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2024年10月7日 (月) 03:26時点における版
きみの色 | |
---|---|
監督 | 山田尚子 |
脚本 | 吉田玲子 |
製作 | STORY inc. |
音楽 | 牛尾憲輔 |
主題歌 |
Mr.Children 「in the pocket 〜Mr.Childrenのバンドでボン!〜」 |
制作会社 | サイエンスSARU |
製作会社 | 「きみの色」製作委員会 |
配給 | 東宝 |
公開 | 2024年8月30日[1] |
上映時間 | 100分 |
製作国 | 日本 |
『きみの色』(きみのいろ)は、サイエンスSARU制作による2024年の日本のアニメーション映画。吉田玲子脚本によるオリジナル作品である。監督は山田尚子で、企画および共同プロデュースはSTORY inc.。
2024年6月、中国で開催された第26回上海国際映画祭に出展。金爵賞 最優秀アニメーション作品賞を受賞している[2]。
ストーリー
海に面した街のキリスト教系女子高校3年に在学する日暮トツ子は、会う人固有の「色」が見えるという特殊な感覚を持っていた。寄宿舎で生活するトツ子はほかの生徒からは少し浮いた存在だったが、「きれいな色」を感じた同学年の作永きみには密かに憧れを抱く。しかしきみは突然学校に姿を見せなくなり、退学したらしいと生徒の間では話題にされていた。「本屋で働いているのを見た」という噂をもとに、トツ子は市内の本屋を探し回る。そしてついにある古書店できみに再会する。ちょうどそのとき店を訪れていた男子高校生の影平ルイが、きみに対してトツ子とバンドを組んでいると誤解して話しかけた。トツ子は「自分たちのバンドのメンバーを募集している」とその場で持ちかけ、2人から賛同を得た。
街から離れた島に住むルイをトツ子ときみは訪ねる。ルイは音楽の練習に使っている廃教会に案内して3人は意気投合した。以後、日曜日に3人は廃教会で練習し、ルイの提案でオリジナル曲を作ることになる。トツ子は、きみに憧れる思いを太陽系の太陽と惑星にたとえた歌を着想する。一方きみとルイにはそれぞれ抱えた悩みがあった。きみは退学したことを世話をしてくれている祖母に隠しており、ルイは離島の診療所で医師を務める母の後を継ぐことを求められて音楽活動を公にしていなかった。トツ子は修学旅行を仮病で欠席し、「修学旅行中」という建前で行く場所に困っていたきみを寄宿舎の自室に招き入れる。しかし、学校関係者に発覚してしまい、トツ子ときみは1か月間の奉仕活動と反省文の提出を課せられ、ルイのもとに行けなかった。学校に勤めるシスターの日吉子は偶然きみの古書店に立ち寄り、反省文を歌にすることを提案するとともに、学校の聖バレンタイン祭にトツ子とバンドで出ることを勧めた。
クリスマスにトツ子ときみは島に渡る。だが天候が悪化して船が欠航となり、ルイの世話で廃教会に泊まることになった。トツ子が電話をかけてきた日吉子に事情を説明すると、日吉子は自分が何とかするから「合宿」していなさいと返答した。その晩はルイも廃教会に泊まり込み、3人は心に抱えていたプライベートを話し合った。その後、きみは祖母に、ルイは母に、それぞれ事情を打ち明けた。迎えた聖バレンタイン祭で3人は各人が作った曲を演奏する。
登場人物
主要人物
- 日暮トツ子(ひぐらし トツこ)[注釈 1]
- 声 - 鈴川紗由
- 本作の主人公。ミッション・スクールに通う女子高校生。共感覚の持ち主で、人のパーソナリティを「色」で見ることができる。幼少期はバレエを習っていたが、十分に上達できないと考えてやめた。当時バレエ教室で踊りを見たジゼルに愛着を持っている。寄宿生。学校の礼拝堂に一人でよく赴き、その折にニーバーの祈りを唱える場面が何度かある[4][注釈 2]。ピアノの経験が少しあり、バンドではキーボード[注釈 3]とコーラスを担当。船やバスなどの乗り物酔いには弱く、修学旅行で日光のいろは坂をバスで通る行程に不安を覚えたことも欠席する一因となった。
- 作永きみ(さくなが きみ)
- 声 - 髙石あかり
- トツ子と同学年。学校の聖歌隊のメンバーで他の生徒からも慕われる存在だったが、突然退学して古書店で働く傍らギターの練習をしていた。祖母と二人暮らしで通学生(ほかに就職で家を離れた兄がおりギターはお下がり[注釈 4])。学校OGでもある祖母からは大切にされ誇りにも思われていたが、そのために退学を口にできなかった。働いていた古書店の名前「しろねこ堂」は、3人のバンド名となった。バンドではギターとボーカルを担当。
- 影平ルイ(かげひら ルイ)
- 声 - 木戸大聖
- 離島に住む高校3年生の男子。眼鏡をかけている。母は島の診療所の医師で、その後を継ぐことを考えている[注釈 5]。市街地に行く際に中古の楽器を物色していた[注釈 6]。そこで入手したミニキーボードをトツ子の作曲用に貸している[注釈 7]。トツ子と会う前からきみの古書店に立ち寄っており、ギターを練習するきみをバンドのメンバーだと勘違いしていた[注釈 8]。テルミンの演奏ができる[注釈 9]。バンドではほかにオルガンも担当する。
- シスター日吉子(シスターひよこ)
- 声 - 新垣結衣
- 学校の礼拝堂を頻繁に訪れるトツ子とよく会話しており、トツ子のバンド活動もそこで知った。学校のOG。
周辺人物
- 百道さく(ももち さく)
- 声 - やす子[10]
- トツ子のルームメイト。おおらかで食いしん坊。設定では吹奏楽部に所属している[11]。
- 七窪しほ(ななくぼ しほ)
- 声 - 悠木碧[10]
- トツ子のルームメイト。何でも信じる性格。設定ではバドミントン部に所属している[11]。
- 八鹿スミカ(やつしか スミカ)
- 声 - 寿美菜子[10]
- トツ子のルームメイト。慎重な性格で人の変化に機敏なギャル。設定ではダンス部に所属している[11]。
- クリスマスにトツ子が島から帰れなくなったときには彼女のスマホにSNSで異変を伝え、それを見たシスター日吉子が折り返しでトツ子宛に電話をかけさせた。
- 作永紫乃(さくなが しの)
- 声 - 戸田恵子[10]
- きみの祖母。市街地のそば屋でパートタイマーとして働いている。小説版の設定では、トツ子やきみが通う学校の校長とは、高校時代に先輩後輩の関係だった[12]。
- ルイの母
- 声 - 井上喜久子[13]
- トツ子の母
- 声 - 佐々木優子[13]
- 校長先生
- 声 - 木村有里[13]
- シスター樹里(シスターじゅり)
- 声 - 一龍斎貞友[13]
※このほか、山田尚子の方針によりクラスメイトと隣のクラスの生徒、聖歌隊のメンバーなど顔が映る生徒・教師に関しては全員のデザイン、名前、ニックネームなどの基礎設定が決められている[14]。
スタッフ
- 監督 - 山田尚子
- 脚本 - 吉田玲子
- 音楽・音楽監督 - 牛尾憲輔
- キャラクターデザイン・作画監督 - 小島崇史
- キャラクターデザイン原案 - ダイスケリチャード
- 美術総括 - 島田碧
- 美術監督 - 室岡侑奈
- 色彩設計 - 小針裕子
- 撮影監督 - 富田喜允
- 編集 - 廣瀬清志
- 音響監督 - 木村絵理子
- 音響効果 - 倉橋裕宗
- 製作 - チェ・ウニョン、古澤佳寛
- 企画・プロデュース - 川村元気
- プロデューサー - 岡村和佳菜、崎田康平
- 製作 -「きみの色」製作委員会(サイエンスSARU、STORY inc.、東宝、ローソングループ、ジェイアール東日本企画)
- 企画・プロデュース - STORY inc.
- 制作・プロデュース - サイエンスSARU
- 配給 - 東宝
音楽
主題歌
劇中使用曲
※ボーカル曲のみ
- 「反省文 ―善きもの美しきもの真実なるもの―」
- 「あるく」
- 「水金地火木土天アーメン」
- いずれも作詞は山田尚子、作曲と編曲は牛尾憲輔。以上3曲はトツ子・きみ・ルイのバンド「しろねこ堂」の持ち歌として登場したもので、歌唱は「反省文 ―善きもの美しきもの真実なるもの―」「あるく」がきみ役の髙石あかり、「水金地火木土天アーメン」がきみ役の髙石あかりとコーラスでトツ子役の鈴川紗由による。
- 劇中では3人が1人それぞれ1曲ずつ主体となって曲を作り上げたという設定になっている。歌詞は「反省文 ―善きもの美しきもの真実なるもの―」がきみ、「あるく」がルイ、「水金地火木土天アーメン」がトツ子による。
- このうち「水金地火木土天アーメン」に関してはメインキャラクター3人が踊るアニメーションや、3人を演じたキャスト3名が実際に踊ってみた動画がYouTubeの東宝MOVIEチャンネルのコンテンツとして公開されている。
- 「水金地火木土天アーメン」の振り付けはパワーパフボーイズが担当している[16]。
製作
2022年12月3日に制作と公開時期などが発表された[17]。脚本・吉田玲子と監督・山田尚子、音楽・牛尾憲輔の3人は、2016年の『映画 聲の形』、2018年の『リズと青い鳥』などと同じであり、制作・サイエンスSARUとのチームは2021年の『平家物語』と共通している[18]。吉田は、山田から「こういうことやりたい」「こういう子たちを描きたい」というメモをもらい、そこから脚本を執筆した。色が見える女の子という設定は山田のアイディアという[19]。
製作に際して監督の山田は、主人公がキリスト教系の学校に在籍する設定から長崎県を舞台のモデルに着想し、県内でロケハンを実施した[20]。佐世保市の黒島天主堂や旧海軍佐世保鎮守府凱旋記念館が建物のモデルとして使用されているほか[21]、ルイが音楽の練習に使用している廃教会は五島市の旧五輪教会堂がモデルとなっている[22]。ただし、主人公たちが通う学校の建築物は兵庫県西宮市の神戸女学院大学岡田山キャンパスがモデルとして使用されている[23][24]。長崎県側ではロケーションマップも作成・配布されている[25]。
当初は2023年秋に公開予定であったが、2023年8月23日に2024年に公開延期となったことが発表され[26]、後に2024年夏公開予定となった[27]。2024年3月18日に予告編が公開され、公開日が2024年8月30日となった[28]。
封切り
日本国内
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2024年8月30日より公開。映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第7位にランクインした[29]。
評価
この節の加筆が望まれています。 |
2024年6月、中国で開催された第26回上海国際映画祭に出展。金爵賞 最優秀アニメーション作品賞を受賞している[30]。
脚注
注釈
- ^ 小説版では、本来の名前の表記は「登津子」だが周囲からは「トツ子」と書かれてきたという設定[3]。
- ^ 小説版では、家族とはかかわりなくキリスト教に惹かれ、中学2年生の時に一人で受洗したという設定[5]。
- ^ 実在するローランドの製品が使用されている[6]。
- ^ 実在するリッケンバッカーの製品が使用されている[6]。
- ^ 小説版では跡継ぎと目された兄がいたが4年前に死去した設定で[7]、映画本編にも母・兄・ルイの3人で写った写真(兄の中学入学時)が映る場面がある(パンフレットにカットあり)。
- ^ 作中では塾に行く折に立ち寄っていたと述べている。小説版では市街地の県立高校に在学中という設定[8]。
- ^ 実在するCASIOの製品が使用されている[6]。
- ^ きみが練習で弾いていたのはグレゴリオ聖歌の「アヴェ・マリア」で、トツ子ときみが最初に島を訪れた際にルイはまずこの曲のメロディーを演奏した[9]。
- ^ 作中の演奏を担当しているのは、フランスのテルミン奏者グレゴワール・ブランである[6]。
出典
- ^ “アニメ映画「きみの色」で声優初挑戦の髙石あかり 山田尚子監督にサプライズ贈り物”. よろず~ニュース. (2024年9月2日) 2024年9月9日閲覧。
- ^ “山田尚子監督『きみの色』上海国際映画祭でアニメーション部門の最優秀作品賞“金爵賞”受賞”. ORICON NEWS (2024年6月23日). 2024年6月24日閲覧。
- ^ 小説版 (kindle版)、位置:11/301ページ
- ^ 藤津亮太 (2024年9月9日). “「きみのいろ」自分の“色”が見えない少女が“更新”されていく瞬間【藤津亮太のアニメの門V 110回】”. アニメ!アニメ!. 2024年9月10日閲覧。
- ^ 小説版 (kindle版)、位置:12/301ページ
- ^ a b c d “アニメーション映画「きみの色」、世界最古の電子楽器「テルミン」をバンドに加えた理由とは”. Music Voice. (2024年8月30日) 2024年9月3日閲覧。
- ^ 小説版 (kindle版)、位置:141 - 142/301ページ。
- ^ 小説版 (kindle版)、位置:95/301ページ。
- ^ 【映画】最新作「きみの色」公開の山田尚子監督が追求した「奇跡」と「三角形」(前編) - Youtube(朝日新聞出版チャンネル、2024年8月30日。該当箇所は06:09付近から)2024年9月9日閲覧。
- ^ a b c d “山田尚子監督作「きみの色」でやす子が声優初挑戦 悠木碧、寿美菜子、戸田恵子も出演”. コミックナタリー. ナターシャ (2024年5月13日). 2024年5月13日閲覧。
- ^ a b c アニメーションガイド, p. 61,62.
- ^ 小説版 (kindle版)、位置:161/301ページ。
- ^ a b c d 映画パンフレットのクレジット紹介による。
- ^ アニメーションガイド, p. 62-67.
- ^ “Mr.Childrenが山田尚子監督アニメ映画「きみの色」主題歌担当”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2024年6月5日). 2024年6月5日閲覧。
- ^ “パワーパフボーイズが振付を担当! 劇中歌「水金地火木土天アーメン」の描き下ろしスペシャルダンスPVが公開 映画『きみの色』”. otocoto (2024年7月16日). 2024年9月11日閲覧。
- ^ 山田尚子監督の新作映画『きみの色』2023年秋に公開決定 脚本・吉田玲子&音楽・牛尾憲輔とタッグ | ORICON NEWS
- ^ “アニメ映画『きみの色』“感情の色”が見える少女の恋と青春、「聲の形」山田尚子の最新作”. FashionPress (2022年12月3日). 2023年11月11日閲覧。
- ^ “山田尚子監督最新作「きみの色」23年秋公開 吉田玲子脚本で感情の色が見える少女の青春物語 : 映画ニュース”. 映画.com. 2023年11月29日閲覧。
- ^ “長崎モデルのアニメ「きみの色」 山田尚子監督と若手キャスト3人の思い”. 長崎新聞. (2024年8月12日) 2024年9月3日閲覧。
- ^ “アニメ映画「きみの色」 長崎がモデル地、山田尚子監督が佐世保で思い 「作品にとって宝物」”. 長崎新聞. (2024年8月7日) 2024年9月3日閲覧。
- ^ 8月30日公開!映画『きみの色』 五島市の旧五輪教会堂が登場 - 五島の島たび
- ^ “神戸女学院キャンパスがモデル、長編アニメ映画「きみの色」 心の揺らぎ、引き立てる重厚感”. 神戸新聞. (2024年8月30日) 2024年9月3日閲覧。
- ^ 神戸女学院の校舎・キャンパス風景が映画『きみの色』のモデルになりました! - 神戸女学院大学(2024年8月9日)2024年9月3日閲覧。
- ^ 『きみの色』のモデル地を旅しよう! - ながさき旅ネット
- ^ “山田尚子監督によるアニメ映画「きみの色」2024年に公開延期”. コミックナタリー. 2023年11月11日閲覧。
- ^ 東宝映画情報【公式】| Twitter
- ^ サイエンスSARU [@sciencesaru] (2024年3月18日). "映画『#きみの色』2024年8月30日(金)公開決定!". X(旧Twitter)より2024年9月9日閲覧。
- ^ “「ラストマイル」が2週連続V! 山田尚子監督新作「きみの色」は7位にランクイン【国内映画ランキング】”. 映画.com. 2024年9月6日閲覧。
- ^ “山田尚子監督『きみの色』上海国際映画祭でアニメーション部門の最優秀作品賞“金爵賞”受賞”. ORICON NEWS (2024年6月23日). 2024年9月6日閲覧。
関連書籍
- ノベライズ
-
- 著:佐野晶、原作「きみの色」製作委員会『小説 きみの色』宝島社、2024年7月12日。ISBN 978-4-299-05077-9。
- コミカライズ
- 2024年7月16日より『コミックNewtype』(KADOKAWA)にて連載。
- 漫画:鈴木小波、原作:「きみの色」製作委員会『きみの色』KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉、既刊2巻(2024年8月30日現在)
- 2024年8月9日発売[1]、ISBN 978-4-04-115201-0
- 2024年8月30日発売、ISBN 978-4-04-115344-4
- 漫画:鈴木小波、原作:「きみの色」製作委員会『きみの色』KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉、既刊2巻(2024年8月30日現在)
- アニメーションガイド
-
- 『きみの色 アニメーションガイド tri-angle』KADOKAWA、2024年8月30日。ISBN 978-4-04-115490-8。
外部リンク
- ^ “山田尚子監督のアニメ映画「きみの色」鈴木小波が描くマンガ版1巻が発売”. コミックナタリー. ナターシャ (2024年8月9日). 2024年8月31日閲覧。