org. 2011年9月9日閲覧。
  14. ^ http://longbets.org/1/
  15. ^ 武田修三郎 (2011). 崩壊するエネルギー文明:再点検. 宣伝会議. p. 21-29. ISBN 978-4-88335-255-5 
  16. ^ John Michael Greer, John (2015). After Progress: Reason and Religion at the End of the Industrial Age. New Society Publishers. p. 128-130 
  17. ^ http://memo7.sblo.jp/article/20584487.html
  18. ^ Ford, Martin, The Lights in the Tunnel: Automation, Accelerating Technology and the Economy of the Future, Acculant Publishing, 2009, ISBN 978-1-4486-5981-4
  19. ^ Markoff, John (2011年3月4日). “Armies of Expensive Lawyers, Replaced by Cheaper Software”. The New York Times. http://www.nytimes.com/2011/03/05/science/05legal.html 
  20. ^ Joseph.A.Tainterの『崩壊』に関する考察”. 2016年4月10日閲覧。
  21. ^ Tainter, Joseph (1988) "The Collapse of Complex Societies" (Cambridge University Press)
  22. ^ 『純粋人工知能批判--コンピュータは思考を獲得できるか』
  23. ^ Clocksin, William (Aug 2003), “Artificial intelligence and the future”, Philosophical Transactions of the Royal Society A 361 (1809): 1721–1748, doi:10.1098/rsta.2003.1232, PMID 12952683. 
  24. ^ http://scienceblogs.com/pharyngula/2010/08/17/ray-kurzweil-does-not-understa/
  25. ^ 2014年12月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙
  26. ^ http://www.nikkei.com/article/DGXMZO80435640T01C14A2000000/ 日本経済新聞
  27. ^ http://gizmodo.com/experts-warn-un-panel-about-the-dangers-of-artificial-s-1736932856
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  29. ^ http://gizmodo.com/experts-warn-un-panel-about-the-dangers-of-artificial-s-1736932856
  30. ^ https://www.youtube.com/watch?v=W9N_Fsbngh8
  31. ^ http://www.techtimes.com/articles/53180/20150514/robots-will-overtake-human-intelligence-within-100-years-warns-stephen-hawking.htm TECH TIMES
  32. ^ http://www.huffingtonpost.com/stephen-hawking/artificial-intelligence_b_5174265.html Transcending Complacency on Superintelligent Machines(ハフィントンポスト)
  33. ^ http://gizmodo.com/experts-warn-un-panel-about-the-dangers-of-artificial-s-1736932856
  34. ^ http://www.techtimes.com/articles/53180/20150514/robots-will-overtake-human-intelligence-within-100-years-warns-stephen-hawking.htm TECH TIMES
  35. ^ a b http://synodos.jp/economy/11503 機械が人間の知性を超える日をどのように迎えるべきか?――AIとBI 井上 智洋/早稲田大学政治経済学部助教
  36. ^ http://memo7.sblo.jp/article/34660929.html
  37. ^ Horgan, John (2008). The Consciousness Conundrum. http://spectrum.ieee.org/biomedical/imaging/the-consciousness-conundrum/0 2008年12月17日閲覧。. 
  38. ^ John Michael Greer, John (2012). Apocalypse. quercusbooks. p. 171-3,179. ISBN 978-1-78087-040-3 

注釈

  1. ^ カーツワイルが想定する2045年の技術的特異点を「コンピューターの知性が人間を超えること」とする報道が一部メディアで見られるが、カーツワイルはコンピューターの知性が人間を超える時期を2020年代と予想しており、誤解である。「人間の知能を模倣するために必要なハードウェアが、スーパーコンピューターでは10年以内に、パーソナル・コンピュータ程度のサイズの装置ではその次の10年以内に得られる。2020年代半ばまでに、人間の知能をモデル化した有効なソフトウェアが開発される。」「ハードとソフトの両方が人間の知能を完全に模倣できるようになれば、2020年代の終わりまでには、コンピューターがチューリングテストに合格できるようになり、コンピュータの知能が生物としての人間の知能と区別がつかなくなるまでになる。」(ポスト・ヒューマン誕生 P.40、レイ・カーツワイル著、2005年)。カーツワイルが想定する2045年の世界のシナリオは端的に言えば「1000ドルのコンピューターの演算能力がおよそ10ペタFLOPSの人間の脳の100億倍にもなり、技術的特異点に至る知能の土台が十分に生まれているだろう」というもので、コンピューター1台が人間一人あるいは人類全体の知能(100億人分の知能)を超えた瞬間に激変が起きることを意味していない。

参考文献

  • レイ・カーツワイル(著) 井上健(監訳) 『ポスト・ヒューマン誕生-コンピュータが人類の知性を超えるとき』 NHK出版 ISBN 978-4-14-081167-2"The Singularity is Near:When Humans Transcend Biology"(ISBN 978-0143037880)の邦訳。英語の原題 『(技術的)特異点は近い:人類が生物学(的制約)を超える時』が示すように、この本の中心テーマになっているのは技術的特異点。分厚い本だが、技術的特異点がどういうものなのか、について科学的・技術的そして哲学的な観点まで含めた詳細な解説が書かれている。引用文献の数も多く一冊でかなりの情報量を持つ。)
  • ヴァーナー・ヴィンジ(著), 向井淳訳, 『〈特異点〉とは何か?』, SFマガジン2005年12月号 pp.60〜72, (原文は https://www-rohan.sdsu.edu/faculty/vinge/misc/singularity.html

関連項目

関連団体

外部リンク

いずれも英文