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バンレイシ属

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
バンレイシ属
1. バンレイシの枝葉と果実
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : モクレン類 magnoliids
: モクレン目 Magnoliales
: バンレイシ科 Annonaceae
亜科 : バンレイシ亜科 Annonoideae
: バンレイシ連 Annoneae
: バンレイシ属 Annona
学名
Annona L. (1753)[1]
タイプ種
トゲバンレイシ
Annona muricata L. (1753)[2]
シノニム

バンレイシ属学名: Annona)は、バンレイシ科の1つであり、常緑または半常緑の木本である。花弁は厚く革質、3枚ずつ2輪につき、内花弁はしばしば小さい。果実は多数の液果が合着した集合果である(図1)。中南米とアフリカに自生し、170種ほどが知られる[1]バンレイシ(釈迦頭、シュガーアップル、スウィートソップ)、トゲバンレイシ(サワーソップ)、ギュウシンリ(カスタードアップル)、チェリモヤアテモヤなど果実が食用とされる種を含み、これらは世界中の亜熱帯から熱帯域で栽培されている。学名の「Annona」は、ハイチでのバンレイシの現地名「anon」に由来する[3]

特徴

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常緑または半常緑の高木から低木互生する[1][4]樹皮は薄く、広く浅く裂ける[4]。葉は無毛または単純毛、星状毛をもつ[1][4]

は両性、葉に対生または腋生[1]。小苞は0–2個、宿存性[1]萼片は3枚、離生、早落性、花弁よりも小さい[1][4]。花弁は6枚、2輪につき、敷石状または内輪が瓦重ね状、全て同大または内側のものが縮小から退化、離生または基部で合生、厚く革質[1][4](下図2a–c)。花弁向軸面基部に蜜腺がある[4]雄しべは多数が集合して球状、各雄しべは線状で花糸は短い[1][4](下図2a)。は外向、葯隔は突出[1][4]雌しべは多数、それぞれ胚珠を1個含む[1][4]

果実は液果、多数が融合して集合果を形成する[1][4](下図2d–f)。染色体基本数は x = 7[4]

2a. イヌバンレイシの花: 花弁は厚く3枚ずつ2輪につく。中央に雌しべの集まり(黄色)があり、半球状に集まった多数の雄しべで囲まれている。
2b. トゲバンレイシの花: 花弁は厚く3枚ずつ2輪につく。
2c. バンレイシの花
2e. トゲバンレイシの集合果
2f. バンレイシの集合果断面

人間との関わり

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下記のようないくつかの種では、果実が食用として利用されている[5][6][7][3]。また民間薬や殺虫剤として利用されることもある。

別名は釈迦頭(しゃかとう)、シュガーアップル(sugar apple)、スウィートソップ(sweetsop)など。詳細は「バンレイシ」を参照。
「アンデスのシャーベット」とも呼ばれる。詳細は「チェリモヤ」を参照。
バンレイシチェリモヤの交雑品種。詳細は「アテモヤ」を参照。
別名はカスタードアップル(custard apple)だが、チェリモヤなど他のバンレイシ属の果実をカスタードアップルと呼ぶこともある。詳細は「ギュウシンリ」を参照。
常緑小高木から高木、しばしば根元で分枝する。葉は広楕円形から倒披針形、長さ 10–14 cm。はエビ茶色、長さ約 2.5 cm、外花弁は線状長楕円形、内花弁は微小。果実は円錐形から球形、大きなものは重さ 700 g に達し、緑色から赤色、1個の果実に相当する部分が溝で区切られ膨潤しているものから、溝が不明瞭で平滑なものまである(下図3)。味は、赤いものはチェリモヤに、緑色のものはバンレイシに似るとされる。中米西部原産。
3a. イラマの果実
3b. イラマの果実
常緑小高木、若い枝に赤色の短剛毛があるが後に無毛。葉は長楕円形から長倒卵形、長さ 20–30 cm、幅 10–13 cm。はほとんど無柄、外花弁は非常に厚く鋭頭、内花弁は紫色。果実は球形から広卵形、大きなものは直径 20 cm に達し、多数の尖った突起で覆われている(下図4)。芳香があり、生食される。中南米原産。
4a. ソンコヤの枝葉と果実
4b. ソンコヤの果実
別名はサワーソップ (soursop) など。詳細は「トゲバンレイシ」を参照。
常緑高木。葉の側脈上にしばしば凹点がある。果実は球形から広卵形、直径 7–15 cm、黄色、短い肉質刺が散生する(下図5b)。やや酸味と芳香があり、生食される。中南米に分布する。
5a. ヤマトゲバンレイシの花
5b. ヤマトゲバンレイシの果実
別名はイケリンゴ、ポンドアップル(pond apple)。常緑高木。葉は卵形から楕円形、裏面は白色を帯びる。外花弁はクリーム色から淡黄緑色で基部に濃赤色の斑紋があり、内花弁はやや短く内面は赤色で基部に斑紋がある(上図2a)。果実は広卵形、長さ約 10 cm、黄色、平滑(下図6)。酸味が強くジュースやゼリーに加工される。中南米からアフリカ西海岸に分布する。
6a. イヌバンレイシの枝葉と若い果実
6b. イヌバンレイシの果実
= Rollinia deliciosa Saff. (1916); Rollinia orthopetala A.DC.1832; ロッツ Rollinia sieberi A.DC.1832[7]
6a. ビリバの枝葉と果実
6b. ビリバの果実
= Rollinia emarginata Schltdl. (1834)[7]

バンレイシ科のいくつかの種は、様々な生理活性を示す天然化合物であるポリケチドを含んでいることが知られている。これらの物質を含むトゲバンレイシバンレイシの摂食と、西インド諸島で見られるある種のパーキンソン症候群の関連性が示唆されている[8][9][10][11][12]

バンレイシ属のアルカロイドやポリケトン鎖を経由して生合成された化合物であるポリケチドは、抗HIV作用や抗がん作用があると考えられており、盛んに研究されている[13]

脚注

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出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t Annona”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2022年10月10日閲覧。
  2. ^ GBIF Secretariat (2022年). “Annona L.”. GBIF Backbone Taxonomy. 2023年1月7日閲覧。
  3. ^ a b c d e f 杉浦明, 宇都宮直樹, 片岡郁雄, 久保田尚浩, 米森敬三, ed (2008). “その他トロピカルフルーツ”. 果実の事典. 朝倉書店. pp. 540–541. ISBN 9784254430950 
  4. ^ a b c d e f g h i j k Annona”. Flora of North America. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2022年10月10日閲覧。
  5. ^ Janick, J. & Paull, R. E., ed (2008). “Annona squamosa sweetsop”. The Encyclopedia of Fruit & Nuts. CABI. pp. 48–41. ISBN 9780851996387 
  6. ^ Annona muricata”. Invasive Species Compendium. CABI. 2022年8月26日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h 中村三八夫 (1978). “バンレイシ属”. 世界果樹図説. 農業図書. pp. 63–74. ASIN B000J8K81E 
  8. ^ Lannuzel, A; et al. (2003-10-06). “The mitochondrial complex i inhibitor annonacin is toxic to mesencephalic dopaminergic neurons by impairment of energy metabolism”. Neuroscience (International Brain Research Organization) 121 (2): 287–296. doi:10.1016/S0306-4522(03)00441-X. 
  9. ^ Champy, Pierre; et al. (2005-08-02). “Quantification of acetogenins in Annona muricata linked to atypical parkinsonism in guadeloupe”. Movement Disorders 20 (12): 1629–1633. doi:10.1002/mds.20632. 
  10. ^ Lannuzel A, Höglinger GU, Champy P, Michel PP, Hirsch EC, Ruberg M. (2006). “Is atypical parkinsonism in the Caribbean caused by the consumption of Annonacae?”. J Neural Transm Suppl. 70 (70): 153–7. doi:10.1007/978-3-211-45295-0_24. PMID 17017523. 
  11. ^ Caparros-Lefebvre D, Elbaz A. (1999-07-24). Possible relation of atypical parkinsonism in the French West Indies with consumption of tropical plants: a case-control study. 354. pp. 281–6. PMID 10440304. 
  12. ^ 太田茂 (12 2003). “カリブ諸島にみられる風土病の原因究明”. 広大フォーラム (広島大学広報委員会) (379). http://home.hiroshima-u.ac.jp/forum/2003-12/gakumon.html 2010年10月12日閲覧。. 
  13. ^ Fruits for the Future Annona

外部リンク

[編集]
  • Annona”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2022年10月10日閲覧。