「岩石」の版間の差分
編集の要約なし |
|||
1行目: | 1行目: | ||
{{Redirect|岩}} |
{{Redirect|岩}} |
||
'''岩石'''(がんせき、rock)は、[[石ころ]]や[[岩盤]]を学術的に表現した堅い表現の用語である。一般的にはその大きさに範囲はないと思われがちだが、学術的にはあまりにも小さいものを[[砂]]や[[泥]]、大きいものを[[剛盤]]や[[プレート]]と言いい、区別することが普通である。その成因は、岩石が溶けた液体である[[マグマ]]([[岩しょう]]ともいう)が冷えたり、[[砂]]や[[泥]]が[[続成作用]]と呼ばれ、地下で[[固結]]作用をうけて岩石に戻ったり、あるいは誕生した岩石が[[変成作用]]とよばれる[[熱]]、[[圧力]]、[[溶液]、[[気体]]との[[化学反応]]や[[物理現象]]を受け溶けてマグマにならないまでも、一部[[変成]]という現象を受け、性質が変化し、二次的に岩石が誕生することもある。多くの[[地球型惑星]]は岩石で出来ている。どこからどこまでを[[岩石]]と呼び、[[金属]]と呼ぶのかは難しい問題である。[[ガラス]]、[[金属]]等と漸移的ともいえる。 |
|||
'''岩石'''(がんせき)は、[[マグマ]]が冷えたり、[[堆積物]]が[[続成作用]]を受けて固結したり、あるいは既存の岩石が[[変成作用]]を受けたもので、[[地殻]]と[[マントル]]を構成する主要な[[物質]]の存在様式である。我々が目にすることができる岩石は、地殻のごく表面にあるもので、岩石は地殻の一部あるいは破片ということもできる。 |
|||
一般には「[[石]]」、「岩」とほぼ同義に使われ、石は小さな岩石片であり、岩は大きな岩石塊のことを指す。また、石や岩よりも学術的な表現をしたいときは主に「岩石」が用いられる事が多い。 |
|||
== 岩石と鉱物の関係 == |
== 岩石と鉱物の関係 == |
||
岩石と[[鉱物]]はよく「石」としてひとまとめに扱われるが、別物である。鉱物は[[結晶構造]]を持ち、[[化学式]]で表すことができる。これに対して岩石は、鉱物や岩石の破片、[[ガラス]](結晶でないもの)、[[化石]]、生物由来の[[有機物]]などの集合体([[混合物]])である。学術的には、岩石は「〜岩」、鉱物は「〜石」「〜鉱」という名前をつけて区別するが、 |
岩石と[[鉱物]]はよく「石」としてひとまとめに扱われるが、別物である。鉱物は[[結晶構造]]を持ち、[[化学式]]で表すことができる。これに対して岩石は、鉱物や岩石の破片、[[ガラス]](結晶でないもの)、[[化石]]、生物由来の[[有機物]]などの集合体([[混合物]])である。学術的には、岩石は「〜岩」、鉱物は「〜石」「〜鉱」という名前をつけて区別するが、[[大理石]]・[[黒曜石]]など多くの例外もある。 |
||
⚫ | |||
⚫ | |||
== 岩石の種類 == |
== 岩石の種類 == |
||
62行目: | 60行目: | ||
{{Wiktionary}} |
{{Wiktionary}} |
||
{{Commonscat|Rocks}} |
{{Commonscat|Rocks}} |
||
* [[岩石 |
* [[岩石]] |
||
* [[鉱物]] |
* [[鉱物]] |
||
* [[鉱石]] |
* [[鉱石]] |
||
69行目: | 67行目: | ||
== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
||
* [[ |
* [[坪井誠太郎]] 『岩石学Ⅰ』 ([[岩波全書]] 91、1950年) |
||
* [[都城秋穂]]、[[久城育夫]] 『岩石学II - 岩石の性質と分類』 (共立全書、1975年)、ISBN 4-320-00205-9。 |
|||
* 都城秋穂、久城育夫 『岩石学III - 岩石の成因』 (共立全書、1977年)、ISBN 4-320-00214-8。 |
|||
* [[黒田吉益]]、[[諏訪兼位]] 『偏光顕微鏡と岩石鉱物 第2版』 (共立出版、1983年)、ISBN 4-320-04578-5。 |
|||
* [[周藤賢治]]、[[小山内康人]] 『岩石学概論 上 記載岩石学』 (共立出版、2002年)、ISBN 4-320-04639-0。 |
|||
* 周藤賢治、小山内康人 『岩石学概論 下 解析岩石学』 (共立出版、2002年)、ISBN 4-320-04640-4。 |
|||
== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
2016年1月28日 (木) 10:52時点における版
岩石(がんせき、rock)は、石ころや岩盤を学術的に表現した堅い表現の用語である。一般的にはその大きさに範囲はないと思われがちだが、学術的にはあまりにも小さいものを砂や泥、大きいものを剛盤やプレートと言いい、区別することが普通である。その成因は、岩石が溶けた液体であるマグマ(岩しょうともいう)が冷えたり、砂や泥が続成作用と呼ばれ、地下で固結作用をうけて岩石に戻ったり、あるいは誕生した岩石が変成作用とよばれる熱、圧力、[[溶液]、気体との化学反応や物理現象を受け溶けてマグマにならないまでも、一部変成という現象を受け、性質が変化し、二次的に岩石が誕生することもある。多くの地球型惑星は岩石で出来ている。どこからどこまでを岩石と呼び、金属と呼ぶのかは難しい問題である。ガラス、金属等と漸移的ともいえる。
岩石と鉱物の関係
岩石と鉱物はよく「石」としてひとまとめに扱われるが、別物である。鉱物は結晶構造を持ち、化学式で表すことができる。これに対して岩石は、鉱物や岩石の破片、ガラス(結晶でないもの)、化石、生物由来の有機物などの集合体(混合物)である。学術的には、岩石は「〜岩」、鉱物は「〜石」「〜鉱」という名前をつけて区別するが、大理石・黒曜石など多くの例外もある。 また、資源としての観点で見るとき鉱石ということもある。
岩石の種類
岩石は、その成因により以下の3種類に大別できる。
- 火成岩
- マグマが冷え固まったり、火山活動で他の岩石などと混ざって固まったもの。でき方により、地表に噴出した溶岩などからできたものを火山岩、地底の奥深くでマグマがゆっくり冷やされできたものを深成岩と呼ぶ。火山岩は地表で急速に冷やされるため結晶が十分に発達せず、石基と呼ばれる微細な結晶の集合部分と、斑晶と呼ばれるやや大きな結晶からなる。一方深成岩は地下で長い時間をかけて冷やされるため、充分に成長し似通った大きさの結晶が集まってできている。火山岩は玄武岩・安山岩・流紋岩、深成岩は橄欖岩や花崗岩などが代表的なものである。
- 堆積岩
- 火成岩が風化して水底や陸上に堆積したものが続成作用によって固結したもの。火山噴出物が堆積した砕せつ岩、生物の遺体が堆積した生物岩、水中において溶解していた化学物質の作用により凝結した化学岩の3種がある。砕せつ岩は凝固したものの種類によって、礫が凝固した礫岩、砂が凝固した砂岩、粘土の凝固した泥岩などに分けられる。火山灰の凝固したものは凝灰岩と呼ぶ。石灰岩は、サンゴやフズリナなどの生物の死骸から形成された生物岩的なものと、水中に溶解していた炭酸カルシウムが沈殿した化学岩的なものの両方の生成方法がある。
- 変成岩
- いったんできた岩石が熱や圧力といった変成作用をうけて構成鉱物や内部構造が変化したもの。火山の火道などで直接マグマに接触し変化した接触変成岩、マグマからやや離れたところで変化したり、プレートテクトニクスによってプレートが潜り込む地点付近で圧力によって変化した広域変成岩、断層など地表近くの急激・大規模な地殻変動によって熱なしの圧力のみで変化した動力変成岩の3種が存在する。
この他に、岩石が熱水などにより変質作用を受けて出来た変質岩もある。
以上の岩石はさらに詳しい成因、あるいは化学組成や構造などにより、より詳細に分類される。しかし、生物や鉱物と違って、岩石の特徴は連続的に変化しているため、分類の境界は人為的なものである。しかも、分類の定義はいくつもあり、どの定義を採用するかによって、同じ岩石に別の名前がつけられることは珍しいことではない。国際地質科学連合(IUGS)による命名案がまとめられているが、完全には定着していない。
岩石の循環と相関
岩石は基本的にはまず、マグマが冷え固まって結晶化することで生まれる。地上で急速に冷え固まったものが火山岩、地下深くでゆっくりと冷え固まったものが深成岩であるが、いずれにせよ岩石の起源の大本は火成岩である。こうしてできた既存の岩石はやがて地表で浸食、風化して水や風の影響によって堆積し、堆積物となる。こうした堆積物が圧力を受けたり炭酸カルシウムなどの物質の影響によって化学的に変化し、再び固まったものが堆積岩である。こうしてできた火成岩や堆積岩が、熱や圧力などといった変成作用を受けて変質したものが変成岩である。なお、より強い高熱にさらされ、完全に溶融した場合、冷えれば火成岩となる。このように、長い時間の間に岩石やそれを構成する物質は互いに移り変わると考えられる。
地球以外の岩石
岩石は地球を構成する主要な物質のうちのひとつである。地球上に存在する岩石は、鉄やニッケルなどに比べ比重が軽いため、上部マントルや地殻などに偏在し、この二層の主要構成物となっている。岩石の中でもより密度の高い橄欖石や輝石は他の岩石より深くへと沈み込むことが多く、上部マントルはこうした岩石が主となって構成されている。これに対し、地殻はより比重の軽い岩石が主となっている。なかでも海洋底は玄武岩や斑糲岩の比率が高く、大陸は岩石でも最も比重の軽い花崗岩や石英・長石などの比重が高い。また、マグマが形成されるのは主に上部マントルであり、地表へと上昇する過程で上部マントルにある橄欖岩などを取り込んで昇ってくることがある。こうして取り込まれ地上へと噴出した岩石は捕獲岩(ゼノリス)と呼ばれ、地底深くの状況を知る貴重な資料となっている。地殻の岩石の大部分は火成岩と変成岩からなっているが、地表部分においては8割から9割を堆積岩が占めている[1]。これは堆積作用が地表近くで起きているため、堆積岩が地表付近に浅く広く分布しているためである。
岩石を主要構成物とする惑星は地球だけではなく、水星・金星・火星といった太陽系内側の諸惑星はすべて岩石を主体とする惑星である。このため、膨大なガスを特徴とする木星型惑星と対比し、岩石主体の惑星は地球型惑星と総称される。なお岩石は地球型惑星付近のみならず、太陽系全体にあまねく分布する。木星型惑星も中心核には多量の岩石が含まれている。月や小惑星は主に岩石からなっており、太陽系外縁天体なども氷と岩石からできていると考えられる。
最古の岩石
地球最古の岩石は、カナダ北西部で発見された40億3000万年前のものが最古とみられてきたが、同じカナダの東部で2億5000万年さかのぼる42億8000万年前ものが発見された。地球が誕生したのは約46億年前とされるが、発見された岩石は冷えて形成されたばかりの地殻の可能性があり、地殻が形成された時期に関する学説にも影響する発見とされる[2][3][4][5]。
日本列島最古の岩石は岐阜県の飛騨山脈にある地質時代でいうとオルドビス紀(4.9億 - 4.4億年前)の地層のものとされてきたが、カンブリア紀(5.4億 - 4.9億年前)という一つ前の時代に属する約5億610万年前に形成された火成岩「日立変成岩」が茨城県日立市北部の山地で発見された[6]。
岩石の利用
鉱石だけでなく、岩石そのものも資源としてよく利用される有用なものである。
建材
最も岩石の資源利用として多いものは建材、いわゆる石材としての利用であり、御影石などに代表される花崗岩、大谷石に代表される凝灰岩、大理石に代表される石灰岩など多くの種類が使用される。岩石は木材と並び建築材料としては最も古いものの一つであり、エジプトのピラミッドやイングランドのストーンヘンジ、アテネのパルテノン神殿、イースター島のモアイ、マヤやアステカの遺跡群、ペルーのマチュピチュなど、石材のみで建設された巨大遺跡は枚挙にいとまがない。石を加工する石工は非常に古い職業であり、世界中に存在した。日本においても各地に高い技能を持った石工の集団が存在していた。
粘板岩(スレート)は屋根を葺く材料として広く使用されていた。建物本体だけでなく、巨岩などを庭に置く庭石は日本庭園においてはなくてはならないものであり、また建物の基礎となる石垣も石材利用としては一般的なものである。このほか、墓石や硯などなど多くの美術・工芸品の原料ともなっている。そのまま使用するだけでなく、石を砕いた砕石も重要な建築材料である。
道具
人類の最初期の道具も石から作られたものであり、青銅器が発明されるまでの間は石器こそが人類の使用できるもっとも堅い道具だった。石は世界中にあまねく分布しているうえ加工にも手間がかからないため、世界中のすべての文明は石器時代には到達していた。新大陸のアステカ・マヤ・インカといった諸文明は青銅器を発明していないか工芸品としての利用にとどまっていたため、16世紀にスペインと接触するまで石器が文明の中心となっていた。
武器
武器としては単なる石はきわめて広範に利用される。石器には矢尻や石斧などの例がある。現在でも特別な武器を持たぬものにとって投石はきわめてよく利用される攻撃方法である。単に手で投げるだけでなく、より効果的に投げるための装置が投石機である。
調理用具
調理のために岩石が使われる例もある。石焼き芋のように加熱した岩石を熱源に調理する例は数多い。
脚注
- ^ 「カラー版徹底図解 鉱物・宝石のしくみ」p28 新星出版社 2009年1月15日発行
- ^ Jonathan O'Neil, Richard W. Carlson, Don Francis, Ross K. Stevenson “Neodymium-142 Evidence for Hadean Mafic Crust”サイエンス 26 September 2008:Vol. 321. no. 5897, pp. 1828 - 1831
- ^ ナショナルジオグラフィック日本語『地球最古の地殻を発見か』2008年9月25日
- ^ 共同通信『世界最古、42億年前の岩石発見 カナダ東部』2008年9月25日
- ^ 毎日新聞『岩石:43億年前の岩石、カナダで発見 地球初期の地殻か--世界最古』2008年9月25日
- ^ 毎日新聞『日立変成岩:日本最古…カンブリア紀の地層 茨城・日立』2008年9月17日
関連項目
参考文献
- 坪井誠太郎 『岩石学Ⅰ』 (岩波全書 91、1950年)
- 都城秋穂、久城育夫 『岩石学II - 岩石の性質と分類』 (共立全書、1975年)、ISBN 4-320-00205-9。
- 都城秋穂、久城育夫 『岩石学III - 岩石の成因』 (共立全書、1977年)、ISBN 4-320-00214-8。
- 黒田吉益、諏訪兼位 『偏光顕微鏡と岩石鉱物 第2版』 (共立出版、1983年)、ISBN 4-320-04578-5。
- 周藤賢治、小山内康人 『岩石学概論 上 記載岩石学』 (共立出版、2002年)、ISBN 4-320-04639-0。
- 周藤賢治、小山内康人 『岩石学概論 下 解析岩石学』 (共立出版、2002年)、ISBN 4-320-04640-4。
外部リンク
- Composition of rocks - Encyclopedia of Earth「Encyclopedia of Earthにある「岩石の組成」についての項目」の項目。
- 岩石の種類 - 海洋研究開発機構
- 岩石の分類・岩石や地層のでき方 - - 産業技術総合研究所