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ビス (1,5-シクロオクタジエン) ニッケル(0)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ビス (1,5-シクロオクタジエン) ニッケル(0)
識別情報
CAS登録番号 1295-35-8
PubChem 6433264
ChemSpider 17215769
特性
化学式 C16H24Ni
モル質量 275.06 g mol−1
外観 黄色固体
融点

60°C (N2, decomposes)

危険性
GHSピクトグラム 可燃性急性毒性(低毒性)経口・吸飲による有害性
GHSシグナルワード 危険(DANGER)
Hフレーズ H228, H317, H334, H350, H351
Pフレーズ P201, P202, P210, P240, P241, P261, P272, P280, P281, P285, P302+352, P304+341, P308+313, P321
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ビス (1,5-シクロオクタジエン) ニッケル(0) Bis(1,5-cyclooctadiene)nickel(0) は、化学式 Ni(C8H12)2 で表される有機ニッケル化合物であり、Ni(cod)2 とも記される。これは、2つの1,5-シクロオクタジエン配位子のアルケングループに結合した四面体ニッケル(0)を特徴とする反磁性配位錯体である。これは、空気に非常に敏感な黄色の固体で、化学合成におけるNi(0) の一般的な供給源である[1]

調製と性質

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ビス (1,5-シクロオクタジエン) ニッケル(0)は、ジオレフィンの存在下で無水ニッケル(II)アセチルアセトナートを還元することによって調製される。

Ni(acac)2 + 2 cod + 2 AlEt3 → Ni(cod)2 + 2 acacAlEt2 + C2H6 + C2H4

Ni(cod)2 は、いくつかの有機溶媒に適度に溶ける[2][3]1,5-シクロオクタジエン配位子の一方または両方は、ホスフィン、ホスファイト、ビピリジン、およびイソシアニドによって容易に置換される。もし、空気にさらされると酸化されて酸化ニッケル(II)になる[4]。その結果、この化合物は通常グローブボックスで処理される[5]

クロスカップリング反応への利用

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J. E. Danderらは、Ni(cod)2をパラフィン性のカプセル中に封じ込んで空気中でも容易に取り扱えるようにする方法を考案した。その方法とは、反応物と溶媒を入れた反応容器にNi(cod)2を封入したカプセルを入れ、不活性ガスで置換したのち密栓して加熱すると、パラフィンが溶けてNi(cod)2が反応物中に混ざる。その後必要な温度、時間で反応をスムースに進めることができる。反応終了後、パラフィンはヘキサンで抽出、除去できる。Danderらは実証実験を行い、有用性を証明した[6]。Ni(cod)2をパラフィン製カプセルに封入したものは商品化され市販されている[7]

脚注

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  1. ^ Wilke, G. (1988). “Contributions to Organo-Nickel Chemistry”. Angewandte Chemie International Edition 27 (1): 185–206. doi:10.1002/anie.198801851. 
  2. ^ Schunn, R. A.; Ittel, S. D.; Cushing, M. A. (1990). Bis(1,5-Cyclooctadiene)Nickel(0). 28. 94–98. doi:10.1002/9780470132593.ch25. ISBN 978-0-470-13259-3 
  3. ^ Wender, Paul A.; Smith, Thomas E.; Duong, Hung A.; Louie, Janis; Standley, Eric A.; Tasker, Sarah Z. (2015). “Bis(1,5-cyclooctadiene)nickel(0)” (英語). Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis (John Wiley & Sons Ltd): 1–15. doi:10.1002/047084289x.rb118.pub3. 
  4. ^ Zhu, Kake; D'Souza, Lawrence; Richards, Ryan M. (September 2005). “Planting of bis(1,5-cyclooctadiene) nickel upon silica to harvest NiO (<5 nm) nanoparticles in a silica matrix”. Applied Organometallic Chemistry 19 (9): 1065–1069. doi:10.1002/aoc.974. 
  5. ^ Tasker, Sarah Z.; Standley, Eric A.; Jamison, Timothy F. (2014). “Recent advances in homogeneous nickel catalysis”. Nature 509 (7500): 299–309. doi:10.1038/nature13274. PMC 4344729. PMID 24828188. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4344729/. 
  6. ^ J. E. Dander; N. A. Weires; N. K. Garg (2016). “Benchtop Delivery of Ni(cod)2 using Paraffin Capsules”. Organic Letters 18: 3934. https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.orglett.6b01758. 
  7. ^ 東京化成工業株式会社