ノート:プイジラ
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疑問点について
[編集]Puijila darwiniが「鰭脚類の化石種」、「現生鰭脚類の祖先」と書かれていますが、誤りもしくは正確性に乏しいものだと思います。
P. darwiniの系統的位置は鰭脚類とイタチ上科の分岐点に近いとされており(Isogai et al., 2021)、イタチ小目(鰭脚類+イタチ上科)かPan-Pinnipediaの基部系統、あるいは鰭脚類のステムグループとはいえますが、鰭脚類そのものではないということになります。
また、エド・ヨンの記事(Yong, 2009)を典拠にこの種を「現生鰭脚類の祖先」としていますが、出典では“Puijila is not the “ancestor of seals”と注記しており、現在の版の説明は出典の内容が正しく反映されていないのではないでしょうか?--火乃狐(会話) 2024年11月26日 (火) 13:17 (UTC) (小修正)--火乃狐(会話) 2024年11月26日 (火) 13:19 (UTC)
- ご意見ありがとうございます。結果的に凡長な返信になってしまったことをお詫びいたします。以下のように、「seal」という英単語のニュアンスによる語弊が発生しかねないのかもしれません。
- ご指摘の通り、エド・ヨンの記事では「Puijila is not the "ancestor of seals"(アザラシ/鰭脚類の直接の祖先ではない」としている一方で同じ記事にて「the shape of its skull and teeth mark it out as a seal(頭蓋骨と歯の形状からアザラシ/鰭脚類である)」という表現をしています(タイトル自体が「Puijila, the walking seal – a beautiful transitional fossil(プイジラ、歩くアザラシ/鰭脚類、美しい過渡期の化石)」と混同されかねない表現になっている)。
- これらの「seal」という表現は、直訳すれば「アザラシ」ですが、それだけでなく英語において鰭脚類を指す代表的な表現と見受けられます(英語版の鰭脚類の導入部に「Pinnipeds, commonly known as seals(鰭脚類、通称「seals」)」と書かれており、プイジラの英語版でも「stem-pinniped (seal)」と書かれている)。
- エド・ヨンの記事では、火乃狐さんの仰る通りに「プイジラは「seals」の祖先ではない」と書かれている一方で、「Puijila and Enaliarctos belong to a small family of early pinnipeds that also includes Potamotherium(プイジラとエナリアークトスは、ポタモテリウムと同様に初期の鰭脚類の小さな科に属している)」と書かれており、
- エド・ヨン自身が同じ記事の中で(各文章における「seal」という英単語のニュアンスが不明瞭であるために)、「プイジラは「seal」の祖先ではない」と述べた一方で、「プイジラは初期の鰭脚類の科に属する」「頭蓋骨と歯の形状から「seal」である」「歩く「seal」」という混同または矛盾しかねない複数の表現を行っています。
- こちらが用意した他の資料(ナショナルジオグラフィック日本語版とサイエンスデイリーと時事ドットコム)ではプイジラを明確に化石鰭脚類 or 鰭脚類の祖先(ナショジオ・時事ドットコム)or 鰭脚類の進化におけるミッシングリンク(サイエンスデイリー)とみなしています。
- プイジラの英語版では、火乃狐さんのご指摘の「ステムグループ」に関して導入部に「ステム鰭脚類(stem-pinniped)」と書かれている一方で、カテゴリーには「Prehistoric pinnipeds of North America(先史時代の北米の鰭脚類)」と「Miocene pinnipeds(中新世の鰭脚類)」が含まれています。
- ただし、「Transitional fossils(過渡期の化石)」というカテゴリーが使用されていることからも、英語版で鰭脚類に関するこれらのカテゴリーが使用されている理由としては「Pan-Pinnipedia」に該当するカテゴリーが存在しないことも一因かもしれません。
- 厳密に語弊を避けるためには、英語版でも現状では「クマ下目(Arctoidea)」のカテゴリーを使用するべきかもしれませんが。
- 参考ですが、プイジラの英語版におけるその他の表現をピックアップしてみました。
- 「It is considered to be the most primitive pinnipedimorph yet found(発見されている中では最も原始的な「pinnipedimorph」である)」
- 「Pinnipedimorph」は「Pinnipedimorpha」に含まれる「seal」全般とされている一方で、「Pinnipedimorpha」はプイジラの属する「Semantoridae」と姉妹系統であり、プイジラ自体が「Pinnipedimorpha」ではないですので、これは英語版における語弊の可能性があります。
- 「Puijila darwini was a semi-aquatic carnivore which represents a morphological link in early pinniped evolution(プイジラは初期の鰭脚類の進化における形態的なリンク(関連性)を象徴する半水棲の肉食動物である)」
- 「The discovery of Puijila is important as it represents a morphological link in early seal evolution, and one that appears to morphologically precede the more familiarly structured genus Enaliarctos, despite apparently being a younger genus. In other words, Puijila is a transitional fossil that provides information about how the seals returned to the sea(プイジラの発見は初期の「seals」の進化における形態的なリンク(関連性)を象徴する重要な発見であり、エナリアークトスよりもおそらく新しい属であるにもかかわらず、形態的にはエナリアークトスよりも先行していた。言い換えれば、プイジラは「seals」がどのように海へ戻ったかについて情報をもたらす過渡期の化石である。)」とあります(than が抜けているが誤記なのかは不明)。
- ※「Phylogenetic studies including molecular evidence suggest a sister relationship between seals, bears and musteloids (weasels and otters).」という部分は、鰭脚類とクマとイタチ上科の関係性についてのものですが、プイジラ自体を解説しているわけではないと思われます。
- 「It is considered to be the most primitive pinnipedimorph yet found(発見されている中では最も原始的な「pinnipedimorph」である)」
- 語弊のある表現になってしまったことをお詫びしますが、結局は我々の意見の双方がそれぞれの用意した参照資料に基づいていると思います。火乃狐さんのご指摘した「鰭脚類の祖先ではなくステムグループ」という点もごもっともである一方で、こちらの「化石鰭脚類or鰭脚類の祖先orミッシングリンク」という表現も、実際に(エド・ヨンの記事を含む)参照資料およびプイジラの英語版(カテゴリーを含む)にて使われている表現です。
- ですので、各資料における表現の差異や英語における「seal」という英単語のニュアンスも踏まえ、こちらの提案としては以下の表現に変更するのが当たり障りがないと思いますが如何でしょうか。
- 本記事の導入部を「鰭脚類の化石種またはステムグループの一種であり、鰭脚類の祖先と現生種の間のミッシングリンクである可能性も指摘されている」に変更
- 分類の部分を「頭骨や歯の構造はアザラシ(または鰭脚類)との類似性が強い」に変更
- カテゴリーに関しては、英語版で鰭脚類に関するカテゴリーが使われていて、日本語版にはクマ下目のカテゴリーが存在しないことからも、鰭脚類を除去するべきか否かは判断が難しいです。ZDDverse(会話) 2024年11月27日 (水) 05:13 (UTC)
- Wikipedia:信頼できる情報源#自然科学、数学と医学では、一般読者向けの出版物は読者の注意をひくために誇張あるいは過剰な表現を用いることがあるため、科学的な事物の情報源としては信頼性が低いとみなされています(エド・ヨン自身も、内容から何らかの誤解が生まれることを懸念してPSとして注記したのでしょう)。ナショナルジオグラフィック・サイエンスデイリー・時事ドットコムは一般読者向けの出版物に該当すると思われるため、これらの情報源で使用される表現をそのまま流用することはお勧めしません。内容の裏付けのために、できる限り該当分野の専門家が執筆した総説か論文を参照した方がよいと思います。
- また、分類学的記述に関しては、本種が記載された2009年当初とその後の研究で大きく変わった部分があると思いますので、当時は鰭脚類とみなされていても、最近の研究(あるいは見解)ではそうではない、ということもあるかもしれません。ひとまず記載論文(Rybczynski et al., 2009)を参照すると本種の判別文(diagnosis)には“Arctoid mammal.”(クマ下目の哺乳類)、系統に関する記述には“Puijila itself appears to be a relict stem pinniped.”(プイジラ自体は鰭脚類のステムグループの遺存種と思われる)とあります。リプチンスキーらはステムグループ(エナリアークトス、プイジラ、ポタモテリウム)も鰭脚類に含めて説明していますが、系統学的には鰭脚類にはクラウンクレードのみを含み、ステムグループを含めないものとして扱われています(例えばPhyloCode)。比較的新しい論文である磯貝ら(Isogai et al., 2021)の見解に従えば、“The further common ancestor between pinnipeds and Mustelidae is assumed to be a walking seal, such as Puijila darwini,”ということになります。--火乃狐(会話) 2024年11月27日 (水) 12:40 (UTC)
- 確かにリプチンスキー(2009)はプイジラを「stem」とはいえ鰭脚類に含めて説明しており、「Puijila is a morphological intermediate in the land-to-sea transition of pinnipeds」ともしているので、当時の発表に従えば「プイジラは鰭脚類であり、陸から海に適応する鰭脚類の推移にある」とも言えます。一方で、「プイジラが現生鰭脚類の祖先か」という疑問に関しては、ロンドン自然史博物館の事例("There are two fossil candidates for what could be considered the first seal ancestors, called Potamotherium and Puijila")もありますが、おおむね「stem pinniped」としている場合が多いようです。
- たとえば Isogai et al.,(2021)に関してですが、この場合における「pinnepeds」と「seal」の意味合いの違いは日本語的にどのようになりますでしょうか?
- 他に気になっている点としては、「系統学的には鰭脚類にはクラウンクレードのみを含み、ステムグループを含めない」とのことですが、日本語版の鰭脚類の項目においても、「ステムグループをクラウングループと区別することもある」とされる一方で「統括してPan-Pinnipediaに纏める説もある」や「派生系統を鰭脚型類とする説もある」との説も掲載されていることです。
- これまでの要点および個人的に気になっている点です。
- リプチンスキーは発表当時はプイジラを「stem pinneped」とした一方で鰭脚類に含め、「鰭脚類の進化における中間的存在」だとしており、プイジラの発見が鰭脚類の発祥と進化を紐解く可能性があるとしていた
- 近年ではプイジラを現生鰭脚類の祖先としない見解が多数派
- プイジラを「pinnipeds」と関連付ける資料もある一方で、あくまでも「pinnepedsに近縁」や「stem pinnepeds」として「pinnepeds」と区別する資料も存在する
- 「pinnepeds」と「seal」の違いは何か、日本語でどのように説明するべきか
- 鰭脚類および関連グループの系統学上における諸説の差異(ステムグループとクラウングループの区別 or 統括してPan-Pinnipediaに纏める)
- 英語版では「stem pinniped」としている一方で、「プイジラが鰭脚類の進化上の morphological link」という説にも言及しており、鰭脚類に関するカテゴリーを使っている
- 「Pinnipedimorphs」「Semantoridae」「Pan-Pinnipedia」に該当するカテゴリーは他の言語にも存在せず、英語版では「Prehistoric pinnipeds」および下位カテゴリが使われている
- 「List of fossil pinnipedimorphs」などの本件に関連する日本語版の記事が存在しない
- これまでの要点および個人的に気になっている点です。
- 以上から、本記事の修正案として以下を提案します。ご同意いただけるのであればこの通りにします。
- ①導入部は「中新世に生息していた半水棲の化石食肉目」とし、それ以上の明言を避ける
- ②ステム・クラウングループを含め鰭脚類の系統学には説や案が複数存在することに軽く言及する(鰭脚類#分類にリンクさせることも可)
- ③リプチンスキーの2009年当時の見解を記載する
- ④近年の多数派の見解(ステムグループであり、現生鰭脚類の祖先ではない)を記載する
- ⑤カテゴリーに鰭脚類を残すが、コメントアウトする形で、英語版に則っているが現状はあくまでも便宜的であることを言及する
- ⑥海獣または水陸両生哺乳類をカテゴリーに追加する(後者は日本語版では現状ではミンク属のみに使われており、英語版では鰭脚類が水陸両生哺乳類の下位カテゴリとして使用されている)ZDDverse(会話) 2024年11月27日 (水) 16:48 (UTC)
- 鰭脚類のステムグループを鰭脚類に含めるかどうかは、鰭脚類を狭義(現生種と近縁の絶滅種のみを含む)に取るか、広義(現生種の共通祖先よりも前に分かれた絶滅種も含む)に取るか、という違いでしかありません。本種の説明としてはそのまま「鰭脚類のステムグループ」が端的かと思います。なおPan-Pinnipediaの提唱時(2020年)の定義では、本種はPan-Pinnipediaには含まれますがPinnipedimorpha、Pinnipediformes、Pinnipediaには含まれないと考えられています。
- Isogai et al.(2021)における「pinnipeds」と「seal」の意味合いという点については質問の意図が分かりかねます。論文の内容は主にゾウアザラシと鯨類を研究対象としているので、基本的に「seal」はゾウアザラシを指しているのではないかと思いますが。
- 後半の修正案の①から⑤については異存はありません。⑥についてはCategory:海獣(=海棲哺乳類)を半淡水棲と考えられている本種に当てるのは適切ではなさそうですので、Category:水陸両生哺乳類でよいと思います。--火乃狐(会話) 2024年11月28日 (木) 11:43 (UTC)
- 追記 プイジラを含むクマ下目内の系統関係については、近年の研究ではパターソンら(Paterson et al., 2020)が参考になるかと思います。--火乃狐(会話) 2024年11月28日 (木) 12:49 (UTC)
- 以上から、本記事の修正案として以下を提案します。ご同意いただけるのであればこの通りにします。